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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和4年度 学科Ⅴ(施工) 問25

問題・正答・学習用解説

問題

建築物の監理業務委託契約(工事監理を含む。)に関する次の記述のうち、四会連合協定「建築設計・監理等業務委託契約約款」(令和2年4月改正)に照らして、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    委託者は、受託者から監理業務方針の説明を受けた日から7日以内に、受託者に対して、その修正につき協議を請求することができる。
  2. (2)
    受託者は、あらかじめ委託者の承諾を得た場合であっても、監理業務の全部を一括して他の建築士事務所の開設者に委託してはならない。
  3. (3)
    受託者は、委託者の債務の不履行により損害が生じたときは、その債務の不履行が監理業務委託契約及び取引上の社会通念に照らして委託者の責めに帰することができない事由によるものであっても、その債務の不履行の効果がこの契約に定められている場合を除き、委託者に対し、その損害の賠償を請求することができる。
  4. (4)
    受託者は、監理業務の段階において、理由の如何を問わず、工事請負契約が解除されたときは、委託者に催告をすることなく、直ちに、委託者に書面をもって通知して監理業務委託契約の全部を解除することができる。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢3です。委託者の債務不履行で損害が生じても、その原因が契約や取引上の社会通念に照らして委託者の責めに帰することができない場合には、この規定による損害賠償請求はできません。本肢は、その場合であっても請求できるとして、責任に関するただし書を逆にしています。
委託者は監理業務を依頼する側、受託者は引き受ける側です。債務は借金だけを意味せず、契約に基づいて報酬を支払うなどの義務全般を指します。債務不履行は、約束した義務を本来の内容どおり果たしていない状態です。しかし、義務が果たされなかった事実だけで、あらゆる原因の損害を相手へ負担させられるわけではありません。
まず義務の内容と不履行の事実を確認し、損害との関係を調べ、契約上その原因の責任を相手に負わせられるかを判断します。損害賠償と、契約を将来続けるかを判断する解除は、同じ制度ではありません。本問のように約款の改正年月が指定されている場合は、その版の定めに従い、一般的な印象で責任や手続を置き換えないことが大切です。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:監理業務方針の説明を受けた日から7日以内に、委託者が修正について協議を求められるとする本肢は適当です。監理業務方針は、受託した仕事をどのように進めるかを依頼者へ示すものです。説明を受けた側が内容を確認し、必要な調整を話し合う機会を設けています。7日は工事完成後の期間ではなく、方針の説明を受けた日を起点とする点を確認します。また、協議の請求は、委託者が独断で全ての条件を書き換えることと同じではありません。

選択肢2

選択肢2:監理業務の全部を一括して別の建築士事務所の開設者へ委託してはならないとする本肢は適当です。この一括再委託の禁止は、委託者の事前承諾があっても解除されません。業務を引き受けた事務所が、全てを別の事務所へ丸投げすることを防ぎます。一部の業務を協力者へ委託する場合の条件と、全部をまとめて再委託する場合を区別します。承諾があればどの禁止も例外になると考えず、約款がどの範囲について禁止しているかを確認します。

選択肢3

選択肢3:委託者に責任を帰することができない原因による債務不履行まで、損害賠償を請求できるとする点が不適当です。約款は、契約内容や取引上の社会通念に照らして責任を帰せない場合を除いています。例えば、義務が実行されなかったことを確認しても、それだけでは誰がどの損害を負担するかは決まりません。原因、契約上の役割分担、不履行と損害との関係を確かめます。単に受託者が困ったという結果から、相手の賠償責任を一律に導かないようにします。

選択肢4

選択肢4:監理業務の段階で工事請負契約が解除されたとき、受託者が催告をせず、書面で通知して監理業務委託契約の全部を解除できる本肢は適当です。監理の対象となる工事の契約が終了した場合の、約款所定の取扱いです。催告は、相手へ一定の履行などを求める手続ですが、この場合はそれを前提としません。ただし、何も伝えず仕事を放置してよいという意味ではなく、書面による通知が必要です。解除できることと、報酬等の精算の問題も区別します。

周辺知識

建築の契約では、工事を完成させる工事請負契約と、設計・監理などの専門業務を依頼する委託契約を区別します。同じ建物に関係していても、当事者と約束する仕事が異なるため、問題文がどの契約の話かを最初に確認します。
義務の不履行、損害賠償、解除は関連しますが同じ意味ではありません。不履行は約束が守られていない状態、損害賠償はその結果生じた損害の負担、解除は契約を続ける関係を解く制度です。それぞれの要件や手続があり、不履行を一つ見つければ全てが無条件に認められるわけではありません。
約款を読むときは、誰が誰に、いつ、何を求められるかを書き分けます。さらに「ただし」「承諾があっても」「催告をすることなく」といった条件に注意します。方針の修正は説明後7日以内の協議、一括再委託は承諾によらず禁止、所定の解除は書面通知というように、権利の内容と手続を一組にすると、長い文章でも判断の中心を捉えやすくなります。