学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅳ(構造) 問10
問題・正答・学習用解説
問題
木造軸組工法による地上2階建ての建築物において、建築基準法に基づく「木造建築物の軸組の設置の基準」(いわゆる四分割法)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
必要壁量を求める階数を、常に建物全体の階数とする記述が誤りです。四分割法は、耐力壁が平面の片側だけに偏っていないかを確認する方法です。建物を各方向に四分割し、両端の4分の1の領域で、実際にある壁の量と必要な量を比較します。
側端部分の必要壁量を求める際の階数は、その部分の状況に応じて扱います。たとえば建物全体は2階建てでも、ある側端部分の上に2階がなく、平屋部分となっていれば、全体の階数をそのまま一律に当てはめません。部分ごとに支える重量の違いを考慮するためです。
各側端部分では、壁長に壁倍率を掛けて足した存在壁量を、必要壁量で割り、壁量充足率を求めます。両側の充足率を比べ、小さい方大きい方を壁率比とします。基本的にはこれが0.5以上となることを確認しますが、両側とも必要壁量を満たす場合の扱いや、偏心率を用いる別の確認方法もあります。全体の壁量が足りるかと、左右の配置が釣り合うかを分けて考えます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)側端部分ごとの階数を無視して、建物全体の階数で一律計算する点が不適切です。部分的な2階建てでは、上階を支える側と支えない側で必要な壁量の評価が異なります。この違いを反映させて各側端部分の充足率を求める必要があります。四分割法の側端部分の扱いと、建物全体の必要壁量の算定を混同しないことが重要です。平面図だけでなく、2階がどの範囲に載っているかも確認します。
選択肢2
(2)張り間方向の力に抵抗するのは、その方向に沿って配置された耐力壁です。直交する桁行方向の壁を、張り間方向の存在壁量へ足すことはできません。壁は面内方向に強く働きますが、厚さ方向へ押される場合は同じ抵抗を期待できないためです。X方向の確認にはX方向の壁、Y方向にはY方向の壁を集計します。側端部分という位置の条件と、壁がどちら向きかという方向の条件の両方を満たす壁を数えます。
選択肢3
(3)各側端部分の充足率がすべて1を超えるなら、それぞれで必要な壁量を上回っているため、壁率比0.5以上の確認を省略できる扱いに合います。たとえば両側が1.2と3.0なら比は0.4ですが、弱い側でも必要量を超えています。本問は、この例外を理解しているかを問う記述です。ただし、これにより建物全体の必要壁量や接合部の確認まで不要になるわけではありません。対象となる壁配置の判定条件を限定して読みます。
選択肢4
(4)各階・両方向の偏心率が0.3以下であることを確認する方法なら、四分割法によらず配置の釣合いを検討できます。偏心率は、重さの中心と抵抗の中心のずれを、ねじれへの抵抗の大きさも考慮して無次元化した量です。四分割法が両端の壁量を比較する簡便な方法であるのに対し、偏心率は重心と剛心の関係を直接評価します。片方の方向だけ、または一つの階だけ確認すればよいという意味ではありません。
周辺知識
建物の重さの中心を重心、水平力に対する硬さの中心を剛心と呼びます。地震の慣性力は重心を通るように作用しますが、壁が片側へ偏っていると、抵抗の中心である剛心がずれます。すると建物は横へ移動するだけでなく、平面内で回転するようにねじれ、弱い側の変形が大きくなります。
四分割法は、この偏りを簡単な壁量の比較で調べます。ここでいう壁量は、壁の枚数そのものではありません。長さ・倍率2の壁なら、存在壁量としてという重み付きの長さを持ちます。必要壁量は、側端部分の面積と、階数・屋根等に対応する条件から求めるため、面積の異なる両側を生の壁長だけで比べても正しい判定になりません。
壁量充足率は「実際の量必要な量」、壁率比は「小さい充足率大きい充足率」です。分子と分母を逆にすると、弱い側が小さいほど比が大きくなる誤った評価になります。また、四分割した中央部分の壁が建物全体の耐力に無関係になるわけではなく、側端部分の配置を調べるこの計算と、全体の壁量計算の役割が異なるのです。