学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問23
問題・正答・学習用解説
問題
合成構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
選択肢3のデッキ合成スラブには、鉄骨梁と同じ長期変形の増大係数をそのまま使うことはできません。デッキ合成スラブは、波形などに成形した鋼製デッキプレートと、上に打ち込んだコンクリートを一体に働かせる床です。鉄骨造の建物の床であっても、その部材は鋼材だけではできていません。
コンクリートには、同じ荷重を受け続ける間に変形が増えるクリープや、乾燥による収縮があります。また、ひび割れや鋼板との力の分担によって、床のたわみ方は鉄骨梁と異なります。変形増大係数は、短時間の弾性計算で得たたわみに対し、長期的な影響をどれだけ見込むかを表す係数です。部材の材料構成や計算方法に対応したものを選ぶ必要があります。
たとえば弾性たわみを、適用する増大係数をとする計算なら、長期の評価値はです。元のたわみが同じでも、適用すべきが違えば評価値は変わります。具体的な係数は、告示の検討なのか、合成スラブの個別の設計法なのかにも対応させます。「鉄骨造だから床も梁も同じ係数」と一括するのが本問の誤りです。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適切です。CFT柱は、鋼管の中にコンクリートを充填した柱です。コンクリートは圧縮されると横へ膨らもうとしますが、外側の鋼管がその膨らみを拘束します。この拘束がコンファインド効果で、所定の条件を満たせば、充填コンクリートの圧縮強度を通常のRCの場合より高く評価できます。単にコンクリートを詰めれば無条件に強度を割り増せるのではなく、鋼管の断面形状や拘束を発揮できる条件を確認します。
選択肢2
(2)適切です。SRC柱は、鉄骨を鉄筋コンクリートで包んだ柱で、コンクリート・鉄筋・鉄骨が曲げへ抵抗します。各材料の耐力を、軸力の分担などが整合する条件で累加して、曲げ終局耐力を求めることができます。柱では同時に鉛直の圧縮力も受けるため、各材料の軸力の合計が柱全体の軸力に一致することが必要です。異なる軸力状態で得た各材料の最大値を、都合よくそのまま足し合わせる意味ではありません。
選択肢3
(3)部材の材料と長期の性質が異なるため、不適切です。デッキプレート自体は鋼製でも、合成後はコンクリートが圧縮力などを分担し、そのクリープや収縮、ひび割れが床の変形に影響します。鋼梁の係数を転用すると、これらを正しく見込めないおそれがあります。施工時にデッキ単独でコンクリートの重さを支える状態と、硬化後に合成スラブとして働く状態も別です。検討対象の段階と部材に対応する設計式を使います。
選択肢4
(4)適切です。頭付きスタッドは、鉄骨梁の上に溶接した頭のある棒状のずれ止めです。これによって床スラブと鉄骨梁のずれを抑え、合成梁として働かせます。曲げ剛性に算入する床スラブの有効幅は、RC梁に付くスラブの有効幅と同じ扱いを用いることができます。床全面が均等に梁の曲げを受け持つとは限らず、梁から離れると応力の分担が小さくなるので、有効な範囲へ換算して断面に取り込みます。
周辺知識
合成構造は、複数の材料の得意な性質を組み合わせます。CFTでは鋼管がコンクリートを拘束し、コンクリートは鋼管が内側へ座屈するのを抑えます。SRCでは鉄骨とRCの抵抗を組み合わせます。合成梁では、一般に上側のコンクリートスラブが圧縮力を、下側の鉄骨が引張力を受けることで、上下に離れた材料を効率よく曲げへ働かせます。
ただし、隣り合っているだけでは一体とは限りません。梁とスラブが自由に滑ると、別々に曲がり、期待した大きな断面として働けなくなります。スタッドなどのずれ止めは、その境界で力を受け渡すための部材です。接触面、接合部、施工段階の状態を確認して初めて、合成効果を計算へ入れられます。
一体化しても、時間に対する材料の性質が同じになるわけではありません。鋼材とコンクリートの硬さや、コンクリートのクリープによって、長期的に力の分担が変わることがあります。強度を求める計算と、たわみ・振動・ひび割れなど使用上の性能を求める計算は目的が異なります。材料を組み合わせる利点と、組み合わせたために必要となる力の伝達や長期変形の確認を、対にして理解しましょう。