資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問8

問題・正答・学習用解説

問題

色彩に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    オストワルト表色系では、理想的な黒、理想的な白及びオストワルト純色を定義しているが、明度の属性がない。
  2. (2)
    マンセル表色系における彩度の最大値は、色相によって異なり、10 を超えることもある。
  3. (3)
    加法混色の三原色は、シアン、マゼンタ及びイエローである。
  4. (4)
    明所視において、ある面からの放射エネルギーが同じ場合、一般に、赤よりも緑のほうが明るく感じられる。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)です。光を重ねる加法混色の三原色は、赤・緑・青です。シアン・マゼンタ・イエローは、インクなどで光の一部を吸収する減法混色の三原色です。光を足す場合と、光から特定の成分を引く場合の体系を入れ替えています。
テレビやスマートフォンの画面は、小さな赤・緑・青の光を組み合わせて色を作ります。光を足していくので、適切な強さで三色を重ねると白へ近づきます。一方、白い紙へインクを重ねる場合、インクが特定の波長の光を吸収し、残った光が目へ届きます。シアンは赤成分、マゼンタは緑成分、イエローは青成分を主に吸収する側に働き、重ねるほど反射する光が減って暗くなります。
同じ「混ぜる」という言葉でも、光のエネルギーを加えるのか、色材で吸収するのかで結果が逆になります。赤い光と緑の光を重ねることと、赤い絵の具と緑の絵の具を混ぜることを同じ実験と思わないようにします。本問では加法か減法かを先に確認し、それぞれの三原色を対応させます。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。オストワルト表色系は、純色、理想的な白、理想的な黒をどの割合で混ぜるかで色を整理する体系です。マンセル表色系のように、色相・明度・彩度という三つの独立した属性で表す構成とは異なり、明度という独立の属性を持ちません。白や黒を混ぜれば明るさは変わりますが、それと明度軸を別に持つことは同じではありません。ある表色系の用語を他の表色系へそのまま移さず、何を座標の基準にしているかを確認します。

選択肢2

(2)適当です。マンセルの彩度は、無彩色からどれくらい鮮やかに離れているかを表します。最大の彩度は色相や明度によって異なり、10を超えるものもあります。0から10という共通の範囲で整理するのは明度です。例えば鮮やかな黄色が表せる明るさと、鮮やかな青が表せる明るさには違いがあり、彩度の限界を全て同じ円筒形で考えることはできません。明度の尺度の上限を、そのまま彩度の上限にしないことが本肢のポイントです。

選択肢3

(3)不適当です。赤・緑・青の光を重ねるのが加法混色で、シアン・マゼンタ・イエローの色材を重ねるのが減法混色です。画面は自ら光を出すためRGB、印刷は紙へ当たる光の成分をインクで吸収するためCMYを基本に考えます。実際の印刷では黒のインクKも使われますが、加法の三原色がCMYになるわけではありません。三色の名前を一組ずつ覚えるだけでなく、重ねたときに光を増やすか減らすかを、画面と紙の例で判断します。

選択肢4

(4)適当です。明るい場所での目の感度は、黄緑付近の波長で高く、赤い光にはそれより低くなります。このため放射エネルギーが同じでも、一般に緑の方が赤より明るく感じられます。光の物理的なエネルギーと、目が感じる明るさは同じものではありません。これは明所視での比較であり、暗い場所では感度の分布が変わるプルキンエ現象もあります。問題が「同じエネルギー」「明所視」と指定する理由は、光量の差や暗順応の違いをそろえて比較するためです。

周辺知識

表色系は、色を言葉だけでなく数値で共有するための仕組みです。マンセルは色相・明度・彩度、オストワルトは純色・白・黒の割合というように、組み立て方が異なります。同じ「明るい赤」でも、どの体系のどの属性で表すかを指定しないと、塗料や仕上げの色を正確に伝えられません。
加法混色では、赤と緑で黄、緑と青でシアン、青と赤でマゼンタの光を作れます。減法混色では、シアンとマゼンタを重ねると主に青、マゼンタとイエローでは赤、イエローとシアンでは緑が残ります。光を足す側と、吸収して残す側が裏表の関係にあると考えると、二組の三原色を理解できます。理想的なモデルと実際の顔料には違いがあるため、絵の具を混ぜた結果が理想式どおりになるとは限りません。
さらに、色の明るさは目の波長ごとの感度で変わります。緑と赤を同じエネルギーで出しても同じ明るさには見えません。建築のサインや照明では、色名だけでなく明度差、周囲との対比、照らす光の性質を考えます。色材の配合、光の混合、見たときの知覚という三つの段階を分けることが、色彩の問題を解く基本です。