学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅳ(構造) 問8
問題・正答・学習用解説
問題
建築基準法における建築物に作用する積雪荷重に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
積雪の初終間日数が30日以上でも、垂直積雪量が未満なら多雪区域にならない、という記述が誤りです。多雪区域を指定する基準は、垂直積雪量以上、または積雪の初終間日数の平年値30日以上という、いずれかの条件です。両方を同時に満たすことを要求していません。
垂直積雪量は設計に使う雪の深さです。一方、初終間日数は、その区域の半分を超える部分が積雪した状態の続く期間を表す指標です。深い雪だけでなく、長く雪が残る地域も多雪区域の対象になります。したがって、深さが未満でも日数の条件で指定され得ます。
雪荷重は、深さに単位積雪重量と屋根の水平投影面積などを掛けて求めますが、実際には風による吹きだまりや落雪、雪下ろし、降雨による含水などでも変わります。屋根全体に均等な軽い雪が載る状態だけを考えるのでは不十分です。地域の指定条件と、屋根上の荷重をどう計算するかという二つの段階を分けて理解します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)風で雪が片側へ集まる、上の屋根から下の屋根へ落ちるなどして、不均等な積雪が生じる場合は、その影響を考慮する必要があります。荷重の合計が同じでも、偏ると梁の曲げや骨組のねじれが大きくなることがあります。屋根全体へ平均した雪荷重だけでは、局部の危険を見落とします。形状、段差、周辺の風の影響などから、どこへ多く積もるかを想定する記述として適切です。
選択肢2
(2)雪下ろしの実態を前提に、設計の垂直積雪量をまで軽減する場合は、その条件などを利用者が分かる場所へ表示する必要があります。設計が想定した深さを超えるまで放置されると、計算の前提が失われるためです。管理者が替わっても雪下ろしが必要な条件を伝えられることが重要です。単に計算書の中で数値を小さくすればよいわけではなく、実際の維持管理と結び付いた軽減です。
選択肢3
(3)多雪区域以外でも、大スパンで緩勾配の屋根など、所定の条件に該当する場合には、積雪後の雨による重量増加を考慮する必要があります。雪が雨水を含むと重くなり、勾配が緩い屋根では排水や雪の滑落が進みにくい場合があります。屋根版の構造形式などによる適用条件を確認し、必要なら割増し係数を用います。「雪の少ない地域だから雪荷重が小さいまま」と決めつけないための規定です。
選択肢4
(4)深さ以上と日数30日以上は「かつ」ではなく「または」の関係です。たとえば垂直積雪量でも、初終間日数の平年値が40日なら、日数側の基準に該当します。雪が深く積もる地域だけでなく、長期間残る地域も対象にするための二つの入口です。問題文の「未満の場合はならない」という断定が、その一方を除外してしまっています。指定基準の論理関係を正しく読む必要があります。
周辺知識
雪は時間とともに締まり、融けた水や雨を含むと、同じ深さでも重さが変わります。したがって、雪の高さを測るだけでは屋根に載る重量を完全には把握できません。構造設計では、地域条件に対応した単位積雪重量と垂直積雪量を使い、屋根形状による係数などを考慮して設計荷重を定めます。
屋根の面積も、斜面そのものの面積と水平投影面積を区別します。鉛直に降る雪の量を平面上で考えるため、基本的には水平投影面積が基準になります。一方、勾配による滑落の影響や雪止めの有無などは、別の条件として扱います。
不均等荷重では、左右の合計を平均した値ではなく、実際に大きな曲げやねじれを生じる載り方を考えます。雪下ろしによる軽減も、作業が継続して行われる前提があって成り立ちます。荷重の計算は自然現象の数値を代入するだけでなく、屋根の形と、建物が使われ続ける間の管理を組み合わせて行うものです。