資格ナビ電験三種の演習へ

機械

電験三種 令和7年度下期 機械 問16(b)

問題・正答・学習用解説

問題

次の図は,パワー半導体デバイスとしてダイオードを用いた三相整流装置の回路を示す。平滑リアクトルのインダクタンスLd\displaystyle L_{d}[H]は十分に大きく,直流電流Id\displaystyle I_{d}[A]は一定になっているものとする。交流側にリアクタンスXL\displaystyle X_{L}[Ω]のリアクトルがあると転流時に重なり角が生じ,直流電圧が降下する。また,ダイオードの順電圧降下VF\displaystyle V_{F}[V]によっても直流電圧が降下する。これら以外の電圧降下は無視する。入力交流電圧がVL\displaystyle V_{L}[V]のときのこの整流装置の出力電圧Vd\displaystyle V_{d}[V]は次式で求められる。Vd=32πVL−3πXL⋅Id−2VFV_{d}=\frac{3\sqrt{2}}{\pi}V_{L}-\frac{3}{\pi}X_{L}\cdot I_{d}-2V_{F}(図のように回路が接続されている。)この整流装置の入力交流電圧はVL\displaystyle V_{L}=200V,周波数はf=50Hz\displaystyle f=50Hzで,直流電流はId\displaystyle I_{d}=36Aである。交流側のリアクトルのインダクタンスはLL\displaystyle L_{L}=5.56×10−4\displaystyle 5.56\times10^{-4}Hで,その抵抗値は平滑リアクトルの抵抗値とともに無視できるものとする。また,各ダイオードの順電圧降下はVF\displaystyle V_{F}=1.0Vで一定とする。次の(a)及び(b)の問に答えよ。(b) 出力電圧Vd\displaystyle V_{d}の値[V]として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。問16(b)の図1

選択肢

  1. (1)
    270
  2. (2)
    264
  3. (3)
    263
  4. (4)
    262
  5. (5)
    251

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は(4)262です。まず交流側リアクトルのリアクタンスを求めます。XL=2πfLL\displaystyle X_{L}=2 \pi f L_{L} =2π×50×5.56×10−4\displaystyle =2 \pi \times 50\times 5.56\times 10^{-4} =314.16×5.56×10−4\displaystyle =314.16\times 5.56\times 10^{-4} ≃0.175Ω\displaystyle \simeq 0.175 \Omega。次に与えられた出力電圧の式 Vd=(32π)VL−(3π)XL⋅Id−2VF\displaystyle V_{d}=(\frac{3 \sqrt{2}}{\pi }) V_{L}-(\frac{3}{\pi }) X_{L}\cdot I_{d}-2 V_{F} に各値を代入します。第1項(理想出力):(32π)×200=(3×1.414213.14159)×200\displaystyle (\frac{3 \sqrt{2}}{\pi })\times 200=(\frac{3\times 1.41421}{3.14159})\times 200 ≃1.3505×200\displaystyle \simeq 1.3505\times 200 ≃270.1V\displaystyle \simeq 270.1 V。第2項(転流の重なり角による降下):(3π)×0.175×36=(0.9549)×0.175×36\displaystyle (\frac{3}{\pi })\times 0.175\times 36=(0.9549)\times 0.175\times 36 ≃0.9549×6.3\displaystyle \simeq 0.9549\times 6.3 ≃6.0V\displaystyle \simeq 6.0 V。第3項(ダイオード2個分の順電圧降下):2×1.0=2.0V\displaystyle 2\times 1.0=2.0 V。したがって Vd≃270.1−6.0−2.0\displaystyle V_{d}\simeq 270.1-6.0-2.0 ≃262.1V\displaystyle \simeq 262.1 V。よって(4)262 V が最も近い値です。

各選択肢の解説

選択肢1

270 V は理想出力(32π)VL≃270V\displaystyle \text{出力} (\frac{3 \sqrt{2}}{\pi }) V_{L}\simeq 270 V のみで,交流側リアクタンスによる転流降下(約6 V)とダイオード順電圧降下2VF(2V)\displaystyle 2 V_{F} (2 V)を差し引いていない値です。実際の出力はこれらを引いた約262 Vです。

選択肢2

264 V はダイオードの順電圧降下2VF=2V\displaystyle 2 V_{F}=2 Vを引き忘れた値に近く,270.1−6.0≒264 となります。2個直列分の順電圧降下も差し引く必要があり,正しくは約262 Vです。

選択肢3

263 Vは,ダイオードの順電圧降下を2VF=2.0 V\displaystyle 2V_{F}=2.0\,Vではなく,1個分のVF=1.0 V\displaystyle V_{F}=1.0\,Vだけ差し引くと得られる値です。その場合は270.1−6.0−1.0=263.1 V\displaystyle 270.1-6.0-1.0=263.1\,Vとなりますが,ブリッジでは2個分を差し引く必要があるため,正しくは約262 Vです。

選択肢5

251 V はリアクタンス XL\displaystyle X_{L} や順電圧降下の取り方(係数や桁)を誤って降下を過大にした値で,正しくは約262 Vです。

周辺知識

三相ブリッジ(6パルス)ダイオード整流の理想直流平均出力電圧は Vd0=(32π)VL\displaystyle V_{d_{0}}=(\frac{3 \sqrt{2}}{\pi }) V_{L} ≃1.35VL\displaystyle \simeq 1.35 V_{L}(VL\displaystyle V_{L} は入力線間電圧の実効値)で,これは線間電圧の波頭部分を6回÷周期\displaystyle \div \text{周期}で取り出すために得られる係数です。実際の出力はここから二つの要因で低下します。一つは交流側のリアクタンス(電源インピーダンスやリアクトル)による『転流(重なり角)電圧降下』で,電流が一方のダイオードから次へ瞬時に移れず重なり角uだけ同時導通するために生じ,その大きさは(3π)XL⋅Id\displaystyle (\frac{3}{\pi }) X_{L}\cdot I_{d} で表されます。これは直流電流Id\displaystyle \text{電流} I_{d} とリアクタンス XL\displaystyle X_{L} に比例するため,負荷電流が大きいほど・リアクタンスが大きいほど出力電圧が垂れ下がります(等価的に内部抵抗を持つように見える)。もう一つはダイオードの順電圧降下で,ブリッジでは電流経路に常に2個直列に入るため2VF\displaystyle 2 V_{F} だけ下がります。計算の流れは『XL=2πfL\displaystyle X_{L}=2 \pi f L を出す→理想値1.35VL\displaystyle 1.35 V_{L} を出す→転流降下と順電圧降下を引く』と定型化でき,(a)の損失計算と同じパラメータを使い回せます。実務では転流による電圧降下や電流の重なりは力率低下・高調波の原因にもなり,整流装置の設計で重要な評価項目です。係数1.35(=32π)\displaystyle 1.35 (=\frac{3 \sqrt{2}}{\pi })と(3π)≃0.955\displaystyle (\frac{3}{\pi })\simeq 0.955は暗記しておくと速く正確に解けます。