学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅴ(施工) 問21
問題・正答・学習用解説
問題
各種建築工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
選択肢1が不適当です。雨水用排水ますやマンホールの底には、排水管の底より下へ150mm以上の泥だめを設けます。本肢の100mmでは、必要な深さに50mm不足します。排水ます全体の深さではなく、流れていく管の底からさらに下に設けるくぼみの深さです。
雨水には、地面や屋根から運ばれた土、砂、落ち葉の細片などが混ざります。そのまま細い管へ流れると、途中で沈んで詰まりやすくなります。ますの底に余地を設けておけば、重い砂や泥が沈み、水が管へ流れ出る際に固形物の一部を分けることができます。
泥水をコップへ入れて少し置くと底に砂が沈むように、泥だめは流速が落ちる場所で沈殿させる仕組みです。ただし、泥が消える装置ではありません。たまった泥を取り除かなければ、くぼみはやがて埋まり、管へ流れ込むようになります。したがって、所定の深さと、蓋を開けて清掃できる構成の両方が必要です。雨水用の泥だめと、汚水を滞留させず流すためのますの底の納まりは目的が異なります。「排水ますなら全て同じ底の形」とまとめないことも大切です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:不適当です。泥だめは通常150mm以上を確保するため、100mmでは不足です。管の底の高さより下にくぼみを設け、流れてきた砂や泥をそこで沈ませます。ますの底から地面までが十分深くても、管底より下の部分が100mmしかなければ、この条件を満たしません。測る二点を確認しましょう。深さを確保しても清掃をしなければ働きは失われるので、点検できる蓋や作業できる配置も必要です。施工時の寸法と、使い始めてからの維持管理がつながる部分です。
選択肢2
選択肢2:適当です。乾式の張り石は、石の裏をモルタルで全面的に固める方法とは異なり、取付け金物で石材を支持します。石裏と躯体の間に70mmの取付け代を設けるのは、金物を納め、位置を調整するための空間を確保する扱いです。躯体には施工上の凹凸や寸法のずれがあり、石を直接ぴったり当てるだけでは平らな外観に整えにくくなります。ただし空間を広げればよいわけではなく、金物が所定の荷重を伝えられる寸法にします。下地と仕上げの間の構造を考えることが要点です。
選択肢3
選択肢3:適当です。モルタルによる著しい汚れに対し、監理者の承認を得て、工業用塩酸を30倍程度に薄めて洗うという条件です。塩酸はセメント成分に作用して汚れを落としますが、タイル、目地、周囲の金属などを傷める恐れもあります。そのため必要性と材料への適合を確認し、十分な希釈、周囲の保護、洗浄後の水洗いなどを管理します。濃いほど早くきれいになるとして原液を使う考え方は不適切です。通常の清掃で除けない汚れへの限定された処理として理解します。
選択肢4
選択肢4:適当です。吹付け硬質ウレタンフォームは、材料が化学反応して発泡し、その場で断熱層になるものです。この反応では熱も発生します。一度に厚く吹くと内部の熱が逃げにくくなり、異常発熱や発泡状態の不良につながるため、1層の厚さを30mm以下とする扱いは適当です。必要な総厚さが大きい場合は、製造所の施工条件に従って層を重ねます。完成時に必要な断熱厚さと、一度の吹付けで施工できる厚さは別の値です。工程を分けることが品質を保つ理由になります。
周辺知識
工事の寸法には、完成時の見た目だけでは分からない役割があります。泥だめの深さは砂をためる容量、石の取付け代は金物と調整のための空間、ウレタンの一層厚さは反応熱と発泡状態を管理する条件です。同じmmの数値でも、防いでいる現象を分けて理解すると覚えやすくなります。
また、「厚い・大きい・濃いほどよい」とは限りません。断熱材の総厚さを確保したくても一度に厚く吹くと品質を損ねます。清掃用の酸も濃度を高くすると、汚れと一緒に残すべき材料まで傷める恐れがあります。材料が働く仕組みを理解し、適切な範囲で施工する必要があります。
完成後の維持管理まで考える例が泥だめです。施工者が所定の深さをつくり、利用開始後に管理者が清掃することで、詰まりを防ぐ働きが続きます。点検できない場所へ設けると、寸法が正しくても機能が維持できません。設計寸法、施工の条件、将来の点検という三段階を結び付けて読むことが、さまざまな工種に共通する施工管理の考え方です。