資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問11

問題・正答・学習用解説

問題

鉄筋コンクリート造の建築物において、「躯体に発生したコンクリートのひび割れの状況を示す図」と「その説明」として、最も不適当なものは、次のうちどれか。

選択肢

  1. (1)
    矢印方向に荷重を受ける場合の「柱梁接合部のせん断ひび割れ」選択肢1の図
  2. (2)
    柱梁接合部内に定着された梁上端筋が矢印方向に引張力を受ける場合の「柱梁接合部及び柱のひび割れ」選択肢2の図
  3. (3)
    矢印方向に水平力を受ける場合の「開口を有する耐力壁のせん断ひび割れ」選択肢3の図
  4. (4)
    矢印方向に柱の圧縮軸力及び杭の鉛直支持力を受ける場合の「2本杭の基礎スラブのひび割れ」選択肢4の図

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

選択肢1は、柱梁接合部に描かれた斜めのひび割れの向きが、荷重の向きと合っていません。柱梁接合部は、縦の柱と横の梁が交わる中央の部分です。図のような載荷では、接合部のせん断ひび割れは、おおむね左上から右下へ下がる向きになります。提示図は左下から右上へ上がる向きなので逆です。
方向を確認するには、図の外側の矢印を、そのまま中央の小さな四角形の表面力と考えないことが大切です。左梁の端が上へ、右梁の端が下へ押されると、梁の曲げにより、接合部の上側には右向き、下側には左向きの力が伝わります。接合部はひし形にゆがめられ、左下から右上の対角線方向が引き伸ばされます。
コンクリートは引き伸ばす力に弱く、割れ目は引張方向に沿うのではなく、その方向と直角に開きます。したがって、伸びる対角線が左下―右上なら、ひび割れの線は左上―右下です。他の図は、鉄筋の定着部から広がる割れ、開口の角から伸びる割れ、基礎スラブ下面から入る割れが、それぞれの力の伝わり方と対応しています。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)ひび割れの線を逆の対角線方向へ直す必要があります。左梁を上へ、右梁を下へ曲げる作用によって、接合部の上側は右へ、下側は左へ引かれるせん断状態になります。そのとき引張りが強いのは左下―右上方向で、割れ目はそれに直角の左上―右下方向です。図の柱端の水平矢印は、柱の曲げを介して接合部へ力を伝える外力であり、接合部の各辺にそのまま載る力ではありません。中央の力へ読み替えることが鍵です。

選択肢2

(2)適切な組合せです。梁上端筋を右向きに引くと、鉄筋を抜け出させまいとする力が、接合部内の曲げた部分と周囲のコンクリートへ伝わります。鉄筋の曲げ部は内側のコンクリートを強く押し、その周囲を引き裂くような力も生みます。そのため図のように曲げ部を起点として接合部や柱へ割れが広がることがあります。鉄筋を曲げておけば長さに関係なく安全という意味ではなく、定着長さや横補強が必要です。

選択肢3

(3)適切な組合せです。上側を右へ、下側を左へ動かそうとする水平力によって、壁はせん断変形します。開口があると、その場所ではコンクリートが力を伝えられず、周囲へ迂回するため、特に四隅に応力が集中します。図の左上から右下へつながる斜めのひび割れは、このせん断状態と対応します。開口の角に斜めの補強筋を置くのは、角から開こうとする割れを横切り、引張力を鉄筋で受けるためです。

選択肢4

(4)適切な組合せです。柱から中央へ下向きの力が作用し、左右の杭から上向きの反力を受けるため、基礎スラブは中央が下がる向きに曲がります。下面は引き伸ばされ、そこから上へ向かう曲げひび割れが生じます。上から押す荷重であっても、部材内部が全て圧縮になるわけではありません。柱荷重が左右の杭へ分かれて流れることで、下面側に引張力が必要になり、それを主に下端の鉄筋が負担します。

周辺知識

コンクリートのひび割れは、単に「力が大きかった場所」を示すだけでなく、どの向きに引っ張られたかを知る手掛かりになります。薄い紙を左右へ引くと、縦向きの裂け目が開くことを想像すると、引張方向と割れ目の向きが直角であることを理解できます。構造図でも、引張りの矢印の向きと、ひび割れの線の向きを取り違えないようにします。
曲げひび割れは、梁などの引張側の表面から、部材の長さにほぼ直角に入るのが基本です。せん断ひび割れは、部材がひし形に変形することによる斜め引張りで生じます。定着に伴う割れは、鉄筋の力が短い範囲のコンクリートへ移される場所に集中します。どれも引張りと関係しますが、力の発生源が違います。
ひび割れの向きだけで実際の損傷原因を断定することはできず、幅、発生位置、配筋、載荷の履歴なども調べます。本問は矢印で荷重が指定された模式図なので、まず荷重が梁の曲げ、接合部のせん断、基礎の曲げへどう変換されるかを追います。外力の矢印から内部の力を考え、その引張方向から割れ方を予測する順序が、他の図にも応用できます。