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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問10

問題・正答・学習用解説

問題

吸音・遮音に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    開放窓は音波が全て透過するので、音響透過率も、吸音率も1 になる。
  2. (2)
    多孔質吸音材料の表面を通気性の低い材料によって被覆すると、高周波数域の吸音率が低下する。
  3. (3)
    単層壁への平面波入射において、一般に、垂直に入射する場合が最も遮音性能が高く、入射方向が斜めになるに従い、遮音性能は低下する。
  4. (4)
    床にコルクタイルを敷くことによって、一般に、重量床衝撃音の低減を図ることができる。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は(4)です。コルクタイルのような柔らかい表面仕上げは、物を落としたときの軽量床衝撃音を減らすのに役立ちますが、人が飛び跳ねるような重量床衝撃音を十分に低減する方法とは一般にいえません。
軽量床衝撃音は、硬い物が床へ当たる比較的短い衝撃で生じ、表面を柔らかくすると衝撃を和らげられます。食器の下に薄い敷物を置くと、硬い物を置いた際の鋭い音が減るのに似ています。一方、重量床衝撃音では、強い衝撃によって床構造全体がたわみ、低い周波数の音を下階へ伝えます。薄い表面材を柔らかくするだけでは、その大きな構造の動きを十分に変えられません。
重量衝撃への対策は、床スラブの厚さ、剛性、支持の仕方、構造全体などを考える必要があります。同じ床の騒音でも、発生原因と周波数が違えば効く対策が変わります。「柔らかい仕上げを敷けば床衝撃音は何でも減る」と一般化せず、軽量と重量のどちらが問題かを先に確かめます。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。開放窓へ来た音は、理想的には全て外へ通り抜け、室内へ反射して戻りません。したがって透過率は1で、室内から見た吸音率も1になります。ここで吸音は、材料が熱に変えて吸収する分だけでなく、その室へ戻らず失われる分を含めて考えます。窓の穴が音をエネルギーとして消しているわけではありません。外へ出た音は外部へ伝わるので、室内の響きが減ることと、外へ音が漏れないことは別です。吸音と遮音の違いを示す例です。

選択肢2

(2)適当です。グラスウールなどの多孔質材料は、細かい隙間へ音に伴う空気の動きが入り、その摩擦などで音のエネルギーを失わせます。表面を空気の通りにくい材料で塞ぐと、空気が内部へ出入りしにくくなり、特に高周波数域の吸音率が下がります。厚い塗膜などで穴を塞いでも、見た目だけで元の吸音性能を保てるとは限りません。吸音材の内部に空気を動かすための構造があることを理解し、仕上げや保護材の通気性まで考慮する必要があります。

選択肢3

(3)適当です。単層壁の遮音では、音が壁へ入る角度によって、壁を振動させる条件が変わります。一般に垂直入射が最も遮音性が高く、斜めになると透過しやすくなる関係があります。壁が重いほど振動しにくいという質量則も、入射条件を含めて成り立つ関係です。同じ壁でも、実際の室では多くの方向から反射音が入るため、正面からだけ音を当てた理想条件の性能をそのまま期待できるとは限りません。材料の性質に加え、音の当たり方が性能へ影響することを示します。

選択肢4

(4)不適当です。コルクタイルは表面の接触を柔らかくし、硬い物が落ちたときの鋭い軽量衝撃を和らげます。しかし人の跳躍などの重量衝撃は床構造を大きく振動させるため、薄いコルク仕上げだけでは大きな改善を期待しにくいものです。床全体のたわみにくさや質量などを検討します。例えば机へ硬貨を落とす音と、床へ人が飛び降りる振動は、同じ敷物で同じようには抑えられません。衝撃の大きさと時間的な性質を、対策の選択へ結び付けます。

周辺知識

壁へ当たった音のエネルギーは、反射、材料内での吸収、向こう側への透過に分かれます。室内の残響を考える際の吸音率は、反射して戻らない分を扱うので、開口から外へ抜けた音も室内にとっては吸音の効果となります。しかし遮音では、向こう側へ透過する分を小さくしたいので、開放窓は最も不利です。目的が違えば同じ穴の評価が逆になります。
床衝撃音は、空気中の音が壁を通る空気伝搬音とは違い、床へ直接力が加わって振動が建物を伝わる固体伝搬の問題です。軽い衝撃では接触部分を柔らかくする効果が大きく、重い衝撃では床構造の変形が重要になります。遮音等級や試験結果も、どちらの衝撃を評価したものかを区別します。
多孔質吸音材は細孔への空気の出入りが必要で、表面を塞ぐと働きが変わります。柔らかい材料が全て同じように音を減らすわけではなく、空気の振動を内部へ取り込むのか、衝撃を和らげるのか、構造の振動を抑えるのかが違います。材料名を対策として暗記する前に、音がどの経路で伝わっているかを図にすると判断しやすくなります。