学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
建築工事等の届出等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢4です。同じ敷地で既存建築物を除却し、引き続き新築する場合、除却する建物の情報は建築工事届に記載し、独立した建築物除却届は不要です。また、建築物除却届の提出先は特定行政庁ではなく、原則として建築主事を経由した都道府県知事です。
除却とは建物を取り壊してなくすことです。建築工事届と建築物除却届は、建築や除却の動きを把握するための届出です。本肢では除却100m²という面積だけに目を向けると判断を誤ります。「引き続き同じ敷地に新築する」という工事のつながりを読めば、建築工事届で除却情報を扱う場合だと分かります。
他の届出は、それぞれ守る対象が異なります。使用中の病院の避難安全は特定行政庁、電波の通り道は総務大臣、作業者の労働安全は労働基準監督署長に関わります。高さ35mの建物が複数の制度に該当しても、一つの届出で全てを済ませられるわけではありません。対象、届出者、提出先、提出時期を制度ごとに組み合わせて覚えます。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:所定規模の病院を使用しながら避難施設に関する工事をするため、建築主が事前に安全上の措置等に関する計画を特定行政庁へ届け出る本肢は適当です。病院では自力避難が難しい人もいるため、工事中に階段や通路が使えなくなると危険です。届出は、工事区画や避難経路などの安全措置をあらかじめ確認するためのものです。病院なら規模や工事内容に関係なく常に同じ届出が必要とするのではなく、本肢の階数・面積・工事条件を読みます。
選択肢2
選択肢2:伝搬障害防止区域内の高さ35mの建物について、着工前に総務大臣へ届け出る本肢は適当です。伝搬は電波が伝わることで、この区域は重要な無線通信の経路を保護するためのものです。高さ31mを超える建築物等の工事が対象となるため、35mは該当します。大きな建物が電波の経路に入ると通信を遮るおそれがあり、着工前に計画を把握して調整する必要があります。建築確認を受けたことだけで電波法の手続が不要になるわけではありません。
選択肢3
選択肢3:高さ31mを超える建物の新築に際し、事業者が工事開始14日前までに労働基準監督署長へ建設工事計画届を出す本肢は適当です。高さ35mの本問は対象となります。高所作業や仮設設備など、規模に伴って増える労働災害の危険を考え、工事前に計画を届け出る制度です。同じ31mという数字が電波法にも登場しますが、こちらは労働安全衛生上の手続です。提出者も電波法の建築主とは異なり、工事を行う事業者である点を整理します。
選択肢4
選択肢4:同一敷地で除却後に引き続き新築するのに、独立した建築物除却届を提出する点が不適当です。この場合は建築工事届に除却する建物の情報も記載します。独立した除却届が必要な場合の提出先も、原則として建築主事を経由した都道府県知事であり、本肢の特定行政庁ではありません。除却面積100m²だけを見て、面積が大きいから必ず別の届出が必要と決めつけないことが大切です。除却と新築が同じ敷地で続くという条件を優先して確認します。
周辺知識
届出と許可・確認は役割が異なります。届出は所定の情報を行政へ知らせる手続、許可や確認はそれぞれの法令に基づく判断を受ける手続です。建築確認を受けても、騒音、道路使用、労働安全、電波などの別の手続をまとめて完了したことにはなりません。
提出先の名称が似ている点にも注意します。特定行政庁は建築行政を担う行政庁、建築主事は建築確認等を担う職員、都道府県知事は除却等の統計届出の提出先となる立場です。窓口を経由する場合と最終的な宛先も区別します。同じ市の窓口で受け付けるから制度上の提出先も同じとは限りません。
覚えるときは「何を守る手続か」を手掛かりにします。避難経路を守るなら建物の安全、電波経路を守るなら無線通信、工事中の人を守るなら労働安全です。そのうえで高さや面積、期限を結び付けると、31mや14日という数字だけを暗記するより、別の条件が示された問題にも対応できます。