学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問12
問題・正答・学習用解説
問題
事務所ビルの空気調和設備等の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。火災時に煙を外へ流すための排煙主ダクトへ、熱で閉じる一般の防火ダンパーを設けると、必要なときに煙の通り道を塞いでしまいます。通常の換気ダクトに求める「火災時に閉じて延焼を防ぐ」機能を、排煙ダクトへそのまま当てはめた点が誤りです。
ダクトは空気の通り道、防火ダンパーはその途中に設ける扉のような部品です。通常のダクトが防火区画を貫通すると、区画の穴を通じて火や煙が他室へ広がるおそれがあるため、ダンパーを閉じて経路を遮断する対策を取ります。一方、排煙設備は火災中に熱い煙を通して排出することが役目です。同じ温度反応で閉じれば、その役目と矛盾します。
排煙竪ダクトの防火性能は、必要な構造や竪穴区画などによって確保し、排煙経路を維持する設計を行います。機器が防火用という名称だから、どこへ付けても安全性が増すとは限りません。平常時と火災時で何を動かし、何を止めるべきかを、設備の目的から確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。中央管理室は、設備が正常に作動しているかを監視し、必要な操作をまとめて行う拠点です。避難階は直接地上へ出られる出口を持つ階で、必ずしも建物の呼び名としての1階だけを指すわけではありません。ここへ中央管理室を設ければ、管理者の出入りや異常時の対応がしやすくなります。機械を建物各所へ置くことと、状態をまとめて把握する管理拠点を置くことを分けて考えます。中央管理方式では、装置そのものに加えて、監視・操作する場所の計画も必要です。
選択肢2
(2)適当です。シャフトは、上下の階をつないで配管などを通す縦の空間です。各階で位置がそろえば、配管をほぼ真っすぐ上下へ通せます。位置がずれると途中で横方向へ曲げる必要があり、横引き部分のため天井裏を広く取り、点検箇所も増えます。漏水したときに配管へ近づいて補修できることも重要です。例えば建物の各階のトイレ位置が大きくずれると配管計画が複雑になるのと同じです。床面積を詰め込むだけでなく、建設後に使い続けるための空間を確保します。
選択肢3
(3)不適当です。FDはFire Damperの略で、一般に熱を検知してダクトを閉じ、火災の拡大を防ぐ部品です。しかし排煙主ダクトは、火災時に煙を通さなければなりません。床を貫通するからという理由だけでFDを入れると、火災時の高温で閉まり、上流側の煙を排出できなくなるおそれがあります。区画の性能を守ることと排煙を継続することを、所定のダクト構造や区画方法で両立させます。通常換気用のダクトと排煙用ダクトを、用途を見ずに同じ扱いにしてはいけません。
選択肢4
(4)適当です。冷却塔は、水の一部を蒸発させるなどして熱を外気へ捨てる装置です。周囲には暖かく湿った排気や細かな水滴が出るため、それを事務室の外気取入口へ吸い込ませない配置が必要です。10mの離隔を設けた本肢は、そのための適切な計画です。水滴には衛生上の問題が生じ得るため、単に暖かい空気を避けるだけの対策ではありません。距離とともに風向・排出方向・保守管理も関係し、離して設置した後も冷却水の管理が不要になるわけではありません。
周辺知識
建築設備の計画では、建物が完成した瞬間だけでなく、運転中、点検中、故障時、火災時という複数の状態を考えます。機械室やシャフトを小さくしすぎると、据え付けはできても部品交換ができない、漏水箇所に手が届かない、といった問題が起こります。設備の周囲の空間は余りではなく、維持管理のための機能を持ちます。
防火区画は、火災の広がる範囲を床や壁などで区切る仕組みです。配管やダクトがその区画を貫く部分は弱点になりやすいため、貫通部の処理を行います。ただし処理方法は設備の役目によって違います。通常空調は止めたり閉じたりする一方、排煙は火災時こそ動かすため、閉鎖によって機能を失わせない工夫が必要です。
また、外気取入口は建物が新鮮な空気を吸う場所です。冷却塔、排気口、煙突などとの位置関係を考えないと、捨てたはずの空気や水滴を再び取り込んでしまいます。人の動線を計画するように、空気・水・点検する人の動線も図の上でたどると、建築と設備を一体で計画する意味が見えてきます。