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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問29

問題・正答・学習用解説

問題

鋼材に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    建築構造用圧延鋼材(SN材)には、A、B及びCの三つの鋼種があり、いずれもシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーの下限値が定められている。
  2. (2)
    建築構造用ステンレス鋼材に定めるSUS304Aの基準強度は、板厚40mm以下の建築構造用圧延鋼材SN400Bの基準強度と同じである。
  3. (3)
    建築構造用低降伏点鋼材LY225は、一般構造用圧延鋼材SS400に比べて降伏点が低く、延性が高いことから、履歴型制振ダンパーの材料に用いられている。
  4. (4)
    建築構造用冷間プレス成形角形鋼管BCP325(板厚12mm以上)は、引張強さの下限値が490N/mm²であり、「降伏点または耐力」の上限値及び下限値が定められている。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

選択肢1のSN材のうち、A種にはシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーの下限規定がありません。B種とC種では所定の板厚などの範囲で規定されますが、「いずれも」とA種まで含めている点が不適切です。
シャルピー衝撃試験は、切欠きを入れた小さな試験片を振り子式のハンマーで破断させ、破断に使われたエネルギーを調べる試験です。単位はJで、急な力に対してどれだけ粘り強く抵抗するかという靱性の指標です。引張試験で求める降伏点や引張強さとは、試験方法も評価する性質も異なります。
SN材は建築構造用の圧延鋼材ですが、A・B・Cで用途に応じた要求が異なります。B種は溶接性や変形能力などを管理し、C種はさらに板厚方向の性能などにも配慮した区分です。A種を含む全てのSN材が、同じ靱性保証や同じ接合部性能を持つわけではありません。材料記号の数字による強度区分だけでなく、末尾の種類記号と、試験温度・板厚などの適用条件まで確認して使い分けます。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)A種にシャルピー吸収エネルギーの下限規定がないため、不適切です。たとえばSN400AとSN400Bは同じ400 N\displaystyle 400\,\mathrm{N}級でも、保証される性質が同じではありません。SN400AをB種の代わりに用いてよいかは、単に引張強さが同程度かだけでは判断できません。B種・C種に規定された衝撃靱性は、切欠きや溶接部などから急に割れる脆性破壊を防ぐための材料選択にも関係します。

選択肢2

(2)適切です。SUS304Aの基準強度と、板厚40 mm\displaystyle 40\,\mathrm{mm}以下のSN400Bの基準強度は、ともに235 N/mm2\displaystyle 235\,\mathrm{N/mm^2}です。基準強度は、許容応力度などを決める土台にする設計上の値です。SUS304Aの304やSN400Bの400という記号の数字を、そのまま基準強度として使うわけではありません。基準強度が同じでも、ステンレスと炭素鋼では応力―ひずみ関係、耐食性、接合時の扱いなどが異なります。

選択肢3

(3)適切です。LY225は、一般の構造用鋼材より低い応力度から降伏し、大きな塑性変形を受け入れるようにした鋼材です。履歴型制振ダンパーでは、主な柱や梁より先にダンパーを降伏させ、押し引きの繰返しでエネルギーを吸収させます。そのため「低い強度」は欠点ではなく、狙った段階から働くための性能です。降伏点のばらつきも管理し、想定した力で安定して作動することが重要です。

選択肢4

(4)適切です。BCP325は、鋼板を冷間でプレス成形した建築構造用角形鋼管の一つです。引張強さの下限は490 N/mm2\displaystyle 490\,\mathrm{N/mm^2}で、降伏点または耐力には下限と上限があります。下限は必要な強度の確保、上限は部材が想定以上の力を接合部などへ伝えることの防止にも関係します。材料は強ければ上限不要というわけではありません。325は降伏側の区分に関係し、490という引張強さの数値とは区別します。

周辺知識

鋼材の材料表には、似た単位を使う複数の値が並びます。降伏点は、戻らない塑性変形が増え始める応力度です。明瞭な降伏点がない材料では、所定の永久ひずみを生じる応力度を耐力として定義します。引張強さは、引張試験で得た最大荷重を元の断面積で割った最大の公称応力度です。
延性は大きく伸びて変形できる性質、靱性は破壊までにエネルギーを吸収する粘りに関係します。シャルピー試験は、切欠きのある試料を急にたたいたときの吸収エネルギーを評価するので、ゆっくり引っ張ったときの最大強度とは別の情報です。特に温度の低下や切欠きの存在は、脆い破壊への移行に関係します。
ダンパーに使う低降伏点鋼と、柱に使う高い耐力を持つ鋼材では、期待する役割が異なります。主部材は重さや地震力を支え、ダンパーは先に安定して塑性化します。設計で予定した破壊・降伏の順番を守るには、強度の最低値だけでなく最大値やばらつきの管理も必要です。材料名、強度区分、靱性、板厚方向の性能を、それぞれ何のための規定かと結び付けて読むことが重要です。