学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
鉄骨工事に関する次の記述のうち、監理者が行った行為として、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢3です。トルシア形高力ボルトで、締付け後のナット回転量が許容範囲より過小と判定された場合は、追締めで済ませず、ボルト・ナット・座金を一組で新しいものへ取り替えて締め付け直します。別の締付け方式での不足回転量の処置と混同してはいけません。
トルシア形高力ボルトには、先端にピンテールという部分があります。専用工具でナットとピンテールを相対的に回し、所定の締付けでピンテールが破断する仕組みです。しかし、破断していれば施工状態を無条件に合格とできるわけではありません。一次締め後のマーキング等から回転状態を確認し、異常があれば所定の処置を行います。
本肢は、既に締め付けたセットを追加で回して数字だけ合わせる処置を認めている点が誤りです。新しいセットで施工し直して、必要な締付け状態を確保します。他の肢では、スタッドの所定の追加試験、D25を通す孔の最大径38mm、柱の各面での耐火被覆厚さ確認が正しく行われています。検査ごとの合否判定と、不合格時の処置を対にして理解します。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:スタッドの抜取1本が不合格となり、追加した2本がともに合格したロットを合格とする本肢は適当です。スタッドは鋼材から突き出す棒状の部材で、鋼材とコンクリートの力の伝達等に用います。打撃曲げ試験は、曲げたときの溶接部の状態から品質を確認する試験です。追加試験は、最初の不合格が出たロットを所定の方法で再確認するものです。追加した2本のうち一方が不合格でも平均的にはよい、と合格扱いすることはできません。
選択肢2
選択肢2:D25の異形鉄筋を通す孔の最大径を38mmとして確認する本肢は適当です。鉄筋貫通孔は、鉄骨部材等の所定の位置に鉄筋を通すための孔です。鉄筋径と同じ孔では通しにくいため余裕を設けますが、大きくし過ぎると鋼材の有効な断面を減らします。そのため指定された最大孔径を守ります。高力ボルト用の孔と目的が異なるので、ボルト径に数mmを足す規定を流用しません。工作図で位置や補強等も確認し、無断で孔を広げないことが大切です。
選択肢3
選択肢3:回転量不足のトルシア形高力ボルトを追締めする点が不適当です。この場合は、ボルト、ナット、座金をセットで新しいものへ交換し、適切な手順で締め付け直します。ピンテールが破断した後のものを追加で回し、見かけの回転量だけ合わせる処置ではありません。高力六角ボルトのナット回転法では、所定条件下の回転量不足に追締めを行う扱いがありますが、方式の違いを無視して同じ処置にできません。部品単体でなくセットとして管理します。
選択肢4
選択肢4:柱の各面に1箇所以上の厚さ確認ピンを入れる本肢は適当です。ロックウール吹付けの耐火被覆は、火災時に鋼材の温度が急激に上がることを遅らせるための層です。必要な厚さがない部分では、想定する耐火性能を確保できないおそれがあります。柱の一面だけで厚さが十分でも、裏側や別の面が同じとは限りません。各面で確認することで吹付けの偏りを捉えます。厚さだけでなく、付着状態、欠損、指定された材料・工法も合わせて確認します。
周辺知識
鉄骨の検査には、部材寸法、溶接、ボルト接合、建方精度、耐火被覆など、違う性能を確認する項目があります。測る対象が違えば、抜取りの単位、合格条件、不合格時の措置も変わります。「再検査してよければ全部そのまま使える」と一律には判断できません。
ロットは、同じ条件で施工・製造されたものとして検査上まとめる単位です。抜取検査は、その一部を調べてロットの品質を判断しますが、不合格が出たときは所定の追加試験等に進みます。最初の1本を勝手に除外して、都合のよい結果だけを採用する方法ではありません。
ボルトの締付けでは、必要な軸力によって接合面を強く押し合わせることが重要です。工具で回ったことや先端が取れたことは施工の一部の情報であり、共回りや回転量の異常なども確認します。検査は作業が終わった印を付けるだけでなく、力を伝える仕組みが意図どおり成立しているかを確かめるために行います。