電力
電験三種 令和7年度下期 電力 問16(b)
問題・正答・学習用解説
問題
三相3線式1回線の専用配電線がある。変電所の送り出し電圧が 6600 V,末端にある負荷の端子電圧が 6450 V,力率が遅れの70 %であるとき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし,電線1線当たりの抵抗は 0.5 Ω/km,リアクタンスは 0.4 Ω/km,線路のこう長は5kmとする。また,送電端電圧と受電端電圧との相差角は小さいものとする。(b) 負荷が遅れ力率80 %,W₂[kW]に変化したが線路損失は変わらなかった。W₂ の値[kW]として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。選択肢
- (1)
141
- (2)
243
- (3)
274
- (4)
415
- (5)
334
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)(243 kW)です。条件より線路損失 Ploss=3I2R が(a)と変わらず,線路抵抗Rも一定なので,線電流の大きさIも(a)と同じ I≒27.3 A のままです。新しい力率は cosθ=0.8 なので sinθ=0.6。まず受電端電圧を確認します。電圧降下は Vs−Vr′=3I(Rcosθ+Xsinθ) =1.732×27.3 ×(2.5×0.8+2.0×0.6) =1.732×27.3×(2.0+1.2) =1.732×27.3×3.2 ≃151V。よって Vr′=6600−151 ≃6449V。供給電力は W2=3Vr′Icosθ =1.732×6449×27.3×0.8 ≃243×103W ≃243kW。したがって(2)243 kWが正解です。 各選択肢の解説
選択肢1
141 kWは,線路損失一定の条件から電流が一定であることを使わず,電流が変化したと誤って扱った場合に生じる値で,正しい約243 kWに該当しません。
選択肢3
274 kWは,電圧降下や電流の扱いを誤って有効電力を過大に求めた場合の値で,正しい約243 kWとは一致せず不適です。
選択肢4
415 kWは,電流を実際より大きく見積もるなどして電力を過大に算出した場合の値で,正しい約243 kWを大きく上回り誤りです。
選択肢5
334 kWも,電流や力率,電圧の扱いを誤った計算過程から生じる値で,正しい約243 kWに該当しません。
周辺知識
『線路損失が変わらない』という条件は,線路損失 Ploss=3I2R(三相3線式)でRが一定なら『線電流Iの大きさが一定』を意味します。これが本問の最重要の着眼点です。電流が同じでも力率が0.7から0.8へ改善すると,有効電力 P=3VIcosθ は cosθに比例して増えるため,より大きな電力を供給できます(同じ電流=同じ損失でより多く送れる=力率改善の効用)。受電端電圧Vr′は力率変化で電圧降下が変わるため再計算しますが,本問では6450 V付近とほぼ同程度になります。検算として,電流一定なら有効電力の比は力率の比に等しく,W2≃W1×(0.70.8) =213×1.143 ≃243kW と簡便に確認できます。力率改善が送電容量・損失低減にどう効くかを数式で理解しておくと応用問題に強くなります。