学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅳ(構造) 問11
問題・正答・学習用解説
問題
鉄筋コンクリート構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
靱性は、力を支える能力を急に失わず、粘り強く変形できる性質です。単に「強い力へ耐えられる」こととは区別します。鉄筋コンクリートの梁が曲がると、片側は引っ張られ、反対側は押されます。引張側ではひび割れたコンクリートに代わって主筋が引張力を負担し、圧縮側ではコンクリートと圧縮側主筋が押す力を負担します。
圧縮側主筋があると、圧縮力をコンクリートだけへ集中させずに分担できます。そのため、コンクリートが押しつぶれて急に抵抗を失う状態を抑え、梁が曲げ変形を進める余裕を改善します。さらに地震では曲げの向きが繰り返し反転するので、ある瞬間に圧縮側であった鉄筋が、次の瞬間には引張側として働きます。したがって「靱性の確保には効果がない」とする選択肢4が誤りです。
ただし、圧縮側へ主筋を入れるだけで無条件に粘り強い梁になるわけではありません。周囲を囲うあばら筋によって主筋の横への曲がりやコンクリートの膨らみを抑え、斜めのひび割れに沿う急なせん断破壊を防ぐ必要があります。主筋と輪状の補強筋の役割を組み合わせて、強さと変形能力を確保します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)梁を囲む輪状の鉄筋をあばら筋、柱を囲むものを帯筋と呼びます。どちらも斜めのひび割れを横切って引張力を負担し、せん断破壊を抑える役割があります。あばら筋比・帯筋比を0.2%以上とするのは、その最低限の補強量を確保する規定です。0.2%は小数では0.002で、鉄筋一本の径が0.2という意味ではありません。鉄筋の断面積、部材の幅、配置間隔の組合せで比を計算するため、径だけでなく間隔も重要です。
選択肢2
(2)帯筋は端が開くと、主筋と内部コンクリートを囲って押さえる効果が弱くなります。通常の135度フックは、端部が抜け開かないようコンクリートへ引っ掛けて定着する方法です。これに代えて、必要な溶接長さなどを満たして帯筋相互を片面溶接し、閉じた輪として働かせる方法もあります。記述は高強度せん断補強筋を除くという条件を付けており適切です。どの鉄筋でも短く点付けすればフックを省けるという意味ではありません。
選択肢3
(3)引張鉄筋が極端に少ない梁では、コンクリートに最初の曲げひび割れが入った瞬間、鉄筋へ移る引張力を受け切れないおそれがあります。そこで、長期荷重時の正負最大曲げ部分には最低限の鉄筋量を定めます。本問は引張鉄筋比0.4%に相当する量と、計算上必要な量のとのうち小さいほう以上であり、記述は適切です。上側が引張りとなる負曲げ部分と下側が引張りとなる正曲げ部分を、それぞれの引張側で確認します。
選択肢4
(4)圧縮側主筋は、押す力の一部を受け持つことで圧縮側コンクリートの負担を和らげ、曲げ変形の余裕を改善します。また、地震の往復によって曲げが反転すれば、同じ主筋が引張力も担います。この二つの理由から、地震時の靱性に効果がないと切り捨てることはできません。一方で、圧縮される細い鉄筋自体が横へはらみ出さないように、あばら筋などの拘束も必要です。圧縮側主筋の存在と周囲の補強を一組で考えます。
周辺知識
コンクリートは石のように押される力には強い一方、引っ張られると比較的小さな力でひび割れます。鋼の鉄筋は引張りに強いため、一緒に用いると役割を補えます。ただし、鉄筋が内部で滑れば一体として働けません。表面の節などを介して力を受け渡す付着と、必要な埋込み長さを確保する定着が前提です。
梁の中央を下へ押すと下側が引っ張られますが、柱に固くつながった端部や地震時では、上側が引っ張られる場合もあります。上端筋・下端筋は位置の呼び名で、引張筋・圧縮筋はそのときの力の役割です。位置の呼び名と役割を固定して結び付けると、本問の圧縮側主筋を不要と誤解しやすくなります。
鉄筋量を増やせば全ての性質が改善するわけではありません。引張側の鉄筋ばかり多いと、鉄筋が十分に伸びる前に圧縮コンクリートが限界へ達することがあります。大地震では、鉄筋の降伏を使って変形を吸収しつつ、コンクリートの圧壊、せん断、付着の急な破壊を抑えることが重要です。最低量の規定と、変形能力を確保する配筋の考え方を合わせて理解します。