学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問15
問題・正答・学習用解説
問題
木工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢4です。土台継手付近のアンカーボルトは、下木ではなく、上木の端部付近に設けます。上に重なっている木材を押さえることで、継手が浮き上がって外れることを防ぐ方向に働きます。本肢の耐力壁両端の柱下部付近という条件は適切で、継手の上下を取り違えた部分が誤りです。
土台は基礎の上に置く水平な木材で、柱や壁からの力を基礎へ伝えます。アンカーボルトはコンクリート基礎へ埋め込んだボルトを土台へ通し、座金とナット等で緊結する部材です。地震や風で壁が傾こうとすると、端の柱付近には上へ引き抜く力が生じるため、建物の重さで載せるだけでは十分ではありません。
継手で下木だけを固定しても、上木が持ち上がる動きを十分に押さえられません。重なりの向きと、引抜き力がどこを通るかを考えると上木側を押さえる理由が分かります。他の肢は、内部間仕切りの樹種、乾燥した造作材の確認、筋かいを傷めず間柱側を欠く取合いについて適切な内容です。部材の役割に応じて、乾燥・加工・接合の方法を選びます。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:特記のないRC造内部の間仕切軸組に杉を用いる本肢は適当です。ここでの間仕切軸組は、室内を区切る壁の下地となる木材の骨組です。建物全体の主要構造を担うRCの柱梁と、室内仕上げの下地材とを区別します。杉はこの用途の標準的な樹種として用いられます。ただし、樹種が適切でも、大きな欠点や反り、含水率の不適合などを無視してよいわけではありません。特記がある場合はその指定を確認し、用途に必要な品質の材料を使います。
選択肢2
選択肢2:搬入時に高周波水分計で造作材の含水率15%以下を確認する本肢は適当です。造作材は、枠や見切りなど室内の仕上げに関係する木材です。水分の多い木材を取り付けると、後から乾燥して縮み、隙間や反りが生じやすくなります。高周波水分計は、木材の電気的性質と水分の関係を利用して含水率を測る器具です。搬入時に測定することで、工場出荷時の状態だけでなく現場で使う前の状態を確認します。測定器の適用条件や測定位置も守ります。
選択肢3
選択肢3:間柱を筋かいの厚さだけ欠いて筋かいを通す本肢は適当です。筋かいは柱梁で囲まれた枠を斜めに結び、地震や風の水平力に抵抗する部材です。これを大きく欠くと、引張りや圧縮を負担する断面を減らしてしまいます。間柱は壁下地を支える細い縦材なので、この取合いでは間柱側を加工し、筋かいの断面を確保します。ただし、どの間柱も無制限に削ってよいわけではありません。構造上の役割や指定の納まりに従い、必要な固定も行います。
選択肢4
選択肢4:アンカーボルトを土台継手の下木端部付近に設ける点が不適当です。継手付近では上木の端部付近に設け、上側に重なる材の浮上がりを押さえます。下木だけを基礎へ固定しても、上木が持ち上がれば継手が開くおそれがあります。耐力壁両端の柱下部付近へ設ける点は適切です。また、アンカーボルトによる土台の固定と、柱の大きな引抜き力に対して設けるホールダウン金物等は、必要性能に応じて計画する別の接合です。用途を混同しないようにします。
周辺知識
木造の接合部では、部材の断面の大きさだけでなく、力が途切れず伝わることが必要です。耐力壁が水平力に抵抗すると、その両端には押す力や引き抜く力が生じます。その力を柱、金物、土台、基礎へ伝えるために、接合の位置と種類を適切に計画します。
木材を継ぐ部分には、重なりの上木と下木がある納まりがあります。上木を押さえると重なった下木も安定しやすい一方、下木だけを押さえても上木の浮上がりを止められない場合があります。上から重ねた板を片方だけ固定する場面を想像すると、固定位置の意味が分かります。
木材は乾湿によって寸法が変わり、方向によって縮み方も異なります。そのため、適切に乾燥した材を使い、施工中の雨掛かり等も管理します。強度のための接合管理と、隙間や反りを防ぐ含水率管理は、どちらも完成後の不具合に関係します。自然材料だから変化を無視するのでなく、その性質に合わせて扱うことが重要です。