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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問2

問題・正答・学習用解説

問題

外壁の熱貫流率に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    外壁の熱貫流率は、外壁と屋根や床等との取合い部における熱伝導を考慮しない場合、一般に、構造体の室内側で断熱するよりも室外側で断熱するほうが小さくなる。
  2. (2)
    外壁を構成する各部材の熱伝導抵抗が大きくなると、一般に、熱貫流率は小さくなる。
  3. (3)
    外壁表面の放射率が大きくなると、一般に、熱貫流率は大きくなる。
  4. (4)
    屋外の風速が大きくなると、一般に、熱貫流率は大きくなる。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は(1)です。本問は外壁と床・屋根などの取合い部を通る熱、すなわち熱橋の影響を除いています。この条件では、同じ材料と厚さで構成された平らな壁の層の順番を入れ替えても、熱の通りにくさの合計は変わりません。したがって、断熱材を構造体の外側に置いただけで熱貫流率が小さくなる、とはいえません。
熱貫流率U\displaystyle Uは、室内外の温度差が1 Kのとき、壁1平方メートルを通る熱の流れの大きさです。熱抵抗をR\displaystyle RとすればU=1R\displaystyle U=\frac{1}{R}です。壁全体の抵抗は、室内側表面、各材料、室外側表面の抵抗を足して求めます。例えば構造体の抵抗0.1、断熱材2.0、両表面の合計0.2なら、並び順にかかわらずR=2.3 m2⋅K/W\displaystyle R=2.3\ \mathrm{m^2\cdot K/W}、U≃0.43 W/(m2⋅K)\displaystyle U\simeq0.43\ \mathrm{W/(m^2\cdot K)}です。外断熱には熱橋を減らすなどの利点がありますが、その利点を本問で除外された条件に持ち込まないことが解答の鍵です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適当です。熱が壁を厚さ方向へ一方向に流れる計算では、材料の抵抗を直列に足します。「コンクリートを通ってから断熱材を通る」順と、その逆で、通過する抵抗の合計は同じです。外断熱が現実の建物で有効なことと、この条件で平らな壁の熱貫流率が変わることは別問題です。取合い部の熱橋を考慮しないとのただし書きにより、断熱材の位置だけを理由に大小は付けられません。

選択肢2

(2)適当です。熱伝導抵抗は材料中を熱が通ることへの抵抗で、材料の厚さを熱伝導率で割った値です。厚い断熱材ほど抵抗が増え、壁全体の抵抗も大きくなります。熱貫流率はその合計抵抗の逆数なので、小さくなります。例えば合計抵抗が2から4 m2⋅K/W\displaystyle \mathrm{m^2\cdot K/W}へ増えると、熱貫流率は0.5から0.25へ半分になります。抵抗と貫流率は同じ向きに増える量ではありません。

選択肢3

(3)適当です。壁の表面は、周囲との間で放射によっても熱を交換します。放射率は、同じ温度の理想的な黒体に対してどれだけ放射しやすいかを表す割合です。一般にこれが大きいと放射による熱交換が増え、表面で熱が移動する際の抵抗が小さくなります。その結果、他条件が同じなら壁全体の熱貫流率は大きくなります。材料内部の熱伝導率が変わるのではなく、表面の熱の受渡しが変わる点が要点です。

選択肢4

(4)適当です。外壁に沿って風が強く吹くと、表面付近で暖められたり冷やされたりした空気が次々に入れ替わり、対流による熱の移動が増えます。これは室外側表面の熱抵抗を小さくする働きなので、全体の熱貫流率は大きくなる方向です。風を当てた飲み物が冷めやすいのと似ています。ただし十分厚い断熱材がある壁では、全抵抗に占める表面抵抗の割合が小さく、風による変化の影響も限られます。

周辺知識

熱の問題では「どれだけ逃げるか」と「どれだけためられるか」を分けます。熱貫流率は室内外の間を熱が通る容易さ、熱容量は物体の温度を1 K変えるために必要な熱量です。厚いコンクリートは多くの熱を蓄えますが、同じ厚さの断熱材ほど熱を通しにくいわけではありません。
壁を通る熱の流れは、単純な定常条件ならQ˙=UAΔT\displaystyle \dot Q=UA\Delta Tで表せます。A\displaystyle Aは壁面積、ΔT\displaystyle \Delta Tは内外温度差です。U=0.5\displaystyle U=0.5、A=10 m2\displaystyle A=10\ \mathrm{m^2}、温度差20 Kなら100 Wが通ります。これは毎秒の熱量であって、1日分のエネルギーではありません。
実際の外断熱では、コンクリートの床が外壁を貫く部分などを断熱材で連続して覆い、熱の抜け道である熱橋を小さくできます。また構造体が室内側の蓄熱に利用され、室温変動の仕方も変わります。こうした建物全体や時間変化の利点と、材料の順番に依存しない単純な定常熱抵抗の計算とを区別すると、外断熱と内断熱を過度に一般化せず理解できます。