学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅰ(計画) 問20
問題・正答・学習用解説
問題
建築のマネジメントに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。不動産の取得に当たり、建物の状態、法的な権利関係、収支などを多角的に調査し、投資判断の根拠を得る仕事は「デューデリジェンス」です。「アセットマネジメント」は、資産をどのように取得、運用、改修、売却するかを考え、価値や収益を管理する、より継続的な活動を指します。
例えば賃貸ビルを買う前に、屋根の傷み、修繕費、賃貸契約、法令への適合などを調べるのがデューデリジェンスです。取得した後、どの時期に設備を更新するか、賃貸条件をどうするか、保有を続けるかを判断することはアセットマネジメントに関係します。取得時の調査は資産運用の判断に使われますが、同じ言葉ではありません。また、十分に調査しても将来の収支を完全に正確に予測できるわけではなく、空室率や修繕費などの前提に幅を持たせてリスクを評価します。他の肢は、機能と費用を見直す設計VE、工事発注のコストオン、特定事業のためのSPCという別の管理の仕組みです。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。VEは、必要な機能を分析し、その機能を確実に達成しながら費用に対する価値を高める取り組みです。設計VEでは設計段階で代替案を考え、建設費だけでなく運転、修繕、更新などのライフサイクルコストを見ます。例えば購入価格が安くても頻繁に交換が必要な設備は、長期間では高くつく場合があります。安全性や必要性能を落として単に安くすることとは違い、目的を果たす方法を見直して経済性を高めます。
選択肢2
(2)不適当です。取得前の多角的な調査はデューデリジェンスです。アセットマネジメントは、その調査も判断材料にして、不動産の運用方針や資産価値を管理する活動です。建物の傷みを調べる調査、修繕計画を決める判断、工事を実施する行為は関連しますが同じものではありません。将来の賃料や空室率には不確実さがあるため、調査の目的も、完全に正確な将来予言ではなく、根拠のある見通しとリスクの把握として理解します。
選択肢3
(3)適当です。コストオン方式では、建築主が専門工事業者やその工事費を決め、その費用に元請の管理経費を加えて元請へ発注します。元請には、他の工事との工程調整や共通の現場管理などの役割が残ります。例えば設備工事の金額を明確にしたうえで、建築工事全体に組み込む考え方です。建築主が各工事を直接契約する分離発注と同じではありません。費用が明確になる利点に加え、元請と専門業者の責任範囲を契約で整理します。
選択肢4
(4)適当です。SPCは特別目的会社で、特定の事業のために設ける会社です。PFIでは、施設の整備や運営に関わる企業等が出資し、対象事業を実施する主体となります。別事業への投資を切り離すことで、資金やリスクを把握しやすくします。設問は事業期間終了後に役割を終え解散する基本的な形を説明しています。契約が終わる日に自動消滅するわけではなく、引継ぎ、債務の処理、清算等の手続を経ることも併せて理解します。
周辺知識
建築のマネジメントは、設計や施工の一場面だけでなく、投資の判断から使用後の運営まで広がります。取得前にはデューデリジェンスで対象を調べ、保有中には資産の価値や収益を管理し、改修を行うなら機能と費用を見直します。それぞれの段階で必要な情報や担当者が異なります。
ライフサイクルコストは、建てるときの費用に加え、使う間の光熱費、点検、修繕、更新、最終的な処分等までを考えるものです。将来費用を比較する際は、使用期間、更新時期、物価や割引の条件などをそろえます。一つの確定額として将来を言い切るのではなく、前提が変われば結果がどう変わるかを確かめます。
発注方式やSPCの仕組みでは、費用だけでなく、誰が何の責任を持つかが重要です。建築主が専門業者を選んでも、全体調整を担う元請の仕事は残ります。SPCを設けても、事業のリスクが消えるわけではなく、リスクをどこに帰属させ、どの資金で対応するかを明確にします。「調べる」「方針を決める」「実施する」という働きに分けると、似た管理用語を区別できます。