学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問20
問題・正答・学習用解説
問題
鉄筋コンクリート造の建築物の設備工事に関する次の記述のうち、監理者が行った行為として、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢2です。機械室が屋上階にある本問のエレベーターでは、P波感知器を原則として昇降路底部に、S波感知器を機械室に設置します。本肢は二つの設置場所を逆にしています。機械室のない方式ではS波感知器の設置場所も異なるため、条件を読んで判断します。
P波は先に届く地震波、S波はそれより遅く届く地震波です。P波を早く捉えることで、本格的な揺れの前に最寄り階へ停止し、乗客が退出するための動作に移ることを目指します。昇降路底部は、かごが上下する縦の空間の最下部です。機械室がある方式のS波感知器は、機械室側で所定の揺れを検知します。
ただし、震源に近い場合などはP波とS波の時間差が短く、必ず主要動の前に停止できるという保証ではありません。設置位置と設定条件、管制運転の動作を計画どおりに確保することが大切です。他の肢は、誤接続を見つける着色水試験、停電時の照明試験、隠れる前の接地確認という、設備の目的に合う検査を述べています。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:衛生器具取付け後に系統ごとに着色水で通水する本肢は適当です。雑用水は便器洗浄などに使う、飲用以外の水です。これが誤って飲用水の蛇口へつながると衛生上の問題になります。色の付いた水を流して、予定した器具だけに出るかを確かめれば、配管の見た目だけでは分かりにくい誤接続を発見できます。器具まで取り付けた状態で系統別に確認することに意味があります。水が漏れないことを確かめる圧力試験とは、検査する目的が異なります。
選択肢2
選択肢2:P波感知器を機械室、S波感知器を昇降路底部とした点が不適当です。機械室が屋上にある本問では、P波感知器は原則として昇降路底部、S波感知器は機械室です。P波による早期の検知と、主要動の検知を所定の位置で行います。機械室なしのエレベーターではS波感知器を昇降路底部に設ける扱いなので、「S波はどの方式でも最上部」と覚えるのも不正確です。二つの波の役割と、機械室の有無を組み合わせて設置位置を整理します。
選択肢3
選択肢3:外光の影響を避け、内蔵電池へ切り替えて照度を測る本肢は適当です。非常用照明は、通常の電源が失われたときに避難に必要な明るさを確保する設備です。昼間の窓からの光や通常照明が加わった状態で測れば、非常用照明そのものの性能が不足していても明るく見えてしまいます。また、通常電源のままでは停電時の電池による動作を確認できません。実際に使う非常時の条件に合わせ、指定された測定方法や継続時間の条件も確認します。
選択肢4
選択肢4:接地極は埋戻し前、構造体への接地線接続はコンクリート打設前に立会い確認する本肢は適当です。接地は、漏電等に対して電気を安全に逃がす経路を設けることに関係します。地中やコンクリートの中へ隠れた後では、埋設状態や接続方法を直接確認しにくくなります。そのため隠す前に材料、位置、接続の確実さを確かめます。完成後の接地抵抗等の試験があるから、施工途中の接続確認を省いてよいという意味ではありません。両段階で品質を確保します。
周辺知識
設備の試験では、その設備が使われる条件を再現することが重要です。非常用照明なら停電時、地震時管制運転なら感知器の作動時、給排水なら器具までつながった状態を考えます。通常運転で動いたから非常時にも所定の機能を果たすとは限りません。
検査の目的も区別します。水圧試験は漏れ、着色水試験は誤接続、照度測定は明るさ、接地の確認は電気的な安全経路などを調べます。一つの試験が合格しても、別の性能を確認したことにはなりません。何を見つけるための試験かを説明できると、実施時期や測定条件も理解しやすくなります。
施工途中にしか見えない部分は、隠す直前が重要な確認時期です。埋設する接地極やコンクリート内の接続部は、後から調べるために掘り返すと大きな手間がかかります。材料と取付けを工程中に確認し、完成時に動作や性能を確認する二段階で考えます。設備を取り付けたという事実だけで、必要な機能が成立したと判断しないことが大切です。