学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅴ(施工) 問6
問題・正答・学習用解説
問題
土工事及び山留め工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
選択肢2が不適当です。釜場は掘削底面の低い場所に設け、水がそこへ流れ込むようにします。「最も浅い場所」ではなく、最も低く深い側へ集水するのが基本です。掘削の進行に合わせて位置を変えるという部分は適当ですが、移す先の高さの考え方が逆です。
釜場は、掘削した区域の底に設ける小さなくぼみで、集まった水をポンプで外へ排出します。周囲の湧水や雨水は、集水溝などを通してそのくぼみへ導きます。水は高い所から低い所へ流れるので、床面のどこよりも高い場所にくぼみを設けても、周辺の水は自然に集まりません。
例えば掘削底が部分的に下がっていくと、もとの釜場より低い場所に水が残る場合があります。その段階では、さらに低い適切な位置へ釜場や溝を設け直して排水を続けます。工事が進んでも最初の位置を固定して使えばよいわけではありません。ただし、水を集めてくみ上げるだけであらゆる地下水問題に対応できる工法ではなく、湧水量や地盤条件によって別の排水方法や止水対策も必要です。本問では、まず重力による水の流れから、集水位置の誤りを判断します。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:適当です。ソイルセメント壁は地中の土とセメント系材料を混ぜてつくる壁で、鋼材などの応力材を入れて土圧などに抵抗させます。その応力材を完成後の地下外壁や床版と一体に働かせる合成壁として設計すれば、地下外壁を薄くすることが可能です。仮設時だけ使った鋼材を、設計上の確認なしで本体に数えてよいという意味ではありません。既存の山留め材と新しい躯体との接合、力の分担、耐久性などを確かめ、一体として荷重を負担する構成を成立させます。
選択肢2
選択肢2:不適当です。釜場は低い位置に設けます。掘削底面から集水溝などで水を導き、集まった所からポンプで排水するためです。最も浅い位置では、その場所より低い面に残った水を自然に集められません。洗面台の排水口が周囲より高く盛り上がっていれば水が残るのと同じ考え方です。掘削が進んで底の高さが変われば、集水できる位置へ釜場を移す必要があります。位置を変更する行為自体ではなく、水が流れる方向に合わない設置場所を誤りとして捉えます。
選択肢3
選択肢3:適当です。鋼矢板は端部の継手をかみ合わせ、連続した壁になるように地中へ施工する鋼材です。板と板が接続されるため、離れた柱材と板などでつくる山留めに比べ、一般に水を通しにくくできます。地下水位が高い地盤や軟弱地盤で用いる本肢は適当です。ただし、継手や施工状態、先端が達する地層によって漏水は起こり得ます。「比較的遮水性が高い」を、完全に水を止める保証へ読み替えないようにします。必要に応じて継手の処置や排水計画も組み合わせます。
選択肢4
選択肢4:適当です。砂質土は砂粒が主な骨組をつくり、振動を与えると粒の並びが変わって隙間が詰まりやすくなります。振動ローラーで転圧する方法はこの性質を利用しています。砂を入れた容器を軽く振ると表面が下がることを思い浮かべると、密に詰まる仕組みを理解できます。ただし、厚く盛った表面だけを転圧しても下まで十分に効くとは限りません。適切な層の厚さと含水状態で締め固めます。粘性土は粒や水の働きが異なるので、土質に合う機械を選ぶことが必要です。
周辺知識
掘削工事では、土が横から崩れ込むのを防ぐ山留めと、水が作業場所へ入るのを処理する排水を一緒に考えます。壁が土を支えていても、水がたまれば作業しにくくなるだけでなく、地盤の安定に影響する場合があります。水を止める方法と、入ってきた水を排出する方法を組み合わせます。
排水方法は、地盤の水の通しやすさ、地下水位、湧水量、必要な掘削深さなどで選びます。釜場排水は集まった水をくみ上げる方法です。周囲の地盤の地下水位を井戸で下げる方法とは、働く場所が異なります。排水によって周辺の地盤へどのような影響が出るかも、計画時に確かめます。
埋戻しでは、掘るときと逆に、土を安定した密な状態へ戻します。大きな空隙を残すと後で沈下して、床や外構、配管に影響する恐れがあります。砂質土なら振動で粒を詰めるなど、土の性質に合わせます。掘削中の力の流れ、水の流れ、埋戻し後の沈下という三つの視点を持つと、工事の前後を通じた地盤管理を理解できます。