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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問7

問題・正答・学習用解説

問題

地業工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    場所打ちコンクリート杭工事において、安定液中に打ち込む杭に使用するコンクリートの単位セメント量については、310kg/m³とした。
  2. (2)
    場所打ちコンクリート杭工事において、余盛り部分を所定の位置まではつり処理を行う計画であったので、処理の時期をコンクリート打込み後14日経過した後とした。
  3. (3)
    セメントミルク工法による既製コンクリート杭工事において、根固め液及び杭周固定液に使用するセメントについては、地下水に硫酸塩を含む場所であったので、高炉セメントを使用した。
  4. (4)
    セメントミルク工法による既製コンクリート杭工事において、掘削後のアースオーガーの引き上げについては、掘削時と同様にアースオーガーを正回転させながら行った。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢1です。本問で対象とする安定液中に打ち込む場所打ち杭では、コンクリートの単位セメント量の最小値を330kg/m3\displaystyle \mathrm{kg}/\mathrm{m}^{3}とする基準で判断します。310kg/m3\displaystyle \mathrm{kg}/\mathrm{m}^{3}では20kg/m3\displaystyle \mathrm{kg}/\mathrm{m}^{3}不足します。地上の一般的な部材や、無水掘りの条件をそのまま適用してはいけません。
場所打ち杭は地面に掘った穴へ鉄筋かごを入れ、その場でコンクリートを打ってつくる杭です。安定液は、掘った穴の壁が崩れないように孔内を満たす液です。その中へ打ち込むコンクリートには、鉄筋の間へ十分に回り込み、液中でも材料分離しにくい性質が必要です。単位セメント量は、そうした品質を確保するための調合条件の一つです。
ただし、セメントを増やすだけで杭の品質が決まるわけではありません。孔底の泥を除くこと、適切な方法で連続して打ち込むこと、杭頭の品質が低下し得る部分を余盛りとして後で除くことも必要です。仕様書によってさらに厳しい調合条件がある場合はそれに従います。本問では安定液中という条件を読み、310では足りないと判断します。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:安定液中へ打ち込む杭の単位セメント量を310kg/m3\displaystyle \mathrm{kg}/\mathrm{m}^{3}とした点が不適当です。本問の判断に用いる最小値は330kg/m3\displaystyle \mathrm{kg}/\mathrm{m}^{3}です。単位セメント量とは、出来上がるコンクリート1m³に使うセメントの質量であり、袋一つの量やセメント液だけの濃度ではありません。安定液中でも分離しにくく十分に充填できる調合が必要です。強度だけを指定して他の調合条件を無視せず、工法に対応する最小セメント量や水セメント比等も確認します。

選択肢2

選択肢2:打込み後14日を経過してから余盛りをはつる本肢は適当です。余盛りは、完成させる杭頭より上まで余分に打つ部分です。上部には泥や安定液の影響を受けた品質の低いコンクリートが残るおそれがあるため、硬化後に取り除き、健全な杭体を所定高さで使います。はつりはコンクリートを削り取る作業なので、若い材齢で強い衝撃を与えると残す部分にも損傷を及ぼしかねません。時期と方法を管理し、鉄筋や健全部を傷めず処理します。

選択肢3

選択肢3:硫酸塩を含む地下水を考慮して高炉セメントを選ぶ本肢は適当です。セメントミルク工法では、杭先端の支持を確保する根固め液と、杭周囲を固定する液を用います。これらが地中で長く性能を保つには、地下水による化学的な劣化も考える必要があります。高炉セメントは高炉スラグを含み、耐硫酸塩性等の面を考慮した材料選定に用いられます。ただし、どの濃度・条件でも絶対に劣化しない材料という意味ではなく、現地の水質や指定仕様を確認します。

選択肢4

選択肢4:アースオーガーを掘削時と同じ正回転で引き上げる本肢は適当です。アースオーガーは、らせん状の羽根などを備えた掘削装置です。引上げ時に逆回転させると、付着した土が孔内へ落ちるなどして施工品質を損ねるおそれがあります。また、急に引き抜くと吸引作用による負圧で孔壁を乱すことがあるため、回転方向だけでなく引上げ速度にも注意します。別の回転杭工法等の操作と混ぜず、本問のセメントミルク工法の手順として理解します。

周辺知識

杭工事は、完成後の大部分が土の中に隠れ、直接見て直すことが難しい工事です。そのため、施工前の地盤調査と、掘削深さ、支持層、液の状態、打込み量などの施工記録が重要になります。地上に出ている杭頭がきれいでも、地中の全てが健全だと判断できるわけではありません。
場所打ち杭は現場でコンクリートを打ってつくり、既製杭は工場製作した杭を現場で地中へ設置します。前者では掘削孔内のコンクリート品質、後者では杭本体の取扱いや地盤との固定、継手などが施工上の要点になります。同じ杭工事でも、管理する液や工程の意味が異なります。
「単位量」と「割合」も区別します。330kg/m3\displaystyle \mathrm{kg}/\mathrm{m}^{3}はコンクリート1m³当たりのセメント量です。一方、水セメント比は水の質量をセメントの質量で割った割合です。同じセメント量でも水が多過ぎれば性能は変わります。量、比率、流動性、分離しにくさを合わせて考えると、数値が単独の暗記事項でなく調合の条件として理解できます。