学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問1
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。防火戸は、火炎が別の場所へ広がるのを遮る『防火設備』であり、建築基準法の用語としての『建築設備』には該当しません。自動的に閉まる機構が付いていることだけで、建築設備に分類することはできません。
日常語では、建物に取り付けた装置をまとめて設備と呼びます。しかし法律では、どの規定を適用するかを明確にするため、用語の範囲を定めています。建築設備には、建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙等の設備や、昇降機などが含まれます。一方、防火戸は開口部を閉じ、炎が通り抜けることを防ぐものとして、防火設備の規定で扱います。
例えば、廊下の防火戸は普段開いていても、火災を感知した際に閉じることで防火区画の一部となります。防火区画は、建物を火の広がりにくい区切りに分ける仕組みです。戸が電気や機械で動くという動作方法と、法律上の分類は別です。本問はこの用語の取り違えを問うており、防火戸が規制を受けないという意味ではありません。防火設備として必要な遮炎性能や閉鎖機構の基準を満たす必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。建築物は一般に屋根と柱または壁を持つ土地に定着した工作物ですが、法律の定義には観覧のための工作物なども含まれます。そのため、土地に定着した観客席やスタンドは屋根がなくても建築物です。大勢の観客を支える構造や避難の安全を、屋根がある場合だけ確保すればよいわけではありません。『屋根がないから建築物ではない』という判断は、定義の一部だけを読んだものです。列挙された対象を最後まで確認する必要があります。
選択肢2
(2)適当です。幼保連携型認定こども園は、教育と保育を一体で行う施設で、特殊建築物に含まれます。特殊という言葉は、形が珍しいという意味ではありません。学校、病院、共同住宅など、その用途や利用者に応じた追加の安全対策を要する建物を法律が分類したものです。こども園では幼い子供が多く利用し、火災時には大人の誘導や援助も必要になるため、一般の事務所などと同じ使われ方とはいえません。用途に基づく分類であることを押さえます。
選択肢3
(3)適当です。3階以上の鉄筋コンクリート造共同住宅では、2階の床と、その床を支えるはりに鉄筋を配置する工事が、法律で定める特定工程です。鉄筋はコンクリートが苦手な引っ張られる力を受け持つため、位置や本数が構造の安全性に影響します。コンクリートを流し込むと内部に隠れ、後から外観だけでは確認しにくくなります。その直前の工程を中間検査の対象にすることで、見えるうちに適切な配筋かを確認する仕組みです。
選択肢4
(4)誤りです。自動閉鎖する防火戸も、防火設備という分類です。建築設備の定義に消火設備が含まれるため、火災対策用の物は全て建築設備だと思いやすい点に注意します。消火設備は水などで火を消す側の装置、防火戸は開口を閉じて炎の拡大を防ぐ側の設備で、役割も条文上の扱いも異なります。自動で閉まることは、必要なときに防火戸として機能させる方法です。その動作の自動性によって、法令用語の分類が建築設備へ変わるわけではありません。
周辺知識
法令の定義は、後に続く規定の入口になります。例えば『建築物』に当たれば建物としての構造や敷地の規定を検討し、『特殊建築物』に当たれば用途に応じた防火・避難等の規定を確認します。『特定工程』であれば中間検査、『防火設備』であれば炎を遮る性能等の規定を確認します。単語の意味を覚えることは、どのルールを探すかを決めることにつながります。
同じ『特定』『特殊』『設備』という文字を含んでも、一つの分類の上下関係とは限りません。特殊建築物は建物の用途の分類、特定工程は工事の途中の段階、防火設備は火炎を遮る装置の分類です。何を分類している言葉なのかを先に見分けると、名称が似た制度を混同しにくくなります。
建築物の安全は完成した形だけでは決まりません。子供が使うか、多数の観客が集まるかという使用状況に加え、工事中に見えなくなる部分を適切に検査できるか、火災時に戸が確実に閉まるかという工程や動作も重要です。本問の各定義を、その場面で防ごうとしている事故と結び付けて覚えると、丸暗記よりも理由のある理解になります。