学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問17
問題・正答・学習用解説
問題
電気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。避難口誘導灯のA級・B級・C級は、表示面の大きさや明るさなど、見つけやすさに関係する性能の区分です。停電後に何分間点灯を続けられるかという予備電源の容量の区分ではありません。
避難口誘導灯は、緑色の人の図などで出口の位置を示します。広い空間や離れた位置からでも見える必要がある場所と、小さい空間では、必要な表示面の大きさや光の性能が違います。この見え方を扱う級と、電池にどれだけのエネルギーを蓄えておくかは別の条件です。同じ大きさの表示でも、電池容量を変えれば点灯を続けられる時間は変わります。
予備電源は、通常の電源が止まった際にも点灯させるための備えで、建物の用途・規模等に応じた点灯継続時間が求められます。級が高いから自動的に停電に長く耐えられる、と読んではいけません。「どの距離から見えるか」と「いつまで光り続けるか」を別々に確認することが、本問の中心です。防災設備では一つの機器にも、用途、視認性、電源の確実性など複数の性能条件があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。A・B・C級は表示面の縦寸法や明るさなどに基づく区分で、予備電源による点灯時間の長さを表しません。例えば遠くから出口を見つけるには十分な大きさの表示が必要ですが、電池が長持ちするだけでは小さすぎる表示を見やすくできません。逆に大きな誘導灯でも、必要な電池容量を備えなければ停電後の点灯を維持できません。表示の性能と蓄電の性能は、どちらも必要ですが別々に検討する項目です。級の文字を時間の長さへ読み替えた点を訂正します。
選択肢2
(2)適当です。非常コンセントは、消防隊が救助・消火活動で使う照明や機器へ電気を供給する設備です。単相交流100V、15A以上を供給できる能力を備えます。電圧Vは電流を押し流す電位差、電流Aは流れる電気の量の速さです。力率を1とした単純な目安なら に相当します。普通の利用者が日常の家電を使うためのコンセントと、災害時に消防活動を支える専用の設備では、配置や電源の確保の目的が異なります。
選択肢3
(3)適当です。非常電源専用受電設備は、通常用とは区別した受電設備で消防用設備等へ電力を供給する方式ですが、外部の電力供給そのものが止まれば供給を続けられません。大規模な特定防火対象物では、人命への影響が大きく、消防用設備等の非常電源としてこの方式を使えない扱いになります。発電機や蓄電池のように建物側で電力を確保する方法と、電力会社から受ける経路を保護する方法の違いを押さえます。「専用」という名称だけで独立した発電能力があるとは判断しません。
選択肢4
(4)適当です。蓄電池は、余裕のあるときに電気を蓄え、必要なときに取り出す装置です。停電時の電源や瞬間的な停電への備えに加え、使用量が多い時間帯へ放電して受電のピークを抑える用途があります。太陽光発電の出力が雲などで変動する場合にも、その変動を吸収できます。ただし用途によって必要な出力と蓄える量は違います。一瞬だけ大きな電力を出す設備と、数時間供給し続ける設備を同じ容量の考え方だけで選ばないことが重要です。
周辺知識
防災用の照明は、役割で区別します。誘導灯は出口の位置や避難方向を知らせ、非常用照明は停電時にも通路や床などを照らして移動を助けます。出口マークが見えても足元の段差が見えなければ安全に移動できず、足元が明るくても出口の方向が分からなければ困ります。両者は互いの代わりになるとは限りません。
電源の計画では、出せる電力と蓄えられるエネルギーを分けます。WやkWはその瞬間に働く能力、WhやkWhは一定時間で使う電力量です。例えば20Wの灯を1時間点灯するには、損失などを無視すれば20Whのエネルギーが必要です。点灯時間を3倍にするには、同じ消費電力なら必要な電力量も3倍になります。
この関係を誘導灯に当てはめると、表示面の大きさや明るさの基準を満たすことと、所定時間点灯する電池容量を確保することは別だと分かります。また非常電源は「停電した瞬間に使えるか」「必要な時間使えるか」「火災の影響を受けにくいか」も重要です。防災設備の問題では、普段動くことだけでなく、通常電源が失われた状態での機能を確認します。