学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅴ(施工) 問23
問題・正答・学習用解説
問題
鉄筋コンクリート造建築物の外壁改修工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢1です。鉛直方向のひび割れへ手動式でエポキシ樹脂を注入する場合は、下部の注入口から上へ向かって順に進めます。本肢の「上部から下部」という向きが逆です。下から内部を満たすことで、空気を上方へ逃がしながら充填しやすくなります。
ひび割れは、表面に見える細い線だけでなく、内部へ続く隙間です。上から樹脂を入れると、樹脂が下へ流れて一部の通り道を塞ぎ、別の場所に空気を閉じ込めるおそれがあります。下から注入し、上側の注入口などへの到達を確認しながら進めれば、充填の状況を把握しやすくなります。
注入前には表面を仮止めシール材で塞ぎ、樹脂が外へ漏れず内部へ入るようにします。自動式低圧工法では、器具を付けたまま必要な硬化養生を行い、樹脂が固まってから撤去します。また、塗装の改修では、既存塗膜が健全で残せる場合と、劣化して除去が必要な場合で下地処理を変えます。どの工法も、表面をきれいにするだけでなく、内部や下地の状態に合う処置を行うことが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:鉛直方向のひび割れに対し、上部から下部へ樹脂を注入する点が不適当です。下部から上部へ順次注入します。樹脂で隙間を下から満たすと、内部の空気が上へ逃げやすく、上側の注入口への到達によって充填状態を確認できます。樹脂が重力で流れ落ちれば全ての隙間が埋まるとは限りません。ひび割れの分岐や幅の違いもあるため、所定の注入口を設け、漏れを防ぐ仮止めを行い、注入の進み方を確認しながら施工します。
選択肢2
選択肢2:自動式低圧エポキシ樹脂注入で、注入器具を付けたまま硬化養生し、その後に器具と仮止めシール材を除去する本肢は適当です。器具には、低い圧力を一定時間作用させ、細いひび割れへ樹脂を徐々に入れる働きがあります。注入直後に外すと、まだ固まっていない樹脂が漏れたり、必要な充填が途切れたりするおそれがあります。硬化までの時間は材料や温度に左右されるため、表面だけを見て急いで撤去せず、所定の養生条件を確保します。
選択肢3
選択肢3:既存塗膜を残せる場合に、下地のひび割れを補修し、水洗いで粉化物や付着物を除去してから上塗りを更新する本肢は適当です。粉化物は、塗膜の表面が劣化して粉状になったものです。これを残して新しく塗ると、塗料が健全な面へ付着しにくくなります。一方、十分に付着した既存塗膜まで無条件に全て除去する必要はありません。残す塗膜の健全さと新しい塗料との適合を確認し、洗浄後は必要な乾燥を行ってから塗り替えます。
選択肢4
選択肢4:著しく劣化した塗膜や、弱くなった下地コンクリートの除去に高圧水洗工法を使う本肢は適当です。水の噴射力を利用して、残すべきでない部分を除きます。表面の軽い汚れを落とす水洗いとは、目的や圧力条件が異なります。ただし、圧力を高くすれば必ずよいわけではなく、健全な下地を過度に傷めないよう施工条件を調整します。周囲への飛散や開口部への水の侵入にも配慮し、処理後の下地を確認して補修・仕上げへ進みます。
周辺知識
外壁改修は、劣化の種類を調べてから工法を選ぶ作業です。ひび割れ、塗膜の粉化、付着力の低下、コンクリートの脆弱化は、見た目が似ていても必要な処置が異なります。新しい塗料で覆うだけでは、内部の隙間や弱い下地は元へ戻りません。
樹脂注入では、ひび割れの内部を材料で満たすことが目的です。材料の粘度、注入圧力、順序、空気の逃げ道、硬化までの保護が、充填の成否に関係します。幅や動きの状態によって適する補修方法が異なるため、全てのひび割れへ同じ樹脂を同じ圧力で押し込むわけではありません。
塗替えでは、残してよい部分と除去すべき部分を分けます。健全な塗膜は適切な処理で利用できる一方、弱い部分の上へ強い塗料を塗っても、弱い層ごと剥がれる可能性があります。下地処理、必要な補修、乾燥、上塗りという工程を通じて、新しい仕上げが安定して付着できる土台を整えることが大切です。