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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問6

問題・正答・学習用解説

問題

大規模な土工事及び山留め工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    掘削工事において、ボイリングの発生が予測されたので、地下水を遮断するために止水性のある山留め壁の根入れを難透水層まで延長した。
  2. (2)
    掘削工事において、盤ぶくれの発生が予測されたので、地下水位を低下させるために掘削底面(難透水層)下の被圧帯水層にディープウェルを差し込んだ。
  3. (3)
    ソイルセメント壁の施工において、掘削対象土が撹拌不良となりやすいロームを含んでいる地層であったので、入念に原位置土とセメント系懸濁液との撹拌を行った。
  4. (4)
    山留め支保工の架設において、切張りに設置する盤圧計については、その軸力を正しく計測するために、両側の腹起しから最も離れた位置として、切張り支点間の中央に設置した。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢4です。切張りの軸力を測る盤圧計は、腹起しに近い位置に設置します。両側の腹起しから最も離れた中央に置くという本肢は不適当です。力が入ってくる端部から離れると、その途中で他の部材へ力が分かれる影響を受けるためです。
山留め壁は掘削した場所へ周囲の土が崩れるのを防ぐ壁です。土や水から受けた力は、壁に沿う腹起しという横材に集まり、掘削空間を横切る切張りへ伝わります。切張りは両端から押される棒のように働き、その長さ方向に受ける力を軸力と呼びます。端部付近で測ることで、腹起しから伝わる力を把握します。
中央へ行くまでにつなぎ材や直角方向の部材へ力が伝わると、そこで測った値だけでは、端部に作用する力を表せない場合があります。「中央なら左右の力を平均して正確に測れる」という直感は使えません。他の肢は、地下水の流れを遮る、深い層の水圧を下げる、土とセメントを十分に混ぜるという、各現象に対応した対策になっています。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:止水性のある山留め壁を難透水層まで延ばす本肢は、ボイリング対策として適当です。ボイリングは、砂質地盤で上向きの地下水流が砂粒を持ち上げ、掘削底から砂と水が沸き上がるようになる現象です。壁の先端を水の通りにくい層まで入れると、外側の地下水が壁の下を回って底面へ流れ込む経路を抑えられます。ただし、壁の継目等の止水性や地層の連続性も必要です。壁が深ければ水の状態を調べなくてよいという意味ではありません。

選択肢2

選択肢2:掘削底下の被圧帯水層へディープウェルを入れる本肢は、盤ぶくれ対策として適当です。被圧帯水層は、水を通しにくい層の下などに閉じ込められ、圧力がかかっている地下水の層です。上の土を掘って軽くすると、その水圧が難透水層を押し上げることがあります。深井戸で対象層の水圧を下げれば、押上げ力を減らせます。地表付近の水だけをくみ出しても、深い層の圧力が十分に下がらない場合があるため、井戸を入れる層が重要です。

選択肢3

選択肢3:ロームを含む地層で、原位置土とセメント系懸濁液を入念にかくはんする本肢は適当です。原位置土は、その場にもともとある土のことです。ソイルセメント壁は、これをセメントを含む液と混ぜ、硬化させてつくります。ロームでは土が塊として残るなど、均一に混ざりにくい場合があります。混ざらない部分が残れば、強度や止水性にばらつきが生じます。液を多く入れるだけで解決したとせず、土質に合うかくはん方法と施工管理が必要です。

選択肢4

選択肢4:盤圧計を切張り支点間の中央に設置する点が不適当です。盤圧計は切張りに伝わる圧縮力を測る装置で、腹起しに近い位置に設けます。腹起しから中央までの間に、つなぎ材や交差部等があれば、力の一部が別の部材へ流れる可能性があります。その先の測定値を、壁から切張りへ入る全ての力だとみなすと判断を誤ります。温度変化等も測定値へ影響するため、値だけを独立して読むのでなく、設置位置と施工状況を対応させて管理します。

周辺知識

地面を掘ると、土の重さと水圧の釣合いが変わります。地上から見える乾いた土でも、深いところに水があり、掘削によって急に不安定になることがあります。土の種類、地下水の層、壁の深さを組み合わせて考えるのが山留め計画の基本です。
底が盛り上がる現象でも原因は異なります。ボイリングは砂と上向きの水流、盤ぶくれは下方の被圧水による底の押上げ、ヒービングは軟らかい粘性土が掘削側へ回り込むことが中心です。見た目が似ていても対策は同じではありません。どの力が、どの層を動かしているかを考えます。
計測では「測定器の数値が大きいか小さいか」だけでなく、何の力をどこで測っているかが必要です。壁の変形、切張りの軸力、周囲の沈下、地下水位を関連付けて読むと、変化の原因を判断しやすくなります。設計時の予測と施工中の実測を比較し、異常の兆候があれば次の掘削を進める前に対応を検討します。