学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅴ(施工) 問23
問題・正答・学習用解説
問題
各種改修工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
選択肢3が不適当です。錆を除去した露出鉄筋には、補修の仕様に適合する鉄筋用の防錆材などを用います。浸透性吸水防止材は、主にコンクリートなどの表面へ浸透させ、水を吸い込みにくくする材料です。鉄筋へ塗る防錆処理の代わりにはしません。
コンクリート内部の鉄筋が腐食すると、錆が膨張して周囲を押し、ひび割れや剥落を起こす場合があります。補修では、浮いたり弱くなったりしたコンクリートを除去し、鉄筋の錆を落とし、必要な防錆処理を行って、欠損部を補修材で戻します。鉄筋の断面が大きく減っている場合などには、別の構造上の検討も必要です。
浸透性吸水防止材は、コンクリートの細かな孔へ水が入りにくくなるように作用するもので、錆を取った鉄筋へ直接使う目的とは違います。材料名に「防止」とあるだけで、何をどこから守るかが同じとは判断できません。本肢では、錆の除去とポリマーセメントモルタルによる復旧の間に用いる材料を取り違えています。対象が鉄筋かコンクリート表面かを明確にし、それぞれに必要な防食・吸水対策を適材で行うことが要点です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:適当です。既存のウレタン防水に膨れがあると、その部分は下地との付着が失われている場合があります。そのまま新しい防水で覆っても、下の弱点が残り、新設層まで影響を受けます。膨れを切除し、ポリマーセメントモルタルで平滑に補修する本肢は適当です。ポリマーは樹脂成分で、セメント系材料の付着などを改善するために用いられます。ただし、新規防水と適合する材料や乾燥状態を確認します。「撤去しない改修」は、不良部分も全て残すという意味ではありません。
選択肢2
選択肢2:適当です。タイル陶片の浮きは、タイルそのものが張付け層から離れているような状態です。小口平タイル以上の大きさについて、注入口付きのアンカーピンを用い、エポキシ樹脂を注入して固定する本肢の工法は適当です。樹脂による接着とピンによる固定を組み合わせ、既存のタイルを生かす方法です。下地モルタルごと浮いている場合などとは対象が異なるため、どの層で離れているかを調査します。表面にひびがある、あるいは単に汚れている場合に同じ工法を一律に選びません。
選択肢3
選択肢3:不適当です。浸透性吸水防止材は、コンクリート表面などの水の吸込みを抑える材料であり、鉄筋の防錆用塗材とは目的と対象が違います。露出させて除錆した鉄筋には、補修仕様に合う防錆処理を行い、その後のモルタルと適切に一体になるようにします。錆の上から適当な薬剤を塗れば元の状態へ戻るわけでもありません。腐食の程度や原因を調べ、必要な除去と下地処理を行います。防水、防錆、吸水防止という言葉を、守る部位と防ぐ作用に対応させて区別します。
選択肢4
選択肢4:適当です。本問の既存アスファルト防水を撤去して密着工法で新設する改修では、新しい防水の1層目のルーフィング施工まで終えた段階について、終了後の降雨に対するシート養生を省略する取扱いがあります。撤去だけで防水層のない下地が露出している段階とは区別します。ただし、1層目が張られたという理由で、未施工の端部や開口から雨が入る状態まで放置してよいわけではありません。工事を区切る範囲と納まりを確認し、施工段階に応じて漏水を防ぐ必要があります。
周辺知識
改修では、新しい材料の性能だけでなく、残す既存部分の状態が結果を左右します。膨れた防水の上へ新しい防水を塗っても、下で剥がれたままなら弱点は消えません。タイルの浮きも、どの接着面で離れているかによって固定の方法が変わります。調査で不具合の位置と原因を把握することが出発点です。
鉄筋腐食の補修は、錆の膨張で傷んだ部分を除き、鉄筋の状態を確かめ、適切な処理と復旧を行います。表面の欠損を埋めるだけでは、内部で腐食が続く原因を残す場合があります。吸水防止材は水の侵入を減らす対策に役立ちますが、露出鉄筋へ行う防錆処理とは使う場所が違います。
防水改修では、工事中も雨への備えが必要です。既存層を撤去した範囲、新設層ができた範囲、端部や排水口の施工状態を把握し、どこから水が入り得るかを確かめます。完成後の防水仕様と、途中で作業を終えるときの養生は別の確認です。残す部分、除く部分、新設する部分、工事中の保護を一続きで考えると、各工法の理由が整理できます。