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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和4年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問19

問題・正答・学習用解説

問題

建築設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    パッケージ型空調機のAPF(Annual Performance Factor)は、「通年消費電力量」を「冷房期間総合負荷及び暖房期間総合負荷の和」で除した値により表される。
  2. (2)
    中央管理室は、超高層建築物において、中央管理方式の空気調和設備の制御及び作動状態の監視等を行うための室として、避難階又はその直上階若しくは直下階に設ける。
  3. (3)
    乗用エレベーターは、火災発生時にエレベーター内の乗客を速やかに避難階に帰着させた後、運転を休止させる計画とする。
  4. (4)
    照明の省エネルギー手法のうち、初期照度補正制御は、経年による照度低下を見込むことで生じる、照明器具やランプの設置直後等における過剰照度を、適正な照度に補正するものである。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は(1)です。APFは通年エネルギー消費効率で、年間の冷房期間と暖房期間に処理する総合負荷の和を、通年消費電力量で割った値です。つまり、次の比です。
APF=\displaystyle \mathrm{APF}=得られる冷暖房の仕事使う電気
本肢は消費電力量を分子にしており、分子と分母が逆です。
例えば、年間の冷暖房負荷の合計が12,000kWh、消費電力量が3000kWhなら、次のように計算できます。
APF=120003000=4\begin{aligned}\mathrm{APF}&=\frac{12000}{3000}\\[4pt]&=4\end{aligned}
1の電気で年間を通して4の熱負荷を処理する尺度となり、数値が大きいほど効率が高いと評価します。本肢の順なら0.25となり、別の逆数です。
ヒートポンプは周囲から熱を移動させるので、この比が1を超えてもエネルギー保存に反していません。電気だけを全て熱へ変える電気ヒーターの効率と同じ意味ではないためです。またAPFは、所定の気象や使用時間、負荷条件による年間評価で、特定の一日の実測効率を保証する数字ではありません。定格条件でのCOPだけでなく、部分負荷や季節の変化を考えて機器を比較するための指標です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適当です。正しい式は、冷房期間総合負荷と暖房期間総合負荷の合計を通年消費電力量で割ります。処理する熱量が同じなら消費電力が少ない機器ほどAPFは大きくなります。効率指標の分子は得られる仕事、分母は投入したエネルギーと意味から確認します。ただし、実際の建物での年間消費量は気候や運転方法にも左右されるため、APFをそのまま全ての建物の実測値とみなさないことが重要です。

選択肢2

(2)適当です。超高層建物の中央管理室は、空調などの運転を集中して監視・制御する場所で、避難階か、その直上・直下の階に設けます。日常管理だけでなく、異常時の対応や外部からの接近のしやすさも重要です。建物の中央という名称だから高さや平面の幾何学的な中心へ置くわけではありません。設備の情報を集める「中央」という意味と、避難・防災上の配置条件を分けて理解します。

選択肢3

(3)適当です。火災時には乗用エレベーターを避難階へ戻して乗客を降ろし、その後運転を休止する計画とします。火災階へ呼び寄せられたり、煙や停電の影響で乗客が閉じ込められたりすることを防ぐためです。地震時に最寄り階へ停止する管制運転とは、戻る階の考え方が異なります。どの災害に対する運転かを先に確認し、通常の呼び出し運転を続けない理由と結び付けます。

選択肢4

(4)適当です。照明は使用による光束低下や汚れを見込み、初めから余裕を持った能力を備えます。初期照度補正は、新品時の余分な明るさを調光で抑え、経年変化に合わせて出力を上げて必要な照度を保つ制御です。常に最大出力で運転するより電力を減らせます。昼光が入った分だけ暗くする昼光利用制御や、人がいない時に消す在不在制御とは、減光する理由が異なります。

周辺知識

COPとAPFは、どちらも得られる熱の処理と消費エネルギーの関係を表しますが、評価の範囲が違います。COPはある運転条件での能力を入力で割る指標、APFは季節や負荷変動を織り込んだ通年の指標です。自転車の一定速度での走りやすさと、坂や停止を含む一日の移動全体の効率を分けるように、条件を確認して比較します。
年間総合負荷と通年消費電力量は、同じエネルギーの単位へそろえて比を取ります。kWは単位時間の能力、kWhは時間にわたって積み重ねた量なので、単位の違う数値をそのまま割らないようにします。
照明でも、設備の最高効率だけでなく、必要な明るさで運転する制御が省エネにつながります。新品時、昼光が多い時、人がいない時では、照明を下げられる理由が異なります。中央管理室で運転状況を把握し、用途や時間帯に合った制御を行うことも重要です。機器を選ぶ段階の性能と、設置後にその性能を生かす運用の両方が、建物全体のエネルギー消費を決めます。