学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
地盤調査及び仮設工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢3です。枠組足場の構面からの墜落防止措置として、交差筋かいに幅木を組み合わせる場合、幅木の高さは15cm以上が必要です。本肢の10cmでは不足します。10cmは落下物防止に関係する寸法と混同しやすい数値です。
枠組足場は、門形の枠をつなぎ、その間に作業床を設けた足場です。交差筋かいは斜めの部材を交差させて足場を安定させますが、その間には人の身体が通り得る隙間が残ります。床の端に設ける幅木等を組み合わせて、人が足場外へ落ちる危険を減らします。筋かいがあるだけで全ての開口が安全になるわけではありません。
本肢のシートを設けないという条件は、風を受ける状況に関係しますが、人の墜落防止措置を省いてよい理由にはなりません。他の肢は、載荷試験の地面を整えること、基準点を動かない場所に複数設けること、隣家を落下物から守る防護棚を設けることです。設備名と数字だけでなく、人・材料・周辺建物のどれを守る措置かを整理して判断します。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:直径30cmの載荷板の中心から1.2mの範囲を水平に整地する本肢は適当です。平板載荷試験は、地盤に板を置いて荷重を加え、その沈下を調べる試験です。板の直下や周辺が凸凹であったり、掘削によって緩んだりしていると、地盤そのものの性質とは違う影響を測ってしまいます。載荷板が均等に接地するよう地面を整え、試験地盤を乱さないことが必要です。小さな板の試験結果を、深い層まで含む建物全体の沈下へ無条件に当てはめるものではありません。
選択肢2
選択肢2:ベンチマークを移動のおそれのない場所に2箇所設け、相互確認できるようにする本肢は適当です。工事では高さや位置を一つの基準に合わせて測りますが、その基準自体が動くと、正しく測ったつもりでも全体がずれます。コンクリート杭や前面道路の安定した位置を利用し、複数点を比較することで異常を発見しやすくします。単に点を二つ作ればよいのではなく、掘削や重機の接触、道路工事などで動かない場所を選び、保護しておく必要があります。
選択肢3
選択肢3:交差筋かいに組み合わせる幅木を高さ10cmとした点が不適当です。枠組足場の構面からの墜落防止として幅木を用いる本問では、15cm以上が必要です。幅木は作業床の端に立てる板状の部材で、工具等の落下防止にも役立ちますが、人の墜落防止として求める条件と同一とは限りません。また、風荷重を受けるシートがないことは、人が隙間から落ちる危険をなくしません。何を防止するための寸法かを、足場の種類と合わせて確認します。
選択肢4
選択肢4:隣家までの水平距離が5mの条件で、地上5mに第1段の防護棚を設ける本肢は適当です。朝顔と呼ばれる防護棚は、建物や足場の外側に張り出し、落ちてきた材料や工具を受ける設備です。落下物が隣家や通行者へ達する危険を減らすため、周辺との距離や工事の高さに応じて設置します。ただし、防護棚があるから上部で材料を不安定に置いてよいわけではありません。落とさない管理と、落ちた場合の被害を抑える設備を組み合わせます。
周辺知識
地盤調査と仮設工事には、後の工事を安全で正確に進める土台を整えるという共通点があります。載荷試験は地盤の応答を確かめ、ベンチマークは測定の基準をそろえ、足場や防護棚は作業中の安全を確保します。完成後に見えなくなる設備でも、工事全体への影響は大きいものです。
安全対策では、危険の発生を防ぐ方法と、発生した場合の被害を減らす方法を重ねます。材料を固定して落とさないようにし、幅木等で落下を防ぎ、防護棚で下方への被害を減らすという関係です。一つの設備を設けたことを理由に、他の必要な措置を省いてはいけません。
寸法の問題では、対象と測る位置をセットにします。幅木の高さは床面から、載荷試験の整地範囲は板の中心から、防護棚の位置は地上からという具合です。15cmと10cm、板の半径と中心からの範囲などを混同しないため、簡単な断面を頭に描き、どの距離を指定しているか確かめると理解が安定します。