学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問22
問題・正答・学習用解説
問題
鉄筋コンクリート造の建築物の耐震改修工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢1です。角形の鋼板巻き補強では、コーナーの曲げ加工の内法半径を鋼板厚さの3倍以上とします。本肢の2.5倍では小さ過ぎます。板厚をとすればであり、例えばならです。
鋼板巻き工法は、既存RC柱を鋼板で囲み、隙間へ充填材を入れて補強する方法です。角形に加工するとき、角を鋭く曲げ過ぎると鋼板の曲げ部分へ大きなひずみが集中します。必要な性能を損なわないよう、内側の曲がりに一定以上の丸みを確保します。外側の半径や曲げ部全体の幅を測る条件ではありません。
他の肢は、既存部と補強部が一体に働くための施工を示しています。目荒しで接合面へ適切な凹凸をつくり、オーバーフロー管で梁下面までの充填を確かめ、既存鉄筋を無理に曲げず許容されるあきを持つ重ね継手を使います。新しい材料を追加するだけでなく、既存部との力の伝達と、加工による損傷を避けることが耐震改修の要点です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:鋼板のコーナー内法半径を2.5倍とした点が不適当です。板厚の3倍以上とし、角を急に曲げ過ぎないようにします。例えば板厚12mmなら必要な内法半径は36mm以上であり、2.5倍の30mmでは足りません。内法は曲げの内側で測る半径です。板の外側で測った値を比較すると、板厚分だけ大きく見えて判断を誤ります。柱の形に密着させたいから極端に角を鋭くするのではなく、加工と充填の納まりを含めて所定形状を確保します。
選択肢2
選択肢2:平均深さ2〜5mmの凹面を打継ぎ面全体に分散させ、合計約20%の面積とする本肢は適当です。目荒しは、既存コンクリート面を適切に粗くし、新しい充填材との付着や力の伝達を確保する処理です。表面の弱い部分や汚れをそのまま残して材料を足しても、一体性は得にくくなります。一方、深く削れば削るほどよいのでもありません。既存鉄筋や健全部を損ねない範囲で、指定された深さ・面積・分布の凹凸をつくり、清掃します。
選択肢3
選択肢3:オーバーフロー管の流出先を既存梁下端より10cm高くする本肢は適当です。圧入工法は、型枠内へコンクリート等を押し入れて充填する方法です。上部の管から材料が流れ出る高さを梁下面より高くすることで、梁下まで行き渡った状態を確認しやすくします。流出先が低過ぎると、上部に空隙が残っているのに流出だけ確認してしまうおそれがあります。管から出たことだけに頼らず、充填順序、空気の逃げ道、型枠の耐圧性等も計画します。
選択肢4
選択肢4:既存壁筋を無理に台直しせず、所定の隙間であき重ね継手とする本肢は適当です。台直しは、既存鉄筋を曲げ直して位置を合わせる操作です。無理に行うと鉄筋や周囲のコンクリートを傷めます。あきは以下、かつ150mm以下です。例えば重ね長さならなので、隙間は120mm以下となります。鉄筋同士が接触していなくても、所定のあきと重ね長さを確保してコンクリートを介し力を伝えます。
周辺知識
耐震改修では、既存建物へ壁やブレース、鋼板などを加えます。新しい部材が強くても、既存部との接合が弱ければ、その力を建物全体へ伝えられません。接合面の処理、あと施工アンカー、鉄筋継手、充填などは、補強材料そのものと同じくらい重要です。
既存部の加工では、必要な処理と傷め過ぎないことの両立が必要です。目荒しで凹凸を付けることと、鉄筋が広範囲に露出するまで無計画にはつることは違います。接合のために鉄筋をはつり出す部分がある場合も、図面と施工要領で対象を定め、残す部材の性能を確保します。
寸法の基準は、測る位置と複数条件を確認します。鋼板曲げは内側の半径、オーバーフローは既存梁下端からの高さ、あき重ね継手は鉄筋間の隙間です。「以下、かつ以下」とある場合は厳しい方を満たします。どの部分をどちら向きに測る数値なのかを小さな断面として想像すると、施工の目的と結び付けて覚えられます。