資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問15

問題・正答・学習用解説

問題

排水・通気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    公共下水道が合流式であっても、汚水排水管が詰まった場合に衛生器具から室内に雨水が浸入しないようにするため、建築物内の雨水排水管と汚水排水管の兼用は避ける。
  2. (2)
    公共下水道へ排水する場合には、原則として、排水温度を45 ℃未満にして排水する。
  3. (3)
    ループ通気方式は、2 個以上のトラップを保護するために用いられる方式であり、一般に、伸頂通気方式に比べて、許容流量値が小さくなる。
  4. (4)
    排水管内の点検や清掃のための掃除口の大きさは、原則として、排水管径が100 mm以下の場合は同一の口径とし、排水管径が100 mmを超える場合には100 mmより小さくならないようにする。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)です。ループ通気は、伸頂通気だけの場合に比べて、一般に排水管の許容流量を大きくできます。「小さくなる」という説明が逆です。許容流量は、単に管に入る水の量ではなく、トラップの封水を壊すような圧力変動を起こさず、安全に流せる排水量を考えた値です。
トラップは、排水口の下に水をためて下水の空気を室内へ通さない仕組みです。ところが排水が勢いよく流れると、後ろの空気を引っ張って負圧を生じたり、下流の空気を押し込めて正圧を生じたりします。負圧は封水を吸い出し、正圧は封水を押し上げるため、臭いやガスを止める水の栓が失われることがあります。
通気管は水を流すためではなく、空気の出入りでこの圧力変動を和らげるための管です。伸頂通気は排水立て管を上へ延長して大気へ開放します。ループ通気は複数の器具をつなぐ排水横枝管にも通気経路を設け、器具近くの空気の出入りを助けます。その結果、封水を保ちながら流せる量を増やせることが本肢の判断理由です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。公共下水道の合流式は、道路などの下水道で雨水と汚水を一緒に運ぶ方式です。しかし建物内部まで同じ管にすると、汚水管が詰まった際、大雨で屋根から流れ込んだ水が便器や流しへ押し戻されるおそれがあります。屋外の下水道の方式と、室内を守るための配管方法は別の判断です。建物内では雨水と汚水の管を分け、必要な接続は適切な位置で行う考え方になります。単に最終的に同じ下水道へ行くから途中も兼用してよい、とはしません。

選択肢2

(2)適当です。公共下水道へ出す水は、原則として45℃未満にする条件があります。熱い水をそのまま流すと、配管などへの影響や下水処理の支障につながるためです。例えば大量の高温排水を出す厨房や設備では、必要に応じて温度を下げてから排水します。「未満」は45℃を含まず、「以下」と違います。設備の許容温度と下水道へ流せる温度は必ずしも同じではないので、器具から出る水の温度だけでなく、公共下水道へ出る段階の条件を確認します。

選択肢3

(3)不適当です。ループ通気は、複数のトラップを保護するため排水横枝管に空気の経路を設ける方式です。水が流れる際に空気が吸われたり押されたりしても、通気管から空気が出入りできれば管内圧力の変化を抑えられます。伸頂通気のみより一般に多くの排水を安全に扱えるので、許容流量は大きくなる方向です。通気管を追加することで排水の通り道が狭くなる、と考えるのは誤りです。水の管に加えて、空気を動かす別の道を設けていると理解します。

選択肢4

(4)適当です。掃除口は、配管の詰まりを除くワイヤーなどを入れ、点検・清掃を行うための口です。排水管径100mm以下では同径、100mmを超える管では少なくとも100mmを確保します。例えば75mmの管なら75mm、150mmの管なら最低100mmという考え方です。大きな管でも小さな点検穴だけでは十分に掃除できません。一方、全ての掃除口を無条件に排水管と同じ大径にする規定でもありません。数値の境目を、作業に必要な開口の大きさとして理解します。

周辺知識

排水設備を図にするときは、水だけでなく空気の動きも一緒に描くと理解が進みます。給水は圧力をかけて送りますが、一般的な排水は重力を利用して下へ流し、管の中には空気も存在します。大量の水が流れると空気を巻き込み、配管の形によって圧力が変わります。そのため、排水管を太くするだけで全ての問題を解決できるわけではありません。
洗面器や便器の下にある封水は、室内と下水の間の水の壁です。封水が減る原因には、圧力で吸い出されること、吹き飛ばされること、長期間使わず蒸発することなどがあります。通気は主に圧力変動への対策であり、長く使わない器具の水が蒸発する問題まで自動的に防ぐものではありません。
また、詰まった後の清掃を考えて掃除口を設けること、熱い水を適切な温度にして出すこと、雨水の逆流を防ぐことは、設備を長く衛生的に使うための計画です。「流れればよい」から一歩進め、臭いを止める、異常時に逆流させない、後から掃除できる、という条件まで一緒に確認します。