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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問23

問題・正答・学習用解説

問題

鉄筋コンクリート造の建築物の各種改修工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    既存保護層を撤去し、既存アスファルト防水層を残して行う防水改修工事において、既存アスファルト防水層の継目等の剥離箇所及び浮き部分については、切開し、バーナーで熱した後、溶融アスファルトを充填し、張り合わせた。
  2. (2)
    防水改修工事において、防水層撤去後の新設防水層の下地となる既存コンクリート面の欠損部については、ポリマーセメントモルタルにより平滑に補修した。
  3. (3)
    タイル張り仕上げ外壁で、構造体コンクリートと下地モルタルとの間に浮きが発生している箇所を、アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法により固定する工事において、アンカーピン固定部の穿孔については、タイルの目地部分に構造体コンクリート中に30mmの深さに達するまで行った。
  4. (4)
    コンクリート打放し仕上げ外壁の改修工事において、ひび割れ幅が0.2mmから1.0mmの間に分布していたので、ひび割れ部改修工法としてシール工法を採用した。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢4です。シール工法は、主に幅0.2mm以下程度の微細なひび割れの表面を覆う方法です。0.2〜1.0mmに分布する本問のひび割れ全体へ、一律にシール工法を選ぶのは適切ではありません。幅、動き、深さ、補修目的に応じて樹脂注入等を選定します。
表面を覆うだけの工法では、内部に開いている比較的大きなひび割れを十分に充填できません。水の侵入を抑えたいのか、内部を樹脂で接着して一体性を回復したいのかでも必要な処置は変わります。動きのあるひび割れでは、硬い樹脂で固定することが適さず、切込みを設けて変形に追従するシール材を充填する方法等を検討することもあります。
他の肢は、既存防水層の浮きの補修、防水下地の欠損補修、浮いたモルタル層を構造体へ固定するアンカーピンの孔について適切な処置です。改修は新品を取り付けるだけでなく、既存の劣化原因と状態を調べ、残す部分を健全な状態に整える工事です。目に見える隙間をふさげば完成とせず、補修後に必要な性能を考えます。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:残すアスファルト防水層の剝離や浮きを切開し、加熱後に溶融アスファルトを充填して張り合わせる本肢は適当です。既存層を下地として利用する場合、浮いたまま新しい層を重ねると、その不安定さや空隙を引き継いでしまいます。切開して状態を整え、所定の方法で再び接着します。既存層を残す工法だから補修不要という判断はできません。周辺の水分や劣化状況も確認し、加熱を伴うため周囲の可燃物等にも配慮して施工します。

選択肢2

選択肢2:防水層を撤去した後のコンクリート欠損をポリマーセメントモルタルで平滑に補修する本肢は適当です。新しい防水材の下に鋭い段差や穴があると、接着不良や局所的な薄さ、破れにつながります。ポリマーセメントモルタルは、樹脂成分を加えて付着性等を改善した補修材料です。弱い部分や汚れを除き、所定の施工と養生で下地を整えます。表面だけを平らに見せ、内部の脆弱部を残す補修では十分ではありません。新設防水に適する乾燥等の状態も確保します。

選択肢3

選択肢3:タイル目地から穿孔し、構造体コンクリート内へ30mm達する深さとする本肢は適当です。アンカーピンニングは、浮いた仕上げ層を健全な躯体へピンで固定し、樹脂注入等も組み合わせる工法です。30mmはタイル表面からの総穿孔深さではなく、構造体へ入る深さです。仕上げと下地モルタルが合計25mmあるなら、それを通った先に必要な埋込みを確保します。孔内の粉を清掃し、指定の樹脂・ピン・注入手順を守ることで、所定の固定を成立させます。

選択肢4

選択肢4:幅0.2〜1.0mmのひび割れへ一律にシール工法を採用した点が不適当です。微細なひび割れの表面を覆うシール工法では、本問の広い幅の部分を含めた補修に十分とはいえません。比較的安定したひび割れ内部へ樹脂を注入する方法や、動きに対応する切込みとシール材充填など、状態に合う方法を検討します。単に幅1.0mmなら必ず一つの工法と決めるのでもありません。原因、変動、漏水、内部鉄筋の腐食等も調べ、目的に合った補修を選定します。

周辺知識

改修工事は、既存部分のどこが傷んでいるかを見極めることから始まります。ひび割れ、浮き、欠損、漏水は別の現象で、同時に起きている場合もあります。表面の割れだけを直しても、内部の鉄筋腐食や水の侵入経路が残れば再び劣化する可能性があります。
「シール工法」と「Uカットシール材充填工法」は名前が似ていますが、同じではありません。前者は微細なひび割れの表面を被覆する方法、後者はひび割れに沿って溝を設け、そこへシール材等を充填する方法です。樹脂注入は、ひび割れや浮きの内部へ材料を入れる操作です。施工する場所と深さを区別します。
アンカーピン等の固定では、表面から何mm孔を開けたかだけでなく、健全な構造体へ何mm定着したかが重要です。既存仕上げの厚さは現場で異なるため、実際の層構成を確認します。残す材料の状態を調べ、必要なところまで処理し、所定の接合を確保するという順序で考えると、改修の判断が分かりやすくなります。