学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅰ(計画) 問8
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の各部の寸法等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。問題が指定する日本バレーボール協会主催の公式競技会を行うには、競技面の上に12.5m以上の障害物のない高さを確保することが必要で、10.5mでは不足します。体育館を一般的に利用できる高さの目安と、特定の公式競技会に対応する高さは区別しなければなりません。
バレーボールでは、高く上がるボールの軌道が天井や梁、照明等に妨げられない空間が必要です。選手が立つ床の広さだけでなく、コート上方を含む立体的な競技空間が条件になります。高い天井の一部に梁や吊り下げ設備が低く突出すれば、天井の仕上げ面が十分高くても同じようには使えません。
本肢の10.5mと必要な12.5mの差は2.0mですが、この差は「少し低いから我慢すればよい」という扱いではなく、開催条件を満たすかどうかの問題です。他肢の面積やカウンター、廊下幅も、数字の大小だけでなく、ほふくする乳児、車椅子、ベッドなどの行動を支える寸法として判断します。どの用途・利用者・基準を指定した問題かを最初に確認することが大切です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。ほふく室は、乳児などが床をはい、体を動かして過ごすための室です。一人当たり3.3㎡以上を必要とするため、定員10人なら必要面積はです。本肢は有効面積40㎡なので、となり、この基準を上回ります。延べ面積の合計ではなく、その保育に実際に使える有効な面積で比べる点も重要です。乳児が静かに寝るだけの場所と同じ狭さで考えません。
選択肢2
(2)適当です。貸出用カウンターの上端700mmは、子どもや車椅子で座った人が資料を置いたり手続きをしたりしやすい低さです。下端650mmを確保すると、車椅子の利用者が膝を入れて近づくための空間を設けられます。上面だけを低くしても、前板や収納が膝に当たれば手が届きにくくなります。この二つの数値は天板の厚さや下部の納まりも含めて実現します。近づく通路幅、足元の奥行き、受付職員との視線も合わせて考えます。
選択肢3
(3)不適当です。公式競技会を想定する本問では、必要な高さ12.5m以上に対して10.5mでは不足します。一般利用の体育館として成立する高さと、指定された競技会の開催に必要な高さを混同しています。競技面から天井までの距離だけでなく、梁や照明、設備等の障害物が競技空間へ突出しないことも確認します。コートの平面寸法だけを確保すれば公式試合ができるのではなく、選手とボールが動く三次元の空間を用意する必要があります。
選択肢4
(4)適当です。療養病床の病室に隣接する廊下では、原則として片側に居室がある部分は1.8m以上、両側に居室がある部分は2.7m以上の内法幅が基準です。本肢の2.0mと3.0mはそれぞれを上回ります。ベッドや車椅子での移動、病室への出入り、介助者の動きを考えると、単に歩く人だけの通路より余裕が必要です。ここでは新たな計画としての基準で判断し、既存建物等に対する個別の経過的な扱いを勝手に当てはめません。
周辺知識
建築寸法には、法令等の最低値、設計標準の推奨値、競技団体の条件、使いやすさのために設計者が選ぶ値があります。全てを「法律で決まった寸法」として覚えると混乱します。本問では、保育や医療の基準、カウンターの使いやすさ、公式競技会の開催条件という別々の根拠が混在しています。
有効寸法は、仕上げや扉、家具などを考慮して実際に利用できる寸法です。例えば壁の中心から測った廊下幅が2mあっても、壁の厚さや突出物を差し引くと必要な幅に届かない場合があります。天井高も同様に、競技を妨げる梁や器具の位置まで見なければなりません。
面積は人数で割って一人分に直すと確認しやすくなります。一方、幅や高さは単純に人数で割れず、ベッドの旋回、車椅子の接近、ボールの軌道といった動きに対応させます。数値を覚える前に、その数値が何と何の間の距離か、誰が何をするための余裕かを確認しましょう。これにより、似た数値の選択肢でも条件に応じて判断できます。