資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問20

問題・正答・学習用解説

問題

建築のマネジメントに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    コンセッション方式とは、料金の徴収を行う公共施設において、施設の所有権と運営権を民間業者へ移行する方式のことである。
  2. (2)
    デザインレビューとは、設計や施工等の各部門の専門家が、設計段階で性能・機能・信頼性等を価格、納期等を考慮しながら、設計について審査し改善を図ることである。
  3. (3)
    フロントローディングとは、施工段階や維持管理段階における問題点の早期発見や作業全体の効率化を目指し、設計段階で各種の技術検討を行うことである。
  4. (4)
    CRE戦略とは、企業が保有している不動産について、企業価値向上の観点から、経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させるための考え方である。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢1です。コンセッション方式では、公共施設の所有権を公共側に残したまま、民間事業者に施設の運営権を設定します。所有権も民間へ移すとした点が誤りです。施設を誰が持つかと、誰が運営する権利を持つかを分けて考えます。
例えば利用料金を徴収する公共施設について、土地や施設は公共主体が所有し続け、民間事業者が契約等に従って運営する仕組みです。民間の工夫によるサービスの改善や効率的な運営を目指しますが、施設そのものを売却する方式とは異なります。また、運営を任せれば公共側の関与が全てなくなるわけではありません。
他の肢は、事業の質を高めるための異なる考え方です。デザインレビューは設計案を複数分野から点検して改善すること、フロントローディングは後工程の問題を早期に検討すること、CRE戦略は企業の不動産を経営全体の視点で見直すことです。審査の方法、検討の時期、資産活用の方針という違いがあります。似た経営・管理用語でも、何を対象にした判断かを整理します。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:所有権と運営権の両方を民間へ移すとした点が不適当です。コンセッションは公共側が所有権を持ち続け、民間に公共施設等の運営権を設定する方式です。所有者と運営者が別になることは、建物を持つ人と店を営業する人が別の場合を考えると理解しやすくなります。ただし通常の賃貸借と法律上同じ制度という意味ではありません。利用料金を徴収する公共施設の運営を、要求されるサービス水準や事業条件に従って担う仕組みとして把握します。

選択肢2

選択肢2:デザインレビューの説明は適当です。設計の段階で、設計者だけでなく施工等の専門家も参加し、性能、使いやすさ、信頼性、費用、工期等を確認して改善します。デザインという言葉から外観の美しさだけを審査すると考えるのは不十分です。例えば形は魅力的でも施工が難し過ぎたり、保守のために設備へ近づけなかったりすれば問題になります。異なる専門分野の視点を持ち寄り、要求条件を満たす計画になっているかを点検することが中心です。

選択肢3

選択肢3:フロントローディングの説明は適当です。後の施工や維持管理で起こりそうな問題を、設計等の早い段階へ前倒しして検討します。例えば梁と配管が干渉することを現場で見つけると、材料や作業のやり直しが必要になる場合があります。設計時に関係者が確認すれば、変更しやすい段階で調整できます。初期の検討量は増えても、全体の手戻りを減らすことを目指します。単に工事を早く始めることや、将来の検討を省略することではありません。

選択肢4

選択肢4:CRE戦略の説明は適当です。CREは企業不動産を意味し、企業が使う土地や建物を、経営上の目的に照らして見直します。使っていない土地を持ち続けるか、売却や賃貸をするか、拠点を集約するかなどを検討します。土地の値上がりだけを狙う不動産投資とは限らず、本来の事業へどう役立つかが基準です。所有と賃借の選択、維持費、働きやすさ、事業の成長等を合わせて考え、企業全体の価値を高めるよう不動産の保有・利用を調整します。

周辺知識

建築に関わる事業では、設計、工事、運営、所有を同じ人や組織が全て担うとは限りません。施設を所有する公共主体と運営する民間事業者を分けるコンセッションは、その一例です。役割の分担に加え、責任や費用、求めるサービスを契約等で明らかにします。
設計段階の検討は、完成後の運営にも影響します。保守点検が難しい設備配置や使いにくい動線は、長期間の費用や負担になります。デザインレビューで専門家の意見を集め、フロントローディングで問題を早期に扱うと、後から直しにくい部分を前もって改善できます。
不動産の判断も、新築費の安さだけでは決まりません。企業の事業に必要な場所や規模、将来の変化、維持費、使っていない資産の扱いを考えます。CRE戦略はその判断を経営全体と結び付ける考え方です。建物をつくる段階から、持つ、使う、更新する段階までつながっていると理解します。