学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅲ(法規) 問27
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。令和4年度の制度では、非住宅部分が300m²以上の建物の新築は、省エネ基準への適合義務と適合性判定の対象です。本肢の300m²はその境目を含むため、単に着工21日前までの計画の届出をすればよいという区分ではありません。
省エネ法の規制は、当時、建物の用途と規模に応じて段階を分けていました。非住宅300m²以上は基準への適合を求め、300m²以上の住宅等には届出、小規模な住宅・非住宅には設計した建築士から建築主への説明等の制度がありました。適合義務は基準を満たすこと自体を求め、届出は計画を行政へ知らせて所定の審査・指導等につなげる手続です。名称が似ていても義務の内容が違います。
本肢の非住宅300m²に対して、住宅等に関係する21日前の届出の記述を当てはめたことが誤りです。令和3年4月から非住宅の適合義務対象が300m²以上へ拡大されたことを踏まえて判断します。また、令和7年4月以降は原則全ての新築住宅・非住宅へ適合義務が拡大されているため、現在の制度を過去の問題へ遡って入れないようにします。本問は令和4年度の適用制度として理解する必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。本年度の非住宅部分300m²の新築は、省エネ基準の適合義務・適合性判定の対象です。300m²未満ではなく、ちょうど300m²なので対象に入ります。21日前の届出という別の区分の手続で代えることはできません。まず住宅か非住宅かを分け、次に床面積を基準と比較します。建物全体が複合用途の場合でも、本肢が指定する非住宅部分の面積を正しく読みます。非住宅の対象拡大が令和3年4月に施行された後の問題です。
選択肢2
(2)適当です。一定の戸数以上の規格住宅を供給する特定建築主には、分譲型一戸建て規格住宅について、さらに高い省エネ性能を目指す基準に適合させる努力義務があります。住宅トップランナー制度と呼ばれる仕組みで、多数の住宅を継続して供給する事業者の取組を通じて、市場全体の性能を高めます。一戸だけ建てる一般の建築主と、一定規模の供給事業者を同じ対象として扱いません。また、努力義務という本肢の表現を、直ちに個々の住宅の適合義務へ読み替えないようにします。
選択肢3
(3)適当です。本年度の制度では、100m²の住宅の新築を設計する建築士は、原則として省エネ基準への適合性を評価し、その結果を書面で建築主へ説明します。専門知識のない建築主が、計画する住宅の省エネ性能を知ったうえで判断できるようにするためです。評価して説明する義務と、その住宅を必ず基準へ適合させる義務は、当時の制度では同じではありません。後の全面義務化の制度を本年度へ当てはめず、設問の時点での説明制度を確認します。
選択肢4
(4)適当です。省エネ性能を高めるための修繕でも、エネルギー消費性能向上計画を作り、所管行政庁の認定を申請できます。例えば既存建物の外皮や設備を改め、冷暖房等に使うエネルギーを抑える計画が考えられます。制度は新築だけでなく、既存建物をより良い性能へ改善する取組も対象にしています。認定を申請できるという任意の制度と、一定の新築に必ず行う適合性判定や届出とは、制度の入口と目的が異なります。
周辺知識
建物の省エネは、外から熱が出入りしにくい外皮と、少ないエネルギーで働く設備の両方で考えます。外皮は外壁、屋根、床、窓等、室内と外部の境界です。設備は空調、換気、照明、給湯等です。断熱がよくても設備の効率が低ければエネルギーを多く使い、効率のよい設備でも熱が逃げやすい建物では負担が増えます。
法律の手続では、適合義務、届出、説明、認定を分けます。適合義務は基準そのものを満たす必要があるもの、届出は計画を行政へ提出するもの、説明は設計者が性能等を建築主へ伝えるもの、認定は向上計画等について所定の基準への適合を行政に認めてもらうものです。書類が必要という共通点だけで、互いの代わりに使えるわけではありません。
本年度の非住宅300m²以上という境目は、令和3年4月の対象拡大後の基準です。令和7年4月には原則全ての新築住宅・非住宅へ適合義務が広がり、従来の届出・説明制度の扱いも変わっています。過去問では問題年度の制度を使い、現在の実務では現行制度を確認します。数字だけでなく、『いつ、どの用途、どの規模に、どの手続が必要か』を一組で整理することが重要です。