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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅳ(構造) 問10

問題・正答・学習用解説

問題

木造軸組工法による建築物の設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    片面に同じ構造用合板を2枚重ねて釘打ちした耐力壁の倍率を、その構造用合板を1枚で用いたときの耐力壁の倍率の2倍とした。
  2. (2)
    軸組に方づえを設けて水平力に抵抗させることとしたので、柱が先行破壊しないことを確認した。
  3. (3)
    圧縮力と引張力の両方を負担する筋かいとして、厚さ3cm、幅9cmの木材を使用した。
  4. (4)
    地上3階建ての建築物において、構造耐力上主要な1階の柱の小径は、13.5cmを下回らないようにした。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

同じ側へ構造用合板を2枚重ねて釘打ちしただけで、壁倍率を2倍とする記述が誤りです。壁倍率は、指定された面材、厚さ、釘、釘間隔、軸組への留付けなどの組合せで評価された壁の性能です。合板の枚数だけで決まる値ではありません。
合板の耐力壁は、柱と横架材でできた四角形が平行四辺形に変形しようとするのを、面材と周囲の釘接合で抑えます。外側へもう一枚重ねると、外側の板の力を内側の板や釘を介して軸組へ伝える必要があり、釘の有効な打込み長さや曲がり方、面材同士のすべりなどが変わります。2枚がそれぞれ一枚のときと同じ耐力を独立に発揮するとは限りません。
壁倍率を増やしたい場合は、告示等に定める仕様や、試験・認定等で性能が確認された工法に従います。壁の両面へそれぞれ所定の面材を取り付ける扱いと、片面にただ重ねる扱いも区別します。また壁が強くなるほど柱脚や接合部に伝わる力も大きくなるため、壁そのものだけでなく、柱・梁・基礎までの伝達経路を合わせて確かめる必要があります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)片面へ2枚重ねると、釘の働き、軸組へ入る長さ、板同士の力の受渡しが一枚の場合と異なります。そのため、各板が一枚の壁と同じ性能を発揮するとして、倍率を単純に2倍にはできません。壁倍率は面材の材料強度の値ではなく、留付けを含む壁全体の性能です。重ね張りの性能を適切に確認した仕様ならその評価に従えますが、枚数だけを根拠に加算することはできません。両面張りと片面重ね張りの納まりの違いも確認します。

選択肢2

(2)方づえは柱と梁の隅付近へ斜めに入れる短い部材で、接合部の変形を抑えながら水平力に抵抗します。その軸力が柱の途中へ入るため、柱には追加の曲げやせん断が生じます。方づえを強くしても、その取付け先の柱が先に壊れれば期待した抵抗を利用できません。柱が先行破壊しないことを確認する記述は適切です。短い斜材を追加するだけでなく、その力がどの位置から柱へ入り、支点までどう流れるかを調べます。

選択肢3

(3)厚さ3 cm\displaystyle 3\,\mathrm{cm}、幅9 cm\displaystyle 9\,\mathrm{cm}の木材は、圧縮を負担する木製筋かいの所定の最小寸法を満たし、引張りにも用いることができます。圧縮では横へ曲がる座屈が問題になるため、引張りだけを受ける場合より厚さが必要です。ただし寸法を満たすだけで端部の力が伝わるわけではなく、引張・圧縮両方向の作用に対応する接合が必要です。地震で力の向きが反転することを踏まえ、部材と端部金物の両方を確認する扱いです。

選択肢4

(4)地上3階建ての1階の構造耐力上主要な柱について、小径を13.5 cm\displaystyle 13.5\,\mathrm{cm}以上とする扱いは適切です。小径は断面の細い方の寸法を指し、張り間・桁行の両方向で条件を満たす必要があります。1階柱は上の複数階の荷重を支え、地震時にも大きな力を受けます。ただし13.5 cm\displaystyle 13.5\,\mathrm{cm}が全ての場合の十分条件ではありません。柱長さ、負担荷重、材料、断面欠損、座屈や接合など、当該計画に必要な他の確認も行います。

周辺知識

木造の柱と梁だけをピンに近い接合で四角く組むと、横から押されたときに形が変わりやすくなります。筋かいは斜めの棒の伸縮への抵抗を、面材壁は板と釘接合のせん断抵抗を利用して、この変形を抑えます。方づえは隅の回転を拘束しながら抵抗する部材です。
どの方法も接合部が力を伝えることが前提です。筋かいの引張力は端部の金物を引き抜く向きに働き、面材壁では周囲の釘に力が分布します。柱脚には浮上がりや押込みも生じるため、壁の倍率だけを増やして接合部をそのままにすることはできません。
面材の枚数、筋かい寸法、柱小径などの仕様は、性能を確認した組合せを現場で再現するための条件です。見た目に材料を増やしても、その材料へ必要な力が伝わらなければ性能は増えません。部材の材質・寸法、取付け方法、力の向き、先に壊れる可能性のある部分をつなげて確認することが、仕様を正しく使うために大切です。