学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅴ(施工) 問7
問題・正答・学習用解説
問題
地業工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
選択肢1の「孔底の中心1か所で行った」が不適当です。底ざらい後の孔底は、中心だけでなく位置を変えた複数の点で深さを確認します。測定する道具が適切でも、1点だけでは孔底全体の状態を代表できないからです。
アースドリル工法は、回転する掘削バケットで円形の孔を掘り、その中に鉄筋かごを入れてコンクリートを打ち込む方法です。底ざらいは、孔の底へ残った土砂を取り除く清掃です。孔底に軟らかい土砂が残ると、建物の重さが杭を通じて地盤へ伝わったとき、その土砂が圧縮されて杭が沈む原因になります。
例えば、深さ20mを確保する孔で、中心は20mあっても周囲に土砂が残って19.8mしかなければ、中心の測定だけではその不足を見逃します。重錘は糸やテープの先に付けて下ろすおもりで、底へ達した長さから深度を測ります。複数の位置を測ることで、掘削不足や底面の凹凸を確認できます。杭の形は完成後に直接見られないので、「完成したコンクリートが強いか」だけでなく、「どの地盤へ、どの状態で力を渡せるか」が品質上の要点です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:不適当です。底ざらい直後に重錘と検測テープで測るという方法ではなく、測定位置を中心1か所に限った点が誤りです。バケットで掘った孔の底が常に水平になるとは限らず、周囲に掘り残しや沈んだ土砂があり得ます。中心で所定の深さに達していても、底全体が適切な状態であるとは確認できません。底面の異なる位置で深度を検測し、孔底の状態を確かめる必要があります。中心を何度も測り直すことと、測定する場所を増やすことも区別しましょう。
選択肢2
選択肢2:適当です。鉄筋かごは、縦の主筋と周囲の帯筋などを組み立てた、長い筒状の骨組です。地上で組み立てて吊り上げると、自重で曲がったり断面がつぶれたりしやすいため、形を保つ補強リングを設けます。本肢の特記がない場合の平鋼、2〜3m間隔という扱いは適当です。平鋼は平たい帯状の鋼材で、輪としてかごの形を支えます。完成後の杭が荷重を支えるための鉄筋と、施工時にかごの形を守る補強材の役割を分けて理解すると覚えやすくなります。
選択肢3
選択肢3:適当です。既製杭は工場で製作した杭を現場で継ぎ足して使います。溶接継手の目違いは、上下の部材の端面がずれて段差になっている量、ルート間隔は継ぎ目の根元の隙間です。本肢は目違い2mm以下、ルート間隔の最大値4mm以下としており、所定の管理値に合います。ずれや隙間が大きいと、溶接金属が十分に溶け込まなかったり、狙った形の継手をつくれなかったりします。溶接後の外観だけでなく、溶接前の位置合わせを管理する理由です。
選択肢4
選択肢4:適当です。地中の水や安定液のある孔へコンクリートを打ち込むと、上部には土砂などが混じった品質の劣る部分が生じやすくなります。そのため杭頭を余分に打ち込み、後で所定の高さまで斫り取ります。斫るとは、固まったコンクリートを砕いて除くことです。打込みから14日程度を経て杭本体の強度が育ってから、本体へひび割れなどを生じさせないように除去する扱いは適当です。高さだけをそろえるのではなく、健全な部分を残して基礎へ力を伝えます。
周辺知識
杭基礎は、地表付近の地盤だけでは建物を支えにくいとき、荷重をより深い地盤へ伝える仕組みです。杭の先端が地盤を押す先端支持と、杭の側面と地盤の間で働く摩擦などが支持に関わります。先端が硬い地層へ達していても、その間に軟らかい土砂が厚く残れば、想定どおりに働きません。
場所打ち杭では、掘削、孔底清掃、鉄筋かごの建込み、コンクリート打込み、杭頭処理という順に、後で見えなくなる部分を確かめます。孔の深さと直径、孔底の土砂、鉄筋の位置、コンクリートの量などは、それぞれ異なる欠陥を見つける手掛かりです。一つの測定が良好でも、他の確認を省けるわけではありません。
既製杭では、工場でつくった部分の品質に加え、現場の継手が重要になります。長い一本の杭として荷重を伝えるには、継ぎ目だけ弱くならないことが必要だからです。本問の各数値は、土の中へ埋まって見えなくなる前に、支える仕組みの連続性を確認するための管理値として結び付けて理解しましょう。