学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅴ(施工) 問24
問題・正答・学習用解説
問題
建築工事に関する用語とその説明との組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。| 用語 | 説明 | |
|---|---|---|
| 1. | スカラップ | 溶接線の交差を避けるために、一方の母材に設ける扇形の切欠き |
| 2. | チェッキング | 充塡したシーリング材や塗膜表面に生じる細かいひび割れ |
| 3. | バスダクト | 騒音を吸収するため、空調ダクト系の分岐部などに挿入される箱型の装置 |
| 4. | ラミネーション | 圧延鋼材の欠陥で、鋼材に含まれる硫黄その他の不純物部分が熱応力で開裂する現象 |
選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
選択肢3のバスダクトと説明の組合せが不適当です。バスダクトは、大きな電流を運ぶ導体を金属製のケースへ収めた電気設備です。空調ダクトに入れて音を吸収する箱形装置は、消音チャンバーなどに当たり、用途が異なります。
バスはこの場合、電気をまとめて配る母線を意味します。母線は複数の回路へ電力を分ける幹になる導体です。バスダクトには、帯状などの銅やアルミニウムの導体を絶縁して納め、大きな電流を各階などへ配る働きがあります。名前にダクトが付いても、内部に空気を流す設備ではありません。
一方、空調の消音チャンバーは空気の通り道の一部で、内部の吸音材や形状によって音を小さくするための装置です。送風機の音などが部屋へ伝わり過ぎないようにします。本肢はこの空気と音に関する説明を、電気の設備名へ付けているので誤りです。用語問題では、聞き覚えのある単語の一部だけで判断せず、「何を扱う分野か」「どんな物か」「何をするか」の三点を対応させます。残る三肢は、鉄骨の加工形状、表面のひび割れ、鋼材の層状欠陥という別々の対象です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:適当です。スカラップは、溶接線が交差しないよう、鋼材の一部へ設ける扇形などの切欠きです。梁のウェブなどの端に設け、フランジの溶接部分との干渉を避ける例があります。溶接線が交わる場所では施工が難しくなり、欠陥や応力集中への配慮も必要です。ただし、切欠きを大きくすればよいわけではなく、断面の減少や端部形状も構造に影響します。所定の形状で加工する設計上の納まりであり、施工の都合で任意の大穴をあけることとは区別します。
選択肢2
選択肢2:適当です。チェッキングは、シーリング材や塗膜の表面へ細かなひび割れが生じた状態を表します。乾燥や経年変化などで表面が細かく割れて見えるイメージです。コンクリート躯体が大きく割れていることを直接意味する用語ではなく、まず仕上げ材料の表面の状態を示しています。ただし表面だけのように見えても、深さや広がり、付着の状態を確認して補修を判断します。見た目の用語を知ることと、その原因や必要な処置まで確定することは別の段階です。
選択肢3
選択肢3:不適当です。バスダクトは電力を配る母線をケース内へ納めた設備で、音を吸収する空調用装置ではありません。工場や大きな建物などで大電流を運ぶ用途を思い浮かべると、電気設備とのつながりが分かります。対して本肢の説明は消音チャンバーなどの空調設備です。ダクトという語には囲われた通路やケースという使われ方があり、単語の一部分が同じでも中を通るものは違います。「電流を運ぶ導体」と「空気を通しながら音を減らす箱」を区別して対応させます。
選択肢4
選択肢4:適当です。ラミネーションは、圧延鋼材の内部に生じる層状の欠陥に関する用語です。鋼をローラーで延ばす圧延の過程で、不純物などを含む部分が層状となり、溶接時などの熱による応力で開くことが問題になります。本肢は、この鋼材内部の層状欠陥と開裂を説明しています。外から見える塗膜のひび割れや、設計して設けたスカラップとは別です。表面が平らで健全に見えても内部に欠陥があり得るため、必要に応じて超音波探傷など、内部を調べる検査を使います。
周辺知識
施工の用語は、名前だけを覚えるより、対象、働き、確認方法を組み合わせると整理しやすくなります。スカラップは鋼材に設ける形、チェッキングは表面に見える損傷、ラミネーションは鋼材内部の欠陥、バスダクトは電気を運ぶ装置です。同じ建物に使われても、分類が異なります。
意図して設けた形と、不具合で生じた形も区別しましょう。スカラップは適切な溶接の納まりをつくるために計画された切欠きです。一方、チェッキングやラミネーションは、調査や品質判定の対象になる状態です。「穴や割れがある」という外観の印象だけで同じ扱いにはできません。
設備では、ダクト、配管、母線などについて何が通るかを確認します。空調ダクトは空気、給水管は水、電気の母線は電流を運ぶ導体です。消音チャンバーは空気の流れを保ちつつ音を抑える設備であり、電力を分配する働きはありません。図面や仕様書で知らない語に出会ったら、まず工種を確かめ、次に対象物と目的を言い直すと、似た響きの用語に引っ張られにくくなります。