学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問10
問題・正答・学習用解説
問題
各種の法令に基づく協定における、土地所有者等の合意に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。緑地協定は、土地所有者等が緑地の保全や緑化の共通ルールを定める制度で、原則として区域内の土地所有者等の全員の合意により締結します。「相当部分の参加」でよいという本肢の説明は、都市利便増進協定と取り違えています。
協定は、行政が一方的に命じる規制とは異なり、土地に関わる人たちが話し合って共通の取り決めをつくる仕組みです。例えば住宅地で生垣を整え、道路沿いの緑を連続させるには、各敷地の持ち主がその内容を理解して守る必要があります。自分の土地の使い方にも関わる約束なので、多くの人が賛成したから残りの人にも自由に義務を負わせられる、というものではありません。
一方、都市利便増進協定は、広場や通路等の整備・管理、イベント等を連携して進めるため、地域の相当部分の参加による締結を可能にした制度です。景観協定、建築協定、緑地協定の原則全員合意と区別します。対象が緑だから柔軟、建物だから厳格という推測ではなく、各法律で定める協定の仕組みに対応させることが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。景観協定は、景観計画区域内の一団の土地について、良好な景観をつくるための詳細なルールを土地所有者等が自主的に定めるものです。建物の色や形、広告物、外構などが周囲と関係するため、共通の取り決めに意味があります。原則として全員の合意が必要で、景観行政団体の長の認可等の手続を経ます。住民が好みを口頭で共有するだけとは異なり、対象、内容、合意、認可という制度上の条件を備える協定です。
選択肢2
(2)適当です。都市利便増進協定は、地域の人の利便やにぎわいに役立つ施設の整備・管理を、活動等と組み合わせて行う仕組みです。例えば広場を整備したうえで、日常の清掃やイベントの利用を関係者が連携して行うことを考えます。区域内の土地所有者等の相当部分の参加による締結が可能で、全員参加を一律の要件にしない点が他の三協定との違いです。ただし、参加していない人の権利を自由に変更できるという意味ではありません。
選択肢3
(3)適当です。建築協定は、住宅地の環境や商店街の利便等を高めるため、土地所有者等が建築物について共通のルールを取り決める制度です。建築基準法の最低基準に加えて地域に合う基準を守り合う性格があり、原則として全員の合意と特定行政庁の認可を要します。例えば敷地の使い方や建物の位置など、自分の土地の利用にも制約が及びます。単純な住民の多数決だけで成立するものとせず、法上の土地所有者等と合意の範囲を確認します。
選択肢4
(4)不適当です。緑地協定では、原則として土地所有者等の全員の合意によって緑の保全や緑化を取り決めます。相当部分の参加で締結する説明は都市利便増進協定です。緑地協定には開発事業者が一人で設定する類型などもありますが、それは「所有者が複数いる区域で一部の参加だけでよい」という意味ではありません。本問の四つを比べると、全員合意を原則とする三協定に、異なる参加条件の一協定を混ぜた出題と分かります。
周辺知識
まちの環境は、一つの敷地だけでは完成しません。ある家の生垣が隣の家へ連なれば緑豊かな通りになり、広場にベンチを設けても誰も清掃しなければ使いにくくなります。そこで、土地や施設の関係者がルールと役割を共有する協定制度が使われます。
景観協定は景観、建築協定は建築物の基準、緑地協定は緑の保全・緑化というように、主な対象を整理します。都市利便増進協定は、地域で使う施設と活動の整備・管理の連携に着目します。いずれも似た名前ですが、根拠法、対象区域、参加条件、認可する主体等は同じではありません。
「全員」は、単にその街に住む全住民という意味ではなく、各法律が定める土地所有者等の範囲で考えます。借地権などの権利関係もあるため、所有者、居住者、店舗の利用者を無条件に同一視できません。また協定を結ぶことと、日々の活動を続けることは別で、内容が住民に理解され、管理の担い手や費用も確保される必要があります。合意の数だけでなく、何を共同で守る制度なのかを理解することが大切です。