学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅳ(構造) 問10
問題・正答・学習用解説
問題
木造軸組工法による地上2階建ての建築物の壁量の計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
壁倍率1.5と3.7を合計し、5.2として存在壁量へ算入する記述が不適切です。本問の出題当時の壁量計算では、併用する壁倍率の合計に5の上限があるため、でも採用する倍率は5です。
壁倍率は、一定長さの耐力壁が水平力へ抵抗する能力を、基準となる壁に対する倍率で表したものです。存在壁量は
を足して求めます。たとえば長さのこの壁なら、相当でなく相当として算入します。倍率の上限を超える分を他の壁へ移して足すこともできません。
この上限は計算上の評価の規定で、壁が倍率5へ達した瞬間に必ず壊れることを意味するものではありません。強い壁へ力が集中すると、柱脚や基礎、床の伝達にも大きな力が必要です。なお、壁量基準は2025年4月の改正で高倍率の扱いが変わっているため、本問の公式正答は出題時点の規定で理解し、現在の設計の上限を一律に5と覚えないようにします。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)壁量充足率は、実際にある存在壁量を、その場所で必要な壁量で割った無次元の値です。1なら必要量と等しく、1未満なら不足、1を超えれば必要量を上回ります。たとえば存在壁量6、必要壁量4なら充足率は1.5です。必要量存在量と逆にすると、壁が少ないほど値が大きくなる誤った指標になります。四分割法では、この充足率を各側端部分で求めて比較します。
選択肢2
(2)単純な合計は5.2ですが、出題当時の上限5を適用するため、この壁の存在壁量の算定には倍率5を使います。筋かいと面材が同じ軸組内で働くからといって、どこまでも無制限に足せるわけではありません。倍率のほかにも、認められた併用仕様、釘の種類や間隔、端部接合などの条件が必要です。過去問の数値を確認するときは、2025年の壁量基準改正後の扱いと区別します。
選択肢3
(3)地震に対する必要壁量は、同じ階の床面積や屋根などの重量条件から求めるため、張り間・桁行の両方向で地震が決定要因なら同じ値になります。平面の長方形の長辺と短辺の長さを、そのまま地震用必要壁量の比にするわけではありません。一方、風では見る方向によって建物の見付面積が変わるので、方向差が出ます。本記述は両方向とも地震力で決まるという条件付きで適切です。
選択肢4
(4)風に対する必要壁量を求める際、見付面積へ乗じる規定の数値は、1階と2階で同じものを使います。ただし、各階で対象とする見付面積そのものが異なるため、必要壁量が同じになるとは限りません。地震用の床面積に掛ける係数が階数等で変わる話と混同しないようにします。係数が共通なのか、掛ける面積が共通なのかを分けて読むと、記述の意味が明確になります。
周辺知識
壁量計算は、必要な抵抗と実際に設ける抵抗を、長さに換算して比較する方法です。地震用の必要壁量は、建物の重量に対応する床面積などを基に求めます。風用の必要壁量は、風を受ける投影面である見付面積を基に求めます。同じ建物でも、地震と風では荷重が生じる仕組みが違うため、計算の入力が異なります。
存在壁量は実際の壁長に倍率を掛けたものなので、長い弱い壁と短い強い壁を同じ尺度で合計できます。ただし、壁の向きに沿う水平力に対して評価するため、直交方向の壁を混ぜて足してはいけません。各階、各方向ごとに確認します。
さらに、全体の量が足りても片側へ集中していればねじれやすくなるため、壁配置の釣合いを四分割法や偏心率で確認します。壁を強くするほど、それを支える柱脚・梁・床・基礎の力も大きくなる場合があります。必要量、存在量、配置、接合の四つを関連付けることで、倍率の計算だけで建物全体の安全性が決まるという誤解を防げます。