学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問20
問題・正答・学習用解説
問題
環境・設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。BEIは、設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で割った値で、小さいほど基準に比べて消費が少なく、省エネルギー性能が高いことを示します。出題時のBELSの5段階表示では、省エネ性能が高いほど星が増えるため、BEIは小さいほど星が増えます。「大きいほど増える」は逆です。
例えば基準消費量100に対して設計消費量が80ならBEI0.8、60なら0.6です。0.6のほうが消費を多く減らしているので、評価がよくなる方向です。削減率を表しているなら大きいほど良くなりますが、BEIは削減した割合ではなく、残って使う量の比です。
BELSは第三者が省エネルギー性能を評価して表示する制度で、利用者が建物の性能を比較する手掛かりになります。ただし、本問は令和3年度の5段階表示を前提とする問題です。表示方法や制度の改正後の区分を遡って当てはめず、出題当時の条件で判断します。また、設計上のエネルギー性能が良いことと、災害時の電源や水が確保されていることは別なので、BCPの設備計画も併せて考えます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。BEIは小さいほど設計上の一次エネルギー消費量が少なく、出題時のBELSではその方向に星が増えます。基準100に対して設計70なら0.7、90なら0.9なので、0.7のほうが省エネです。数字が大きいと良くなるのは星の数であり、BEIの値ではありません。現在の表示区分が変わる場合もあるため、本問の5段階という時点条件を保ちながら、比の定義に基づいて判断します。
選択肢2
(2)適当です。住宅の外皮性能では、UA値で熱の逃げやすさ、冷房期の平均日射熱取得率で日射熱の入りやすさを評価し、地域区分に応じた基準値以下とすることなどが求められます。寒い地域と暖かい地域では気候が違うため、同じ設計条件を一律に当てはめません。UAは外皮の平均、日射熱取得率は窓以外からの侵入も含む外皮全体の評価であり、窓単体の指標と区別します。
選択肢3
(3)適当です。病院やホテルは、災害時に救護や避難の場として使われる可能性があり、通常の事業だけでなく被災者への対応も考える必要があります。BCPは事業を継続・早期復旧する計画で、広域停電、断水、ガス停止に備えた電源や水、燃料などを事前に計画することが望まれます。建物が倒れなかっただけでは医療や宿泊の機能は続かないため、必要なサービスと、それを支える設備を結び付けます。
選択肢4
(4)適当です。地域冷暖房は、複数の建物へ熱源設備から冷水や温水などを供給する仕組みです。建物ごとに熱を作る場合より、未利用熱をまとめて使い、高効率な運転を行える場合があります。その結果、屋外へ捨てる熱の削減やヒートアイランドの緩和が期待できます。ただし、配管の熱損失やポンプ動力もあるため、導入すれば無条件に省エネとなるわけではなく、熱源と需要の組合せが重要です。
周辺知識
省エネルギー性能と災害時の継続性は、どちらも建物の重要な性能ですが、評価する対象が違います。BEIは所定の条件で計算した消費量の比、BCPは災害などで通常の供給が失われたときに必要な機能をどう保つかという計画です。消費が少ない建物は非常時に必要な電力も抑えやすい利点がありますが、電源や水の備蓄そのものを代替するわけではありません。
一次エネルギーは、電気、ガスなど異なるエネルギーを共通の尺度へ換算して比較する考え方です。BEIは基準建物との比なので、電気料金の安さや実測した二酸化炭素排出量を直接表すものではありません。利用人数や運転方法が変われば、実際の消費は設計評価と異なる場合があります。
地域冷暖房では、建物間で需要の時間差を生かし、未利用熱を活用するなどの利点があります。一方、供給が止まった場合の影響も複数建物へ及ぶため、重要用途では継続性や代替手段を確認します。建物単体の効率だけでなく、地域の熱供給、運用、災害時の備えまで段階を分けて考えると、環境と防災の計画をつなげられます。