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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問1

問題・正答・学習用解説

問題

環境工学における用語に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    PMVは、室内における人の温熱感覚に関係する、気温、放射温度、相対湿度、気流速度、人体の代謝量及び着衣量を考慮した温熱環境指標である。
  2. (2)
    色温度は、光源の光色を、それと近似する色度の光を放つ黒体の絶対温度で表したものである。
  3. (3)
    音響エネルギー密度レベルは、音のもつ単位体積当たりの力学的エネルギー量を、デシベル表示したものである。
  4. (4)
    実効放射(夜間放射)は、地表における長波長放射収支であり、日中を除く夜間の「大気放射と地表面放射との差」のことである。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は(4)です。「夜間放射」という別名から、昼間には起こらないと考えている点が誤りです。地表面は温度に応じて赤外線を放ち、大気中の水蒸気や雲なども地表へ赤外線を放っています。この二つは昼夜を通じて同時に起こります。地表から出る長波放射から、大気から受ける長波放射を差し引いた正味の放熱を、実効放射として扱います。
例えば上向きが400、下向きが300 W/m2\displaystyle \mathrm{W/m^2}なら、正味の放熱は400−300=100 W/m2\displaystyle 400-300=100\ \mathrm{W/m^2}です。これは面積1平方メートルから、毎秒100ジュールのエネルギーが差し引きで出るという意味です。昼間にもこの収支はありますが、太陽から短波の日射を受けるため、地表全体では暖まることがあります。夜は日射がなくなり、長波による冷却が目立つので「夜間放射」と呼ばれます。したがって、現象が目立つ時間帯と、現象そのものが存在する時間帯を区別する必要があります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。PMVは多くの人の温冷感を、寒い側から暑い側までの尺度で予測する指標です。例えば同じ室温でも、冷たい窓の近くでは体から放射で熱を失い、風が当たれば対流や汗の蒸発で冷えます。また、運動中と着席中、厚着と薄着でも違います。このため気温・放射温度・湿度・気流という環境側の4要素と、代謝量・着衣量という人側の2要素を使います。一人ひとりの感想を必ず当てる指標ではありません。

選択肢2

(2)適当です。黒体は、入ってくる放射をすべて吸収する理想的な物体です。それを熱すると、温度によって赤みのある光から白っぽい光へと光色が変化します。この温度との対応を利用した尺度が色温度で、単位はケルビンです。例えば約3,000 Kは暖かみのある光色、約6,500 Kは青白い光色の目安です。LED自体がその高温になっている意味ではなく、光の色の対応を表しています。

選択肢3

(3)適当です。音は空気の圧縮と膨張、粒子の往復運動によってエネルギーを運びます。音響エネルギー密度は、ある空間の1立方メートル当たりに含まれる音のエネルギーで、単位はJ/m3\displaystyle \mathrm{J/m^3}です。これを基準値との比の対数で表したものが音響エネルギー密度レベルです。デシベルはこの比較尺度であり、ジュールそのものの別名ではありません。エネルギーが10倍になるとレベルは10 dB増えます。

選択肢4

(4)不適当です。長波のやり取りは、太陽が出ている間も止まりません。地表が放つ赤外線と大気が放つ赤外線との差を考えるのであり、「日中を除く」という条件は付けません。昼の屋根が熱いことは、赤外線で放熱していない証拠にはなりません。日射による受熱が放熱を上回れば、放熱しながら温度が上がるためです。夜間放射という呼称に引きずられず、日射と長波放射を別の収支として整理します。

周辺知識

放射とは、物体同士が触れずに電磁波でエネルギーをやり取りすることです。太陽は非常に高温なので短い波長の成分を多く放ち、地表や建物はそれより低温なので長い波長の赤外線を主に放ちます。「短波は受けるもの、長波は出すだけのもの」と覚えるのも不正確で、大気から地表へ来る長波もあります。
晴れた夜に屋外の車の屋根が冷えて露や霜が付くのは、空に向かう長波放射によって、表面温度が周囲の気温より下がることがあるためです。雲がある夜は雲からの下向き放射が増え、この冷却が弱まる傾向があります。ただし表面温度は風による熱の移動や材料内部からの熱伝導にも左右されます。
本問の四つの指標は、いずれも「何を測る尺度か」を明確にすると理解できます。PMVは人の温冷感、色温度は光色、音のレベルは基準に対する大きさ、実効放射は長波エネルギーの差です。名前の印象ではなく、対象と単位を組にして覚えましょう。