学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅴ(施工) 問14
問題・正答・学習用解説
問題
鉄骨工事における精度の管理に関する「検査の対象」と「管理許容差」との組合せとして、鉄骨精度検査基準((一社)日本建築学会「建築工事標準仕様書6鉄骨工事付則6」)に照らして、最も不適当なものは、次のうちどれか。選択肢
「建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事[2018改定]第11版」(日本建築学会、2018年1月15日)肢1・2:91頁付則6付表4⑴・⑷、肢3:100頁付則6付表5⑺、肢4:98頁付則6付表5⑴。
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢2です。製品の検査における階高の誤差の管理許容差は±3mmです。本肢の±5mmではありません。「製品の検査」「階高」「管理許容差」という三つの条件をそろえて基準を選びます。柱全体の長さや、現場で建物を組み立てた後の高さとは検査対象が異なります。
管理許容差は、製作や施工の品質を管理するための目標となる許容範囲です。図面上の寸法からの差を誤差といい、プラスは長い側、マイナスは短い側を示します。例えば設計寸法が4,000mmなら、±3mmの範囲は3,997〜4,003mmです。4,005mmは±5mmには入りますが、本問の管理範囲から外れます。
階高の測定では、図に示す仕口の上フランジ上面やボルト孔の中心など、所定の測定位置を用います。見た目の床の高さを漠然と測るものではありません。また、管理許容差と限界許容差も区別します。別の検査項目で見た「5mm」をそのまま当てはめず、測定対象、測定段階、許容差の区分を確認することが正答につながります。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:製品の柱の長さHについて、10m未満では±3mm、10m以上では±4mmという管理許容差は適当です。ちょうど10mは後者に入ります。これは柱全体の製品寸法の誤差であり、同じ柱の途中にある各階の仕口間の誤差とは別です。例えば12mの柱なら全長に±4mmを用いますが、その途中の階高の基準も±4mmになるとは限りません。図のHの始点と終点を確認し、全長と部分寸法を分けて判定することが、図付きの精度問題では重要です。
選択肢2
選択肢2:製品検査の階高の管理許容差は±3mmなので、±5mmとする本肢が不適当です。階高が階ごとにずれると、梁の取付け高さ、床の納まり、階段や外壁との取合いなどに影響します。柱全長の誤差が小さくても、途中のある階が高く、別の階が低ければ、各階の寸法は不適切なままです。全体の誤差が相殺されることを理由に、部分の検査を省くことはできません。「製品の階高」という条件に対応する3mmを選び、他の現場精度の数値と区別します。
選択肢3
選択肢3:柱の倒れeは、柱の上端などが正しい鉛直線からどれだけ横へずれたかを表します。本肢では以下と10mm以下の両方を満たすので適当です。Hが6mなら、単位をmmにそろえて となり、上限は6mmです。Hが12mなら割合からは12mmですが、絶対値10mmの条件により上限10mmです。「かつ」とあるため、二つのうち小さい値を採ります。平均や大きいほうを使ってはいけません。
選択肢4
選択肢4:建築物全体の倒れは、以下、かつ30mm以下という本肢の管理条件で適当です。例えば全高Hが40mなら、 となり、30mmより厳しい17mmが上限です。選択肢3の柱一節の倒れと、本肢の建物全体の倒れでは、対象の高さHが違います。各節の柱がそれぞれ合格でも、同じ方向への小さなずれが積み重なる場合があるため、全体の鉛直性も別途確認する必要があります。
周辺知識
鉄骨の精度検査では、工場でできた製品の寸法と、現場で組み立てた建物の状態を分けて調べます。製品が正確でも据付けで傾く場合があり、逆に全体の傾きを調整できても、個々の仕口の高さが正しいとは限りません。部品の精度と組立て後の精度の両方が必要です。
管理許容差と限界許容差は同じ意味ではありません。管理許容差は日常の品質管理で目指す範囲で、限界許容差はそれを超える場合の扱いを含む別の判定範囲です。本問は管理許容差を指定しているため、別表の限界値で答えてはいけません。許容差の名前まで含めて基準を読みます。
計算式にHが入るときは、単位をそろえるのが基本です。Hをmのまま代入して、後ろの7mmへ足すことはできません。高さをmmへ直し、割合で求めた値と絶対値の上限を比較します。「以下」は境界を含み、「かつ」は全条件を満たすという意味です。数式を日本語の条件に言い換えると、判定を間違えにくくなります。



