学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅲ(法規) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
保有水平耐力計算によって安全性が確かめられた建築物に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。ただし、高さが4mを超える建築物とする。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。保有水平耐力計算で建物の安全性を確認しても、特定天井を安全な構造とする規定は適用されます。国土交通大臣が定める構造方法を用いるか、大臣の認定を受けた構造等とする必要があり、『必要はない』とした点が誤りです。
保有水平耐力計算は、柱、はり、耐力壁等が大地震の横方向の力にどれだけ耐えられるかを確認する計算方法です。一方、特定天井は、脱落すると重大な危害を生じるおそれのある天井として、位置や規模等により定められたものです。骨組が倒壊しなくても、頭上の天井が落下すれば人が負傷します。そのため、骨組の耐力の確認とは別に、天井を支える部分や接合部等の安全が必要です。
構造計算の方法によって、一部の具体的な寸法や配筋方法を定める仕様規定が適用されなくなることがあります。しかし、全ての構造関係規定が消えるわけではありません。本問では、柱主筋と帯筋の緊結に関する仕様規定は除外される一方、特定天井の規定は残ります。何となく重要そうかという印象ではなく、施行令第36条で計算方法と適用する規定の範囲を対応させ、各部位の規定に戻って確認することが判断の基本です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。基礎は、建物の重さや地震等の力を地盤へ安全に伝える部分です。異なる構造方法の基礎を併用すると、沈み方や変形の違いで建物が傾くおそれがあるため、原則は禁止されています。ただし、国土交通大臣が定める基準による構造計算で基礎の安全を確かめた場合には、併用できます。保有水平耐力計算をしたという事実だけで自由に混ぜるのではなく、基礎について所定の計算を行うという、本肢の条件を確認します。
選択肢2
(2)適当です。土砂災害特別警戒区域では、崖崩れや土石流等が建物へ及ぼす力を考慮します。居室を持つ建物の外壁等は、想定する土石等の衝撃で破壊しないよう、自然現象の種類、作用する力、土石等の高さ等に応じた構造が必要です。地震の横力に耐える計算を済ませても、壁の一部へ直接ぶつかる土石の衝撃を確認したことにはなりません。災害ごとに力の作用する位置や大きさが異なるため、この規定は引き続き適用します。
選択肢3
(3)適当です。柱の主筋は柱の長さ方向に通す中心的な鉄筋で、帯筋はその周囲を取り囲む横方向の鉄筋です。通常の仕様規定では主筋と帯筋の緊結を求めますが、本問の保有水平耐力計算による場合、この緊結に関する規定は適用除外になります。帯筋の役割や柱の安全性まで不要になる意味ではなく、計算方法に応じて当該の仕様規定の適用が変わるという意味です。配筋の安定や必要な耐力等は、採用する構造方法と計算の中で確保します。
選択肢4
(4)誤りです。特定天井の構造について定める施行令第39条第3項は、保有水平耐力計算を行う場合にも適用されます。大臣が定める構造方法や大臣認定等による安全の確認が必要です。建物を支える柱やはりが壊れないことだけでは、つり材等で支持された天井の落下を防げません。計算の対象と、天井を支える部品・接合部の安全を分けて考えます。『高度な構造計算をした建物だから天井の規定も不要』と一括して扱ったことが誤りです。
周辺知識
建物の安全には、骨組全体の安全と、各部の落下・脱落を防ぐ安全の両方が必要です。骨組は倒壊を防ぐ中心となる部分ですが、外壁材、天井、設備等が外れれば、建物が立っていても人に危害が及びます。体育館等の広い室で天井が落ちる危険を考えると、骨組の耐力だけでは安全の説明が完結しないことが分かります。
仕様規定は、寸法、材料、鉄筋の配置、接合方法等を具体的に定める規定です。性能を計算で確かめる方法では、一定の仕様規定に代わる扱いを認める場合があります。ただし、どの規定を除外するかは計算方法ごとに決められており、設計者が自由に選べるわけではありません。耐久性や落下防止など、引き続き確保すべき条件もあります。
また、地震、地盤沈下、土砂の衝撃は、それぞれ違う作用です。基礎の種類を混ぜるときは沈み方等を、土砂災害の区域では外壁等に作用する衝撃を、特定天井では支持部等の安全を確認します。法規の問題では、計算方法の名称を見たら『何の安全を確認したか』『それでも残る部位の規定は何か』と分けて読むと、適用除外を広げ過ぎる誤りを防げます。