学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅴ(施工) 問1
問題・正答・学習用解説
問題
一般的な設計図書に基づく施工計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢3です。設計図書に専門工事業者の候補が示されていない場合、その工事を適切に実施できる専門業者を選ぶのは、工事施工者の責任です。監理者が事前に施工者と協議したとしても、監理者自身の責任で選定するという役割の置換えは適切ではありません。
例えば、元請の建設会社が鉄筋、型枠、電気設備などの専門業者へ仕事を依頼するときは、必要な技術や施工体制を確認し、工事を進められる業者を選びます。監理者は、施工される内容が設計図書の要求する品質などに適合しているかを確認する立場です。専門的な確認に関わることと、施工組織を編成する責任を引き受けることは異なります。
施工計画書についても、工事施工者が具体的な施工方法や品質確保の方法を計画し、監理者は所定の範囲を確認・承認します。承認を得たから施工者の品質や安全に関する責任がなくなるわけではありません。契約書や設計図書に特別の定めがない仮設計画も、施工者が責任を持って決めます。誰が計画し、誰が設計への適合を確かめるのかを区別する問題です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:監理者が施工計画書のうち品質計画に係る部分を承認する本肢は適当です。品質計画は、設計図書が求める性能や出来形を、どの材料、施工手順、検査によって確保するかを示します。監理者はその内容を確認し、設計の要求と食い違いがないかを判断します。ただし、現場の具体的な施工方法全てを監理者が作成するという意味ではありません。計画を作る施工者と、所定の品質に関する確認を行う監理者の役割を分けて理解します。
選択肢2
選択肢2:工事品質に影響を及ぼさない工種について、監理者の承認を得て工種別施工計画書を省略する本肢は適当です。工種別計画書は、総合施工計画を基に、各工事の材料、手順、確認方法を具体化する書類です。全てを施工者の都合だけで省いてよいわけではなく、品質への影響がない工種であることを判断し、所定の承認を受けます。計画書の省略と、安全に工事を行うための検討を不要とすることは別です。必要な管理は引き続き行います。
選択肢3
選択肢3:専門工事業者を監理者の責任で選ぶ点が不適当です。候補の指定がない場合、施工者が設計図書の内容・品質を達成できる専門業者を選定します。選定では施工能力、実績、現場で確保できる体制などを確認します。監理者と協議することはあり得ますが、それによって選定する責任が監理者へ移るわけではありません。元請施工者は専門業者へ作業を依頼した後も、工事全体の施工と品質の管理を担います。丸投げして責任を手放す関係ではありません。
選択肢4
選択肢4:契約書や設計図書に特別の定めがない近隣安全のための仮設計画を、施工者の責任で決める本肢は適当です。仮囲い、落下物対策、作業車両の出入りなど、実際の施工手順と現場条件に合う計画が必要です。設計図書に細部が書かれていないから、安全措置が不要になるのではありません。施工者が周囲の道路、建物、通行者への影響を考え、適切な方法を計画します。監理者の関与の有無だけを理由に、安全確保の責任を相手へ移すことはできません。
周辺知識
建築工事では、建築主、設計者、工事監理者、工事施工者、専門工事業者などが関わります。同じ現場で打合せをしていても、契約上の立場や担当する責任は同じではありません。施工者が工事を組織して実施し、監理者が設計図書との適合を確認するという関係を基本に整理します。
施工計画には、品質、工程、安全、仮設、調達など複数の内容があります。品質計画は完成物が要求を満たすための方法を示し、仮設計画は工事中に必要な施設や安全措置を定めます。仮設は完成後に撤去することが多いものの、工事中の事故防止や品質確保を支える重要な計画です。
「承認」「協議」「選定」という言葉にも違いがあります。承認は内容を認めること、協議は話し合って調整すること、選定は対象を選び決めることです。話し合いに参加した全員が同じ責任を負うとは限りません。問題文の主語を確かめ、作成・決定する人と、確認・承認する人を分けると判断しやすくなります。