学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問20
問題・正答・学習用解説
問題
環境・設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。人の健康やウェルネスに特に着目する認証システムとして説明されるのはWELLです。LEEDは、省エネルギー、水、材料、敷地、室内環境など、建築物や街区の環境性能を幅広く評価する体系です。主な評価の目的を取り違えています。
ウェルネスは、病気でないというだけでなく、心身がより良好な状態で生活できることまで含める考え方です。WELLは、空気、水、光、運動、快適さなど、建物が利用者の健康へ与える影響に重点を置きます。一方LEEDは、建設から運用までの資源消費や環境への影響を総合的に改善するための評価です。
ただしLEEDが健康を全く扱わないという意味ではありません。室内環境や材料の健康影響など、両者の評価には重なる部分があります。「健康という単語があればLEEDではない」と機械的に判断するより、制度の中心に何を置いているかを比較します。本肢は健康・ウェルネスを主眼にしたシステムの説明をLEEDの名称に結び付けたため不適当です。BELS、CASBEEと合わせ、誰が何の範囲を評価する制度かを整理します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。BELSは、建物のエネルギー消費性能を第三者の評価機関が評価する制度です。設計者や所有者が良いと言うだけでなく、共通の方法で外部の機関が評価することで、他の建物と性能を比較しやすくします。新築だけでなく既存建築物も対象となります。評価の中心は省エネルギー性能であり、全ての住み心地や材料の安全性を一つで保証する制度ではありません。名称の「評価」が、何の性能に対するものかを限定して理解することが重要です。
選択肢2
(2)適当です。CASBEEは、建築物の環境品質と外部へ与える環境負荷などを総合的に評価するツールで、建物だけでなく街区や都市などへ対象を広げた体系があります。室内の快適さを上げる一方で、エネルギー消費や周囲への負荷を抑えるという両面を考えます。単に消費エネルギーが少ないほど全て高評価、という一軸の評価ではありません。誰にとっての品質か、どこへ負荷が出るかという境界を設けて、環境性能を整理する考え方です。
選択肢3
(3)不適当です。LEEDはエネルギーや水の効率、材料、敷地、室内環境などを幅広く評価する環境性能評価です。健康・ウェルネスに重点を置く説明はWELLに対応します。ただしLEEDにも健康に関係する項目はあります。環境性能と健康が全く無関係な二つの分野ということではなく、制度の主な目的と評価の重点が違います。例えば省エネ設備を評価することと、利用者の光環境や運動の機会を健康の観点から評価することを比べると、重なりと違いを理解できます。
選択肢4
(4)適当です。DRは、発電側だけで供給を増やすのでなく、利用者側が電気を使う時間や量を変えて需給を調整する仕組みです。電力が不足しやすい時間に空調負荷を下げたり、蓄電池から供給したりすることが例です。逆に再生可能エネルギーの発電が多い時間へ使用を移す場合もあります。単なる節電と違い、いつ需要を動かすかが重要です。必要な仕事を別の時間へ移す方法なら、一日の総使用量を大きく減らさなくても、その時刻の需給バランスを改善できます。
周辺知識
環境評価の制度は、評価する対象と範囲をそろえて比較します。BELSは建物の省エネルギー性能、CASBEEは環境品質と環境負荷を含む総合性能、LEEDは建物や街区の資源・環境性能、WELLは利用者の健康とウェルネスに重点を置きます。名称が似ていても、同じ成績表を別の言語で呼んでいるわけではありません。
また、設計時の計算による性能と、使い始めてからの実測値は区別します。効率の良い建物でも、運転時間や使い方が違えば実際の消費量は変わります。認証や評価を得ることは、運用の確認を不要にするものではありません。必要に応じて計測し、使い方の改善へつなげます。
DRでは、電力の量と時刻の両方を見ることが重要です。例えば午後のピーク前に建物を予冷し、供給が厳しい時間の冷房電力を抑える方法があります。これは建物の蓄熱を利用して需要を時間的に移す考え方です。省エネは同じ機能を少ないエネルギーで得ること、DRは供給状況に合わせ需要の形を変えることです。重なる場合もありますが、目的が同じとは限りません。