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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問14

問題・正答・学習用解説

問題

鉄骨工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    受入検査において、完全溶込み溶接部の超音波探傷検査については、特記がなかったので、抜取検査により実施した。
  2. (2)
    鉄骨の建方精度の管理において、特記がなかったので、柱の各節の倒れの管理許容差を、節の高さの1700\displaystyle \frac{1}{700}以下、かつ、20mm以下とした。
  3. (3)
    建方作業において、溶接継手におけるエレクションピースに使用する仮ボルトは、高力ボルトを使用して全数締め付けた。
  4. (4)
    溶接作業において、作業場所の気温が-2℃であったので、溶接線より両側約100mmの範囲の母材部分を加熱して溶接した。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢2です。柱の各節の倒れの管理許容差は、節の高さの11000\displaystyle \frac{1}{1000}以下、かつ10mm以下です。本肢の1700\displaystyle \frac{1}{700}以下、かつ20mm以下は、施工時に用いる管理許容差として緩過ぎます。管理許容差と限界許容差を取り違えています。
倒れは、柱が鉛直から傾いている量です。節は、一度に製作・建方する柱のまとまりの区間を指します。例えば節の高さが7,000mmなら、高さによる上限は次のとおりです。
70001000=7 mm\frac{7000}{1000}=7\,\mathrm{mm}
10mmより厳しい7mmを満たす必要があります。二つの条件のうち、どちらか一方だけ満たせばよいわけではありません。
誤差を一つの節で放置すると、上へ積み上げたときの位置や梁の納まりに影響します。そのため建方途中に測定し、調整できる段階で精度を確保します。他の肢は、完全溶込み溶接の受入れ時の抜取検査、溶接継手用エレクションピースの仮ボルト、低温時の母材加熱です。仮の接合や施工途中の精度も、完成時の構造性能を支える管理項目として扱います。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:特記のない受入検査で、完全溶込み溶接部の超音波探傷を所定の抜取方法で行う本肢は適当です。完全溶込み溶接は、接合する板厚の全体に溶接を行い力を伝える接合です。内部の欠陥は表面を見るだけでは分からないため、超音波の反射を利用して調べます。抜取検査といっても、任意に都合のよい箇所だけを選ぶ意味ではありません。定められた検査率やロット、合否判定と追加検査の手順に従います。施工側の自主検査と受入検査の役割も区別します。

選択肢2

選択肢2:各節の倒れの管理許容差を高さの1700\displaystyle \frac{1}{700}かつ20mmとした点が不適当です。管理許容差は高さの11000\displaystyle \frac{1}{1000}以下、かつ10mm以下で管理します。例えば高さ12,000mmなら高さからは12mmですが、絶対値10mmの条件がより厳しいため10mm以下となります。「かつ」は両方を満たす意味です。本肢の値は管理上の目標より緩く、限界側の値との混同を狙っています。施工途中の調整を、最終的に限界を超えなければよいという考えで進めてはいけません。

選択肢3

選択肢3:溶接継手のエレクションピースに高力ボルトを用い、全数締め付ける本肢は適当です。エレクションピースは、建方時に部材を一時的に保持するために設ける接合用の部材です。主となる溶接が完了するまでは、この仮接合が部材を安定させます。したがって「仮」という名前でも、ごく少数のボルトで軽く留めればよいものではありません。通常の高力ボルト接合部に用いる一般的な仮ボルト本数の規定と、溶接継手のエレクションピースの規定を混同しないようにします。

選択肢4

選択肢4:気温-2℃で、溶接線の両側約100mmの母材を加熱して溶接する本肢は適当です。本問の低温範囲では、所定の範囲を適切に加熱する措置を行います。母材が冷え過ぎていると溶接部が急冷され、割れなどの欠陥につながるおそれがあります。溶接する線の一点だけを温めればよいのではなく、周囲も含めて加熱する意味があります。気温に関わる措置に加え、鋼種や板厚等に応じた予熱条件、乾燥状態、風雨対策も施工要領に従って確保します。

周辺知識

鉄骨建方では、工場製作した柱や梁を現場で組み立て、鉛直や高さ、通りをそろえて本接合します。部材が単体で正しい寸法でも、据付け位置や傾きがずれると、接合部や外装の納まりに影響します。製作精度と建方精度を両方管理する必要があります。
管理許容差は、施工中に精度を確保するための管理値です。限界許容差は、それより大きなずれに対して処置等を判断する限界側の値として区別されます。限界の値を日常の目標にすると、ばらつきが加わったときに超過しやすくなります。問題がどちらの許容差を尋ねているかを必ず確認します。
仮接合は、本接合が終わるまでの安全を支えます。施工中には完成後とは違う力の流れがあり、まだ梁や床が全部つながっていない状態で風や作業荷重を受けます。仮ボルトやワイヤによる保持、精度調整、溶接の順序を計画し、完成時の図面だけで途中の安全まで保証されると考えないことが大切です。