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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和7年度 学科Ⅴ(施工) 問25

問題・正答・学習用解説

問題

建築物の工事請負契約又は監理業務委託契約に関する次の記述のうち、民間(七会)連合協定「工事請負契約約款」(令和5年1月改正)又は四会連合協定「建築設計・監理等業務委託契約約款」(令和2年4月改正)に照らして、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    工事請負契約において、受注者は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権その他日本国の法令に基づき保護される第三者の権利の対象となっている工事材料を使用するときは、その使用に関する一切の責任を負わない。
  2. (2)
    工事請負契約において、発注者は、受注者が工事を完成しない間は、必要によって、書面をもって受注者に通知してこの工事を中止し又はこの契約を解除することができ、これによって生じる受注者の損害を賠償する。
  3. (3)
    監理業務委託契約において、受託者は、委託者の承諾を得て監理業務の一部について、他の建築士事務所の開設者に委託した場合、委託者に対し、当該他の建築士事務所の開設者の受託に基づく行為全てについて責任を負う。
  4. (4)
    監理業務委託契約において、委託者は、当該監理業務を原設計者と異なる建築士に委託したとき、監理業務の段階において、設計成果物について変更の必要が生じた場合には、原設計者が受託しない場合を除き、当該設計変更業務を原設計者に別途委託しなければならない。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

選択肢1が不適当です。第三者の特許権などの対象である工事材料を使用するとき、原則として受注者が使用に関する責任を負います。「一切の責任を負わない」とした本肢は、この原則を逆にしています。本問は、指定された令和5年1月改正の工事請負契約約款などを前提に判断します。
発注者は工事を注文する側、受注者は工事を請け負う側です。第三者はこの二者以外の権利者を指します。特許権は発明、実用新案権は物品の形状等の考案、意匠権はデザイン、商標権は商品やサービスを識別する標識などを保護する制度です。工事材料や工法にも、これらの権利が関係することがあります。
受注者が自ら材料を選んで使う場合、必要な権利処理や使用条件を確認せず、権利者との問題は全て発注者の責任だとすることはできません。例えば、保護された工法を許諾なく採用すれば、工事の継続や費用に影響し得ます。一方、発注者が指定した場合の費用負担などには約款上の条件があるため、原則と個別の取扱いを分けます。本肢はそうした条件を示さず、責任を一切負わないと断定している点が誤りです。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:不適当です。受注者は、第三者の権利の対象となる材料などの使用について、原則として責任を負います。工事に使う物だから知的財産権が関係しない、ということにはなりません。権利者からの許諾の要否、使用条件などを確認して適切に使用する必要があります。ただし、正規に購入した製品を使う場合にも常に別途の許諾料が必要という意味ではなく、権利と取引の条件に応じて判断します。本肢の問題は、こうした確認を含む責任を一律に否定していることです。

選択肢2

選択肢2:適当です。発注者は工事が完成する前に、必要に応じて書面で通知し、工事を中止したり契約を解除したりできます。ただし、その結果生じた受注者の損害を賠償するという条件が付いています。例えば受注者が既に材料を手配しているなど、途中で止めることで損害が生じ得るためです。発注者が決められることと、費用負担なく終えられることは同じではありません。また、相手の契約違反を理由とする解除とは分け、本肢の発注者の必要による中止・解除として読みます。

選択肢3

選択肢3:適当です。委託者は監理を依頼する側、受託者はその監理を引き受ける側です。承諾を得て監理業務の一部を別の建築士事務所へ委託しても、元の受託者は委託者に対する責任を負います。依頼者にとっては、契約相手が約束した業務を適切に実施する必要があり、再委託を理由に責任の窓口が消えては困るためです。承諾は再委託を認めるもので、元の受託者の責任を免除する意味ではありません。他の事務所の選定、連絡、成果の確認などを含め、契約上の履行を確保します。

選択肢4

選択肢4:適当です。監理を原設計者と別の建築士へ依頼している場合、監理段階で設計成果物の変更が必要になれば、原設計者が引き受けない場合を除き、設計変更を原設計者へ別途委託するという約款上の扱いです。工事監理は、工事を設計図書と照らして確認する業務で、設計内容を新しく変更する業務とは区別されます。原設計者は設計の意図や条件を把握しているため、変更もそのつながりを確認して行います。監理の契約を結んだだけで、全ての設計変更まで当然に含まれるわけではありません。

周辺知識

建築の契約を読むときは、まず関係者を整理します。工事請負契約では発注者と受注者、設計・監理の業務委託契約では委託者と受託者という呼び方が中心です。同じ建築主が一方では発注者、他方では委託者になることがあります。用語を入れ替える前に、今どの契約の責任を考えているかを確認します。
設計は建物の内容を図面などへ具体化する業務、工事監理は工事が設計図書に沿っているかを確認する業務、施工は実際につくる業務です。役割が違うため、契約の相手、範囲、変更の扱いも異なります。工事の途中で設計を変える場合、現場で指示を出すことだけで済まず、設計変更の業務や工事費・工期の調整が必要になる場合があります。
約款は、当事者間の責任や手順を定める共通の契約条項です。法律そのものと同一ではなく、本問は指定された版の約款に照らして判断します。「承諾を得た」「解除できる」といった権限だけを読むのでなく、その後に残る責任、損害の負担、書面通知、別途の委託までつなげて読むと、各選択肢の意味を理解できます。