学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問19
問題・正答・学習用解説
問題
建築設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。地震時の管制運転では、原則として速やかに最寄り階へ停止し、乗客をかごから出せるようにします。遠い避難階まで運転を続けて帰着させるという説明は、火災時の管制運転との取り違えです。
地震では、建物や昇降路、機器に損傷や大きな揺れが生じる可能性があります。乗客を長い時間かごの中に置いたまま走らせるより、到達しやすい最寄り階へ止めて降ろすことが基本です。高層階から地上の避難階まで全ての距離を移動している間に、より強い揺れや停止が起これば閉じ込められるおそれがあります。
火災時は、火災階への停止を避け、所定の避難階へ戻すという別の制御を行います。地震と火災では、危険の起こり方が違うため、同じ非常時の運転として一つに覚えてはいけません。本肢の「地震感知器」と「避難階に帰着」の組合せを見て、原因と対応が合うかを確認します。安全装置の問題は、どの異常を検知し、そのとき何を優先するかを順に説明すると理解できます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。地震時は原則として最寄り階へ停止し、乗客を速やかに降ろす地震時管制運転を行います。避難階へ帰着させることを優先すると、高層階から長距離を運転する間に大きな揺れや故障が起こる可能性があります。「避難するから避難階へ」という言葉の連想ではなく、まずかご内に閉じ込められる時間を短くする考え方です。火災時の所定階への帰着とは別の制御です。感知する災害と、その災害で避けたい危険を対応させます。
選択肢2
(2)適当です。非常用エレベーターは、火災時の消防活動などに必要な移動性能を備える設備で、かごの定格速度は毎分60m以上とします。定格速度は、そのエレベーターが定められた運転条件で走る速度です。毎分60mは毎秒1mに相当し、階数の多い建物で人や資器材を運ぶための基本性能となります。ただし走行速度だけで到着時間の全てが決まるわけではなく、加減速や扉の開閉にも時間がかかります。用途に応じた所要性能として数値を理解します。
選択肢3
(3)適当です。自然冷媒は、アンモニア、二酸化炭素、水など、自然界にも存在する物質を冷媒として使うものです。冷媒は装置内を循環して熱を運び、蒸発や凝縮などの性質を利用します。フロン類の環境負荷を抑える方法ですが、自然という名前だけで全て無害・扱いやすいとはいえません。アンモニアの性質や二酸化炭素の高い圧力など、それぞれに合う装置と管理が必要です。環境への影響と、設備として扱うための安全条件を分けて考えます。
選択肢4
(4)適当です。防振架台は、運転中の小さな振動が建物へ伝わるのを抑えるため、ばねやゴムなどで機器を支えます。耐震ストッパが普段から接触すると、その接触部を通じて振動が伝わり、防振の働きを妨げます。一方、隙間が大きすぎると地震で機器が大きく動いてしまいます。したがって通常運転では触れない範囲で、できるだけ小さい隙間とします。小さな日常振動は逃がし、大きな地震時変位は止めるという二つの機能を両立させます。
周辺知識
エレベーターの非常時制御は、災害の種類で目的が変わります。地震は機器や昇降路への損傷、強い揺れ、閉じ込めが問題となるため、最寄り階でかごから出せることを優先します。火災は煙や火災階への停止が問題となるため、所定の運転で避難階へ帰着させます。非常用エレベーターは消防活動を支える専用の機能を備え、一般の乗用エレベーターの管制運転とは区別します。
設備の振動対策でも、通常時と地震時で求める動きが違います。防振のため柔らかく支えると、地震の大きな力で動きやすくなるため、耐震ストッパで移動を制限します。小さな動きを全て固く止めれば運転振動が建物へ伝わり、大きな動きを自由にすれば転倒や配管破損につながります。隙間の条件は、この使い分けを表しています。
自然冷媒は、環境負荷の低減を目的に選ぶ候補ですが、冷媒の種類ごとに必要な圧力や温度、機器材料が異なります。建築設備では、名称から良し悪しを一括で決めず、通常運転、異常時、環境影響という複数の条件を同時に満たすことが重要です。