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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅳ(構造) 問11

問題・正答・学習用解説

問題

地上4階建て、階高4m、スパン6mの普通コンクリートを使用した鉄筋コンクリート造の建築物における部材寸法の設定に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。ただし、特別な調査・研究によらないものとする。

選択肢

  1. (1)
    耐力壁の厚さを、階高の130\displaystyle \frac{1}{30}以上などを満たすように、150mmとした。
  2. (2)
    正方形断面柱の一辺の長さを、階高の110\displaystyle \frac{1}{10}以上などを満たすように、600mmとした。
  3. (3)
    短辺4mの長方形床スラブの厚さを、スラブ短辺方向の内法長さの140\displaystyle \frac{1}{40}以上などを満たすように、150mmとした。
  4. (4)
    バルコニーに用いるはね出し長さ2mの片持ちスラブの支持端の厚さを、はね出し長さの115\displaystyle \frac{1}{15}以上などを満たすように、150mmとした。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

片持ちスラブの支持端厚さを150 mm\displaystyle 150\,\mathrm{mm}とする記述が不適切です。スラブは鉄筋コンクリートでできた板状の床です。片持ちスラブは、建物から張り出すバルコニーのように一辺だけで支えられ、先端側には支えがない床をいいます。
特別な調査・研究によらない通常の扱いでは、片持ちスラブの支持端厚さは、はね出し長さの10分の1以上とします。本問の長さ2 m\displaystyle 2\,\mathrm{m}は2000 mm\displaystyle 2000\,\mathrm{mm}なので、必要な厚さは200010=200 mm\displaystyle \frac{2000}{10}=200\,\mathrm{mm}以上です。提示された150 mm\displaystyle 150\,\mathrm{mm}は50 mm\displaystyle 50\,\mathrm{mm}不足します。15分の1という別の比率を用いて判定している点が誤りです。
片持ち床では、荷重による曲げが建物との付け根へ集中し、付け根のわずかな回転も先端の大きな下がりとして現れます。四周を梁で支えた床と同じ厚さの考え方を適用できません。厚さを決める際には、破壊しないための強さだけでなく、長期にわたるたわみや振動、ひび割れも考慮します。寸法比を満たせばどんな荷重でも安全という意味ではなく、通常の設計で守る基本条件の一つです。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)階高4 m\displaystyle 4\,\mathrm{m}は4000 mm\displaystyle 4000\,\mathrm{mm}なので、階高の30分の1は400030≈133.3 mm\displaystyle \frac{4000}{30}\approx133.3\,\mathrm{mm}です。壁厚150 mm\displaystyle 150\,\mathrm{mm}はこれを上回ります。耐力壁は地震時の水平力に抵抗する板状部材で、薄すぎると面外の不安定や配筋・施工上の問題も生じます。問題文の「以上などを満たす」という条件の下では、150 mm\displaystyle 150\,\mathrm{mm}という設定は適切です。柱のスパン6 m\displaystyle 6\,\mathrm{m}ではなく、壁の高さに関係する階高を使う計算です。

選択肢2

(2)階高4000 mm\displaystyle 4000\,\mathrm{mm}の10分の1は400 mm\displaystyle 400\,\mathrm{mm}であり、正方形柱の一辺600 mm\displaystyle 600\,\mathrm{mm}はこれより大きくなります。柱の寸法は、上階からの圧縮力だけでなく、横から揺さぶられたときの曲げ・せん断にも関係します。階高に比べて細すぎる柱を避けるという基本条件に、この寸法は適合します。ただし600 mm\displaystyle 600\,\mathrm{mm}あれば配筋や荷重の確認が不要になるわけではなく、部材寸法の初期設定と断面の安全性の検討は別の段階です。

選択肢3

(3)短辺長さを4000 mm\displaystyle 4000\,\mathrm{mm}としても、その40分の1は100 mm\displaystyle 100\,\mathrm{mm}なので、厚さ150 mm\displaystyle 150\,\mathrm{mm}は条件を満たします。内法長さは、支える梁等の向かい合う面の間の実際の空き寸法です。柱や梁の中心間の距離と区別します。四周で支持される長方形の床は、一般に短い方向へ荷重を伝えやすいため、短辺の長さが厚さを検討する基本になります。片持ち床の張出し長さに、この40分の1を使うことはできません。

選択肢4

(4)はね出し長さ2 m\displaystyle 2\,\mathrm{m}の10分の1は200 mm\displaystyle 200\,\mathrm{mm}です。150 mm\displaystyle 150\,\mathrm{mm}は長さの約13.3分の1に相当し、必要な200 mm\displaystyle 200\,\mathrm{mm}より薄いため不適切です。支持端は建物へつながる付け根で、片持ち床ではここに最大の曲げモーメントが生じます。先端の厚さだけを厚くしても、支持端の不足を補う扱いにはなりません。どの位置の厚さを規定しているかも、片持ちという支え方と合わせて確認します。

周辺知識

梁や床の曲げにくさには、材料の硬さだけでなく断面の高さが強く影響します。長方形断面の断面二次モーメントはI=bh312\displaystyle I=\frac{bh^3}{12}で、同じ幅なら厚さ・せいの3乗に比例します。たとえば板厚を150 mm\displaystyle 150\,\mathrm{mm}から200 mm\displaystyle 200\,\mathrm{mm}へ増すと、ひび割れ前の断面二次モーメントは(200150)3≈2.37\displaystyle (\frac{200}{150})^3\approx2.37倍です。わずかな厚さの差が、変形のしにくさでは大きな差になると分かります。
ただし、コンクリートを厚くすると自重も増えるため、上の比だけで実際のたわみが決まるわけではありません。鉄筋コンクリートではひび割れ後の硬さの低下や、荷重が長く作用すると変形が増えるクリープも考えます。片持ち床は先端の変形が見えやすく、水勾配、仕上げ、建具などへ支障が出ることもあります。
下向き荷重を受ける片持ち床では付け根の上側が引っ張られるため、主要な鉄筋は上側に必要です。単純に下側へ鉄筋を多く入れればよいというものではありません。支持条件から引張側を判断し、厚さ・配筋・定着を一体で考えることが大切です。