学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問22
問題・正答・学習用解説
問題
「壁式ラーメン鉄筋コンクリート造」及び「壁式鉄筋コンクリート造」の建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
選択肢2の小開口は、住宅用の換気扇程度の大きさだからというだけで、補強なしに無開口とみなすことはできません。耐力壁は建物の重さや地震力を受け持つ壁です。その壁の長さは、構造的に連続して力を伝えられる部分を対象に評価するため、穴が開けば連続性への影響を考える必要があります。
小さな開口でも、壁の中の縦筋や横筋を切る可能性があり、開口の角では力の流れが曲げられて応力が集中します。したがって、無開口として扱える小開口は、所定の補強を行うなどの条件を満たすことが前提です。失われた鉄筋の力を周囲へ迂回させ、ひび割れを抑えられるようにします。
大きさが小さいほど壁全体への影響も小さい傾向はありますが、それは補強の要否を省略できるという意味ではありません。穴の寸法、位置、周囲の配筋と定着を合わせて確認します。本問では「補強をしなくても」という条件が誤りであり、換気扇用の穴を設けること自体が一切禁止されるわけではありません。壁式構造では壁が主要な荷重経路なので、設備用の穴も構造計画と調整する必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適切です。壁式ラーメンRC造は、細長い壁状の柱である壁柱と梁を組み、ラーメンとして力を伝える構造です。一般の壁式RC造は、耐力壁と床を箱状に組み合わせた構造で、適用範囲や設計法が異なります。壁式ラーメンは一般に、より軒の高さの高い建物に適用できます。名称に同じ「壁式」が入っていても、部材の働きや適用できる建物規模まで同一とみなさないことが大切です。
選択肢2
(2)所定の補強などを行って条件を満たした上で、開口がないものとして扱える場合があります。補強なしでもよいという記述は不適切です。小穴でも鉄筋を切断すれば、その鉄筋が伝えるはずだった引張力の経路が途切れます。周囲の鉄筋でその力を受け渡せるように補い、角部のひび割れにも対処します。穴の寸法だけで判断せず、位置、周囲の壁の残り幅、配筋、定着まで確認します。
選択肢3
(3)適切です。必要壁量は、建物に必要な耐力壁の長さを床面積などに対応させて定める量で、地震地域係数に応じて低減できる扱いがあります。は地域ごとの設計用地震力の差を反映する係数なので、必要な水平抵抗の評価にも関係します。ただし、壁厚、壁の配置、開口や配筋などの条件まで自由に減らしてよいわけではありません。必要量を減らせる規定と、各壁の最低限の構造条件は区別します。
選択肢4
(4)適切です。壁梁は、開口の上などで隣り合う耐力壁をつなぐ梁状の部分です。その幅は接する耐力壁の厚さ以上とし、壁から梁へ力を受け渡せる断面を確保します。梁幅を壁厚より細くすると、接続部で力が狭い部分へ集まり、配筋や定着の納まりにも不利になります。ここでいう幅は壁の厚さ方向の寸法であり、開口上の縦方向の梁せいとは違います。図面ではどちらの断面寸法を比較しているか確認します。
周辺知識
壁式鉄筋コンクリート造は、柱と梁の骨組が目立つラーメン構造と異なり、壁と床を組み合わせた箱のような形で力へ抵抗します。壁は部屋を区切るだけでなく、上の重さと地震による水平力を支える主要部材です。このため、間取りを変えるために壁を取り除いたり、設備のために穴を開けたりする際にも、力の経路への影響が大きくなります。
壁量は、単純に壁面の総面積を数える量ではありません。力に抵抗する方向の有効な壁長を、その階の床面積などに対応させて評価します。十分な総量があっても、一方へ偏ったり上下階で大きく位置がずれたりすると、力が無理なく基礎へ伝わらないことがあります。
開口を設けると、元は真っすぐ流れていた力が、その上下や左右へ迂回します。壁梁、開口端の縦筋、周囲の横筋などが、その迂回を助ける役割を持ちます。鉄筋は配置されているだけでなく、必要な長さを周囲へ埋め込んで力を渡せることが必要です。本問の小開口の扱いは、こうした構造的な補いを前提に簡略化を認めるもので、穴を見えないものとして無条件に無視する規則ではありません。